マイナビニュース・エンタメチャンネルの新たな定番記事を目指すお試し企画「日曜トライアル」。今回は、ドラマに登場する場所に注目し、そこに込められた意味を考える【ドラマが動く場所】をお送りする。取り上げるのは、2026年のドラマで相次いで登場している「コインランドリー」だ。
現在放送中のドラマ『Tシャツが乾くまで』(TBS系、毎週金曜22:00~)では、コインランドリーが重要な舞台。洗濯物が乾くまでその場を離れられない登場人物たちが言葉を交わし、物語が動いていく。
振り返れば、今年は1月期の『冬のなんかさ、春のなんかね』(日本テレビ系)、4月期の『銀河の一票』(カンテレ・フジテレビ系)でも、コインランドリーが印象的な場所として登場した。恋愛ドラマ、政治ドラマ、夫婦をめぐるミステリーとジャンルは異なる。それでも、なぜ同じ場所にスポットが当たるのだろうか――。
恋の始まり、社会から見逃された生活の声、夫婦の秘密まで
『Tシャツが乾くまで』は、事故によって夫が行方不明になった咲子(蒼井優)と、同じ事故で妻を亡くした樹生(中島歩)を中心に、2組の夫婦の“喪失”と“秘密”を描く物語。愛する人が隠していた「第3金曜日の秘密」を追う中で、コインランドリーで交わされる会話が、キーポイントとして展開されている。
『冬のなんかさ、春のなんかね』では、杉咲花演じる小説家・土田文菜が、近所のコインランドリーで美容師・佐伯ゆきお(成田凌)と出会った。「なんとなく寂しいその空間が好き」で、洗濯を待ちながら「思考を整理するためのノート」に言葉を書く文菜。にぎやかな場所ではなく、誰とも話さずに過ごせる空間で始まる恋は、人との関わりに慎重な文菜のキャラクターにも重なった。
一方、『銀河の一票』では、政界を追われた元選挙参謀の“ガラさん”こと五十嵐隼人(岩谷健司)が、コインランドリーで「よろず困りごと相談所」を営む。政治ドラマでありながら、議員会館でも役所でもなく、誰もが日常的に訪れられる場所に相談窓口を置くことで、制度にすくわれない市民の声を可視化した。
恋の始まり、社会から見逃された生活の声、夫婦の秘密――コインランドリーが、幅広い物語を受け止める舞台になっている。
日常の場所になったコインランドリー
コインランドリーを舞台にしたドラマは、以前から『みなと商事コインランドリー』(テレビ東京)、『恋、ランドリー。』(Hulu)のように、店そのものを物語の中心に据えた作品も制作されてきた。そんな中で2026年に目立つのは、ジャンルの異なる複数のドラマが、人物や社会を映す場所としてコインランドリーを選んでいる点だ。
背景には、現実のコインランドリーが身近になったこともありそうだ。
日本コインランドリー連合会などが2025年、全国の利用者2,209人を対象に行った調査では、74.9%が「5年前より利用頻度が増えた」と回答。43%は、生活に「なくてはならない」と答えている。
現在は、布団などの大物洗いや家事の時短、高温乾燥を目的に、家庭に洗濯機を持つ人にも利用が広がった。清潔感のある内装やキャッシュレス決済なども定着し、「洗濯機がない人の場所」という従来のイメージは変化しているという。
ドラマの登場人物が特別な事情もなく利用していても、不自然に見えない場所になったようだ。
「待つ時間」が会話を生む
ストーリー展開上の利点としては、洗濯機や乾燥機を動かせば、登場人物がその場にとどまる理由が生まれる。
「洗濯物が乾くまで」という制限時間があることで、偶然居合わせた人同士が話し始めたり、普段は言えないことを打ち明けたりする展開を自然に作れる。会話が途切れても、機械の作動音が沈黙を埋めてくれる。
また、公共の場所でありながら、持ち込まれるのは衣服やタオル、シーツといった私的なもの。“家と社会の中間”にあるからこそ、恋愛から家庭の秘密、生活上の困りごとまでを描くことができるという面もある。
誰かと同じ空間にいながら、会話をしなくてもいい。それでも、別の誰かと出会う可能性は残されている――コインランドリーが相次いで登場するのは、この絶妙な距離感が、現代の登場人物や物語に合っているからなのかもしれない。
