肩こりは“日本の国民病”とも呼ばれ、性別や年齢を問わず多くの人を悩ませている存在です。その症状を訴える人は年々増え続け、低年齢化も進んでいます。より効果的な対策をとれるように、まずはその原因やメカニズムを知りましょう。

  • 肩こりのメカニズムを紹介します

    肩こりのメカニズムを紹介します

肩こりの典型的な原因とは?

肩こりとは、簡単に言うと「肩周辺の筋肉が緊張・疲労している状態」のことを指します。肩こりは正式な病名ではなく、あくまで症状。自覚がなくても首や肩がこっているという人も少なくありません。

首から肩にかけては、大小さまざまな筋肉が集合しており、頭や腕を支えています。それらの筋肉が動くには、酸素や栄養素が必要不可欠。筋肉は、緊張と弛緩を繰り返しながらポンプのように血液を循環させることで酸素や栄養素を取り込み、老廃物を送り出しているのです。

また、人間の頭の重さは体重の1割ほどもあることをご存知でしょうか。体重が60kg程度の人であれば、5~6kgの重みが首から肩の筋肉にかかっていることになります。日本人は欧米人と比べ、頭の大きさの割りに首から肩の骨格や筋肉は華奢であることも肩こりが起こりやすい理由だと言えます。

  • 13ポンドのボウリング玉が約5.9kgであることを考えると、いかに頭が重いかがわかります

    13ポンドのボウリング玉が約5.9kgであることを考えると、いかに頭が重いかがわかります

同じ姿勢を長時間続けているなど、筋肉が収縮・緊張してしまう状態に陥ると血管が細くなり、血液の流れも円滑ではなくなります。その結果、筋肉が酸素不足となり、乳酸などの老廃物がたまることで痛みを起こす物質が発生。それが神経を刺激し、痛みを感じるというわけです。

  • 筋肉が硬くこわばってしまうと、血管が圧迫されて血行が悪くなってしまいます

    筋肉が硬くこわばってしまうと、血管が圧迫されて血行が悪くなってしまいます

さらに、痛みを起こす物質に反応して筋肉が収縮することで、肩こりの悪循環が始まります。

「筋肉の収縮が長時間続いている状態」→「筋肉内の血流量が低下」→「筋肉が酸素不足に」→「痛みを起こす物質が発生・蓄積」→「神経が刺激される」→「筋肉の痛み、収縮」→……

このようにして、人は肩こりのサイクルに入ってしまうのです。つまり、「筋肉の収縮が長時間続いている状態」を発生させてしまうことが、そもそもの肩こりの原因ということになります。

例えば、「ストレスによる緊張」「同じ姿勢で長時間過ごすこと」「運動不足」「眼精疲労」など、日常生活には肩こりの原因となる要素がいくつも潜んでいます。
次回は、それらを引き起こす要因となる「習慣」をチェックしていきましょう。

監修者

福田千晶 (ふくだちあき)

医学博士・健康アドバイザー
日本体力医学会健康科学アドバイザー・日本医師会健康スポーツ医・日本人間ドック健診情報管理指導士・日本リハビリテーション医学会専門医・日本人間ドック学会専門医。健康科学アドバイザーとして講演や執筆、テレビ・ラジオ番組への出演などで活躍。