さて、毎度のことながら、今日はどこのそば屋にしようかと思案を巡らせた結果、23区を出て稲城市に向かってみることにした。南多摩エリアに属する市のひとつで川崎市に隣接、多摩川を越える稲城市と町田市は、なんとなく神奈川県なイメージも強いのは自分だけだろうか。また、J2リーグ・東京ヴェルディの本拠地としても有名である(その昔は「ヴェルディ川崎」だったわけで、ここでもやはり縁深い)。その市内の、JR南武線「稲城長沼」駅近辺には、立ち食いそば屋が2軒ほどあるらしい。今回はそのまず一軒「なかむら」をご案内する。

  • 「わかめそば」(300円)と「半カレーライス」(250円)

カウンターのみのこぢんまりとした一軒

午前10時。駅に降り立ち、改札を出ると、ふわっと鼻をくすぐる天ぷらの香り。すぐそこに店があるのがわかる。駅前は再開発中(?)なのか、北口も南口も数メートルにわたって空き地になっており、柵で囲われている。そのせいか東京の駅前にしては店舗が少なく、閑散としている。元々住宅街の多い街で、その時間帯にもよるのかもしれない、人通りも多くない。

「なかむら」は北口側出て徒歩10秒ほどのところに建っている。「立喰 そばうどん」の白いのれん、緑色の庇で、引き戸は開けたままになっている。立ち食いオンリーのカウンターが横に1列のみ。こぢんまりとした店内には先客が1名いたが、すぐ食べ終えて出ていった。白髪の職人風ご主人と、年の離れた女性の二人が厨房内に。店内は綺麗にさっぱりと片付けられており、明るい雰囲気。正面にはテレビがあり、NHK総合がついていた。

メニューは頭上の短冊から口頭注文。天ぷら、天玉、月見、参歳、わかめ、きつね、たぬき、カレーなど。一部は冷しあり。カレーライスは単品でも400円で提供している。メニューは多くないが、どれもワンコイン以下で大変ありがたい。胃腸のコンディションが良い日は2杯食べてしまいそうだ。オーダーは大好きな「わかめそば」(300円)に「半カレーライス」(250円)をつけた。

アットホームな雰囲気と家庭風の味に心落ち着く

1分ほどで着丼。卓上には七味と一味があったので、一味をパラッと振りかける。わかめもさながら、多めに盛られたネギとかまぼこが嬉しい。そばは袋入りの茹で麺を湯通ししているので、本格からは遠いが、立ち食いとしてはこれで良し。やわらかく、ダシとの相性も良い。ツユは少し甘めだったので、一味で味を引き締めたのは効果的だった。カレーはピリッとスパイシーな家庭の味。具はほとんどないが、福神漬も添えられていて、ちょうどいいサイズだ。美味い。

  • JR南武線「稲城長沼」駅の北口から徒歩10秒ほどのところにある「なかむら」

初訪問だが、あいさつの声や店内の雰囲気、家庭風の味など、温かみを感じる店だった。自分のように、このために往復2時間かける価値があるかと言われればさすがに返答に困るが、稲城長沼という駅の顔になっているのは間違いない。今度の消費税増税で値上げされるとのことだが、今後も変わらぬ味を楽しみにしたい。

著者:高山洋介

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に銭湯を紹介する同人誌『東京銭湯』『三重銭湯』『尼崎銭湯』などをこれまでに制作