長かった今年の夏もようやく終わり、朝晩と冷え込む日が増えた。急いで衣替えをしたこの日、恋しくなるのはやはり温かいそばだ。都営地下鉄浅草線「御成門」駅から3分。「そば作」に伺った。都バス「都06」系統で「新橋五丁目」停留所で降りても近い。新橋駅と浜松町駅のちょうど中間辺りで、駅前の喧騒はなく比較的落ち着いたオフィス街だ。斜向いには特別養護老人ホームがあり、入居されているお年寄りが立ち寄ったりすることもあるのかなと想像した。看板には「創業昭和53年」とあり、40年以上の老舗店と言ってもいいかもしれない。センサー式自動ドアより店内に入る。

  • 御成門「そば作」のボリューム満点な「カレーなんばんセット」で腹を満たす

    「カレーなんばんセット」(660円)

「うちたて、ゆでたて」の一杯をしばし待つ

時刻は午前10時頃。店内は中規模で、右に厨房、左に立ち食いカウンター。15~6人くらいは入りそう。立ち食いといえどもスツールは数個あり、先客の2名はどちらも腰を下ろしていた。奥のテレビでは午前の情報番組が流れており、厨房内には男女の店員が2名。壁には写真入りのメニューや短冊メニューが並び、口頭で注文するスタイルになっている。天ぷらは単品からの追加も。ほか、おにぎりもある。常連であれば、いつものメニューや端から順番に頼んでいくなどのやり方があろうが、初見だとこのスタイルはいつも戸惑う。店主から無言のプレッシャーがあるような気もして(実際は全くそんなことはないのだろうが)、とりあえず目についたメニューを口にしてしまうこともしばしばだ。この時、直感的にセレクトしたのが「カレーなんばんセット」(660円)。本連載であまり登場しない類のそばということが決め手である。冷たいお茶を汲み、しばし待つ。

しばし、と書いたがこれがそれなりに、待った。店先に「うちたて、ゆでたて」とあったとおり、注文が入ってからのようで、5~6分はかかっただろうか。立ち食い店としてはなかなか強気の姿勢。厨房側のカウンターには漫画本や新聞が並んでおり、食べながら読むというよりも時間待ちで読むためなのかもしれない。ちなみに代金は引き換え式である。

ボリューム満点のセットにしっかり満腹

さて、まずは一口。そば麺は細く、柔らかい。カレーそばなので残念ながら当店こだわりの風味は消されているが、口当たりの良い美味い麺だ。しかもボリューム満点。冷めにくいこともあって完食までに時間がかかりそうだ。カレーは甘めで、豚肉と玉ねぎがちょっぴり入っている。薬味はテーブルに山盛りのネギ皿が。結構辛味が強い。そして、セットとあるから何とのセットかと思えば、脇に添えられているのは白飯と漬物。なーんだと思ったのも数秒、白飯の端にのせられた福神漬を見るまで。なるほど、カレーなんばんのルウをかけて、自分でカレーライスをつくるわけか。しかしこのそばの量に白飯をつけてしまった。美味いは美味いが、少し食べ過ぎな気もしてきた。午前10時。変な時間にしっかり満腹になり、店を出る。

  • 都営地下鉄浅草線「御成門」駅から3分の「そば作」

体温もしっかり上がり、午後への活力、と思いきや、バスで帰途につく頃には眠気の餌食。人間、満腹で眠るのが一番幸せである。もっとも、眠ることができればの話だが。

著者:高山洋介

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に銭湯を紹介する同人誌『東京銭湯』『三重銭湯』『尼崎銭湯』などをこれまでに制作