この日のターゲットは高島平だ。山手線の巣鴨駅で都営三田線に乗り換え「高島平」駅に向かう。数年前に東京中の銭湯を巡っていた頃、何度か降り立ったことはあるが、大規模な団地があること以外あまり知見がない。時間は平日の9時過ぎ。通勤ラッシュを逆行する形となり、板橋区役所を過ぎたあたりから、だんだんと人も少なくなっていく。お目当てのそば屋は、北側の西口を降りた目の前。角のコンビニの隣に「たけや」の看板が出ている。外壁に掲げられた看板の文字は確かに「たけや」なのだが、路上に出ている「立喰そばうどん」の看板には「もりや」と書かれている。どちらなのだろう? 店名はさほど重要ではないので深追いはしないこととする。

  • 高島平「たけや」でオーダーしたのは、ピリリと辛い「紅しょうが天そば」

    「紅しょうが天そば」(390円)

豊富なメニューに心おどる、地元民人気の一軒

バリバリ個人経営風の佇まい。華やかなメニュー写真はもちろんなく、外から中の様子があまりわからないのも、ならではの特徴。土地柄、あまりビジネスマンが闊歩するエリアとも思えないので、ほとんどすべての客が地元、常連なのではと察する。一方で引き戸に「PayPay」のシールが。そのアンバランスに少し笑みがこぼれた。

外の看板に偽りありで、立喰ではなく着席カウンターのみが両側にある。右側のカウンターが厨房と隣接している格好だ。テレビはなく、ラジオがついている。先客は1名。黄緑色のカップに水をくみつつ、手書きで下がった短冊を見渡す。天ぷらを中心に、想像していたよりもメニューは豊富だ。かき揚、なす、にんじん、春菊、玉ねぎやコロッケ、ソーセージなど嬉しい面々が並ぶ。中でも惹かれたのが「紅しょうが天そば」(390円)だ。紅生姜を天ぷらにしてそばに浮かべようと思った人はすごい。いや、それ以前に紅生姜を揚げるという発想か。串カツの表面積の広い紅生姜揚げも美味いが、やはり千切りの紅生姜天は格別のジャンクフードだ。

熱々のツユを一滴残さず飲み干して完食

待ち時間は1~2分ほど。代金引換式。体感90度くらい、真っ黒で熱々のツユからモウモウと湯気が上がる。紅生姜天はサイズはやや小ぶりなものの、ピリリと辛くてパンチがある。千切りベースのためトロトロと崩れるのも早く、どんどんそば麺と絡んでいく。麺は、つなぎ多めでそば風うどんと呼べなくもないが、細麺で口当たりが良い。気づけば一滴残らず飲み干してしまった。ごちそうさまでした。

  • 「高島平」駅の北側の西口を降りた目の前にある「たけや」

滞在時間約10分でとんぼ返り。今回も高島平の街を満喫はできなかったが、収穫はあった。立ち食いそば店目当ての街歩き、オススメである。

著者:高山洋介

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に銭湯を紹介する同人誌『東京銭湯』『三重銭湯』『尼崎銭湯』などをこれまでに制作