私たちは「社会保険」に誰もが加入しています。そして社会保険は大きく2つに分かれます。生活レベルでの保障をしてくれる狭義の社会保険と、仕事シーンで保障をしてくれる労働保険です。

また(狭義の)社会保険は医療保険、介護保険、年金保険の3つに。労働保険は労災保険、雇用保険の2つに分かれ、全部で5つの柱で成り立っているのです。本稿では医療保険(制度)について解説します。

  • 医療保険制度の内容を理解していますか?(写真:マイナビニュース)

    医療保険制度の内容を理解していますか?

医療保険制度とは

皆さんは健康保険証をお持ちだと思います。その健康保険証の機能といった方が分かりやすいかもしれません。本人確認として健康保険証を使うこともあるかもしれませんが、大半の場合、病院や歯医者の受付で使いますよね。

受付で提示することによって、保険を活用した診療・治療を行うことができ、原則、医療費の3割しか負担しなくてよいので助かります。

ただ、それ以外にも様々な"特典"がありますので、ぜひ一通り把握し、該当した際には上手に活用してください。

医療保険制度(健康保険)の種類

日本では、医療保険制度は「国民皆保険」といわれ、全員が加入することになります。大きく分けると会社員や公務員など勤務する人が加入する「健康保険」と自営業者などが加入する「国民健康保険」に分かれます。

健康保険はさらに2つに分かれます。大手の会社や業界などは従業員や家族の人数が多いため、独自に組合がある場合があります。そうじゃない場合、例えば中小企業などは各都道府県の協会けんぽ(正式名称は「全国健康保険協会」)に加入することになります。

健康保険 組合 会社員や公務員など勤務している人
協会けんぽ(各都道府県)
国民健康保険 市区町村役場 自営業者など

生まれたばかりの赤ちゃんにも保険証が与えられますが、それは親から養ってもらっているという立場で保険証をもらうことになりますので、もしお父さんが組合のある会社に勤めていれば、その赤ちゃんも同じ組合に加入することになります。

こんな時役に立つ! 医療保険制度

では、皆さんが良く知っている「窓口での医療費3割負担」以外にもどんな制度で私たちは守られているのでしょうか?

子どもが生まれる時

待ちに待った赤ちゃんの誕生! そんな時に「出産一時金」をもらうことができます。現在は原則42万円。病院などによって異なりますが、出産のために入院し、お母さんと赤ちゃんが一緒に退院するまで1週間程度で、ちょうど42万円ぐらいかかります。つまり、入院・分娩の費用はほとんど負担する必要はありません。

何日も働けなくなったら

上記の出産の際はもちろん、病気やケガで働けなくなり、給与が支給されない場合は、「お給料の代わり」として「出産手当金」や「傷病手当金」がもらえます。

出産手当金は産前6週間、産後8週間が対象です。病気やケガの場合は3日以上欠勤が続いた後、最大で1年6カ月が支給対象となります。金額は標準報酬月額の3分の2、つまり、おおよそ1日あたりの給料の3分の2がもらえることになります。

なお、「お給料の代わり」という位置づけであるため、自営業者が加入している国民健康保険は原則対象外です。勤務や給料といった考え方がないためです。

3割負担といっても、医療費が高額になった場合

大きな手術や長期の入院などをすれば、いくら医療費の3割しか払わなくていいとはいえ、負担が大きくなることも。そんな時は「高額療養費制度」が助けてくれます。 一般的なケース(標準報酬月額28~50万円の方)では、以下の式で計算します。

8万100円+(総医療費-26万7,000円)×1%

医療費全体(3割負担前)が100万円だったとします。その際、3割負担分は30万円となりますが、8万,100円+(100万円-26万7,000円)×1%=8万7,430円が負担上限となり、それを超えた額、30万円-8万7,430円=21万2,570円が還付されることになります。

事前申請を行っておくと一時的に立て替える必要もありません。1月単位・同じ医療機関単位となりますので、例えば10月に同じ病院に数週間入院していたというケースなどが該当しそうです。

海外で医療機関を受診した時

海外に行くと食べ物や水が合わず、急にお腹がいたくなったり、調子を崩したりということがよくあります。こういう時に海外で病院に行くと、日本の保険証は使えないため、医療費の全額を負担することになります。国によっては、ちょっとした歯の治療でもかなり高額になる場合もあります。

でも、安心してください。国内で保険対象となっている治療であれば海外で負担した医療費の一定額が戻ってくることになります。帰国したらすぐに手続きを。

健康で医者いらず! という人にも

ここ数年一度も病院に行っていない。という人もいるでしょうが、そういった人も恩恵を受けることができます。それが健康診断です。高額な人間ドックなどを一部負担で受けることもできます。

保険の切り替えを忘れずに

このように「ピンチ」な状態の時などに助けてくれる医療保険制度。上記は協会けんぽを基準にまとめていますので、組合に加入している場合はさらに手厚い保証を得られることもあります。

例えば出産一時金が42万円ではなく、数万円上乗せしてくれる組合もありますし、高額療養費につきましても同様に「高額」のハードルを2万円や3万円に設定し、それ以上は負担しなくてもよいという組合も多いです。

ぜひ、皆さんがどのような医療保険制度に属しているのか、保険証を見れば記載がありますので、確認してみてください。

そして「国民皆保険制度」の下では、全員が加入しているということに加え、"絶え間なく"加入しておく必要もあります。「転職や脱サラなどで数か月健康保険に加入していなかった」ということは許されません。

会社を辞める際は、その後の健康保険をどうすべきか? 事前に確認しておいてください。退職後も最大2年間は、前の会社で加入していた健康保険に引き続き加入することができる「任意継続保険」制度もあります。

75歳以上になると私たちは一律、後期高齢者医療制度へとシフトしていきます。最後の最後まで医療保険制度が支えてくれるのですが、できるだけ、健康保険証を使わなくてよい生活をしていきたいですね。

著者プロフィール: 内山 貴博(うちやま・たかひろ)

内山FP総合事務所
代表取締役
ファイナンシャルプランナー(CFP)FP上級資格・国際資格。
一級ファイナンシャル・プランニング技能士 FP国家資格。 九州大学大学院経済学府産業マネジメント専攻 経営修士課程(MBA)修了。