夏風邪をひいてしまった。先日一歳の娘が、この夏猛威をふるっている手足口病に感染したので、喉が痛んできた時には「これはもしや」と思ったが、幸いただの風邪のようである。ちなみに大人が手足口病に感染すると、七転八倒する。常時喉奥に口内炎ができている感じ。ご注意されたし。

  • 冷やし茎わかめそば(420円)

風邪といっても腹は減る。この連載用のそばを食べていないことを思い出し、出かけた先は神保町。言わずとしれた古書街で、カレーの街でもある。そんな街の立ち食いそば屋「肥後一文字や」は、東京メトロ半蔵門線「神保町」駅から徒歩6分。錦華通りと呼ばれるらしい通り沿いにあり、早朝から日が暮れるまで通しで営業している。

主人と女将らしき二人が営む、アットホームな一軒

遅い朝食、早い昼食を兼ねて到着したのは午前10時頃。通りにはのぼり。短いのれんの奥の入口に戸はない。先客はいない。右手側の厨房に、ご主人と女将さんだろうか、二人の店員さんが入っている。左手に券売機。客席は着席テーブル席が8席分と、立ち食い用のカウンターテーブルが2脚。奥の台に雑誌が数冊。店内にはNHKラジオが流れており、店主の趣味なのか、阪神タイガースのグッズやポスターなどがたくさん飾られている。サインもたくさんあったが、解読できないので選手のものかどうかわからない。

風邪で体がダルいので、なにか口当たりのいいものが食べたい。こういう時こそ、ひさしぶりに冷やしの出番だ。さてどれにしようかと券売機を眺めると、手書きの短冊に「期間限定 冷やし茎わかめそば 420円 現金にて」の文字が踊る。変わった具材と期間限定、しかも食べたかった冷やし。もうこれしかないでしょうと、券売機を離れ口頭注文。

ボリューム満点の茎わかめとそばのハーモニー

そばは3分ほどかかる旨を伝えられたので、その間に水を2杯飲む。程なくしてそばが完成。現金引換で器を受け取る。想像以上にビビッドなグリーンの茎わかめ。中央に落とされたうずらのたまごのイエローとのコントラストが強い。一口、二口と口に運べばわかる、なんという茎わかめの量よ。そばと同じくらいあるんじゃないか。甘酸っぱく、ショリショリした歯ざわりの茎わかめと、ギュッとコシのあるそばのハーモニーは絶妙。ボリュームはさほどないが、味の満足度は高い。ごちそうさまでした。

  • 東京メトロ半蔵門線「神保町」駅から徒歩6分の「肥後一文字や」

風邪の時は、温かいうどんが定番なのだろうが、やはりその時に体が欲しているものを頂くのも大切だと思う。期間限定の茎わかめそば、いつまでか定かではないが、ぜひこの夏のうちにご賞味いただきたい。

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に銭湯を紹介する同人誌『東京銭湯』『三重銭湯』『尼崎銭湯』などをこれまでに制作。