年金は老後だけではなく、「一家の主が死亡した」「障害者になった」場合に助けてくれる制度です。ただ、筆者もそうでしたが20代の頃に年金のことを指摘されても、やっぱりなかなかピンとこないものです。

本稿では20代のうちから知っておくと差がつく年金の「4つの違い」を紹介します。知っているかどうかで、この違いがボディーブローのようにどんどん効いてくる可能性があります。

  • 「年金の理解度」が差となることを知っていますか?(写真:マイナビニュース)

    「年金の理解度」が差となることを知っていますか?

しっかり生活防衛できるように、知識武装してください。会社員の人は会社が自動的に厚生年金保険料を徴収してくれますが、そうじゃない学生や自営業の人は特に要チェックです。

納付期限と追納期限は違う

納付期限 保険料を納めることができる期限。2年経過すると時効で納めることができなくなる。滞納している場合は2年以内であれば納めることができる。
追納 学生納付特例や申請免除等で払っていなかった保険料を払う。10年分納めることが可能。

滞納というより「未納」という方が分かりやすいかもしれません。未納期間、ありませんか? 納付書が届くものの払っていない状況を指します。この場合は納付期限に従い2年以内であれば納めることができます。逆に2年先まで納めることもできます。この場合は前納割引制度に該当します。(後述)

では2年間分滞納で納めていない場合、どれほど影響が出るのでしょうか? 年金の1階建て部分にあたる国民年金(基礎年金)は自営業者であれ、会社員であれ20歳から60歳までの40年(480月)加入する必要があります。40年きちんと加入することで年額77万9,300円(平成30年度価格)をもらうことができます。

一方、2年分滞納してしまうと24月差し引かれるため、当然以下のような計算式になります。

違いが約3万9,000円。この年金額と一生付き合うことになるため、例えば65歳から20年間老齢年金を受給することになった場合、約78万円も少なくなります。人生100年時代といわれており、100歳まで生きると約136万円も違いとなってあらわれます。決して小さな差ではないですよね。

2年間分の保険料は約39万円です。何らかの経緯で滞納をしておりズルズルとそのままにしているというケースも少なくありません。2年以内しか納めることができないため、このような状況にある方はぜひ早めに納付することを検討してみてください。

なお、学生納付の特例や免除制度など所定の手続きを行って保険料を払っていない場合は10年間払うことができ、これを追納といいます。

例えば、学生納付の特例で学生時代2年間保険料を払っていない場合は、残念ながら上の計算式と同じように将来の年金額が減らされます。よって10年以内に追納を検討してください。

また、3年度目以降に保険料を追納する場合には、当時の保険料額に経過期間に応じた加算額が上乗せされますので、10年あるとはいえ早めに納める方がいいですね。

保険料の払い方でこれだけ違う

国民年金の保険料は原則、納付書が自宅に届き銀行やコンビニなどで納付することになります。ただし、それ以外にも様々な納付方法があります。

例えばクレジットカードでの支払いも可能です。ただし通常のショッピングとは異なりますので、ポイントが付くかどうかはカード会社次第です。還元率も当然カードによって異なりますが、高いポイントが還元されてトクをする人もいます。

ポイントや航空会社のマイルなどに詳しく、上手に活用している人には向いているかもしれませんが、単純に保険料割引という点では1年分や2年分まとめて払う前納をおすすめします。

指定銀行口座から保険料引落の手続きをし、最高2年間分まとめて納めることができ、2年分一括払いの保険料が37万7,350円(平成31年度価格)となります。まとまったお金が必要ですが、毎月払うよりも1万5,650円も割引されたことになります。約1月分の保険料に匹敵しますのでこれは大きな割引制度です。

納付書を使って現金納付する際も同様の制度があります。納付書が郵送で届く際に、毎月納付分の用紙に加え、半年や1年、2年分とまとめて納付する用紙が付いてきますので、そちらを使うと割引が適用されます。ただし、銀行口座引き落としの方が割引額はやや大きいので、早目に銀行口座引き落としの手続きをしておいた方がよいでしょう。

ただ、「まとまったお金が一気に引き落とされるのは厳しい」という若い人も多いのでは。そういう場合は「早割」にすることで年間600円の保険料割引となります。早割とは当月保険料を当月末引き落としで納付する方法です。

通常より1カ月早く口座から引き落とされる分、保険料が割引されます。年間600円ではありますが、現在、超低金利の下、銀行預金で600円の利息をもらうのはなかなか大変です。気軽にできる割引制度として覚えておいてください。

400円払うだけでこんなに違う

国民年金の第1号被保険者(自営業者や学生など)は厚生年金制度のある会社員と比べ、将来の年金額がそれほど多くありません。そこで年金額を増やすことができる制度として付加年金という制度があります。

通常の保険料に400円上乗せして払うだけです。そして将来、払った月数に応じて200円上乗せされます。こちらも簡単な手続きで大きな違いとなっていきます。

「400円払ったのに200円?」と思った方もいると思います。事例でみていきます。

例えば150月、付加年金を払ったとします。毎月400円を150月、合計で6万円払ったことになります。そしていざ年金を受け取る年齢になると、200円×150月=3万円が1年間の年金額に上乗せされます。

もうお分かりだと思いますが、「2年でモトをとる」ことができます。3年目以降も毎年3万円上乗せされるため、長生きすればするほど「付加年金を払っていてよかった」ということに。国民年金基金やiDeCoといった制度がありますが、中には「難しそう」、「金額が大きい」と二の足を踏んでいる人もいるかもしれません。月400円であればそれほど負担にはなりませんよね?

社会保険労務士によっても違う

年金の専門家といえば社会保険労務士が浮かびます。老後の年金はじめ年金関係の複雑な手続きなどを行ってくれます。その中で今のうちから1つ覚えておいてもらいたいことがあります。「障害年金の対応は社会保険労務士によって違う」ということです。

老後の年金は原則65歳からです。遺族年金はある人が亡くなったという事実があります。それに対して障害年金の障害状態は千差万別です。またその後も身体の状況に変化が生じます。

「ある社会保険労務士に依頼して申請手続きをすると障害者として認定されず年金がもらえなかった」が、「違う社会保険労務士に依頼すると認められた」というケースは実際にあり、筆者もこのような事例に接したことがあります。

前述のように老後の年金や遺族の年金と比べ、概念が複雑であることから障害年金は対応しないという社会保険労務士も多いようです。読者の皆さん自身が病気や事故でいつ障害のある状況になるか分かりませんし、ご両親や友人知人、皆さんの周りの人も同じようなリスクがあります。こういった話を知っておくといざという時に役立ちますね。

いかがでしょうか。今回は4つの違いを取り上げました。もっともっと年金について知りたい! と感じた人もいるのではないでしょうか。

年金制度、ひいては社会保険制度全般に不満を感じている人もいるかもしれませんが、国内で生活していく以上、一生付き合っていくことになります。

そうであれば、自ら学んで上手に活用しよう! と前向きに捉える方が得策だと思いませんか。ぜひこれからも興味関心をもって接してみてくださいね。

著者プロフィール: 内山 貴博(うちやま・たかひろ)

内山FP総合事務所
代表取締役
ファイナンシャルプランナー(CFP)FP上級資格・国際資格。
一級ファイナンシャル・プランニング技能士 FP国家資格。 九州大学大学院経済学府産業マネジメント専攻 経営修士課程(MBA)修了。