この数ヶ月、健康のために毎朝8kmジョギングしている。前回風邪をひいてしまった話を書いたので何の説得力もないのだが、おかげさまで余分な肉はわずかながら落ち、寝付きと目覚めもいい気がする。そして、もれなく猛烈に腹が減る。よし、そばだ。そばといっても、なるべくボリュームがあって腹にたまるのがいい。そんなわけで、向かったのは水道橋である。

  • 「天ぷらもりあわせ」(550円)の「大盛」(60円)

立ち食いそばの名店のひとつ「とんがらし」は、JR中央線「水道橋」駅から徒歩5分。首都高に向かって南下した手前。半蔵門線「九段下」駅からも徒歩8分程度だ。開店はやや遅めの11時から。開店3分前に到着したが、先客が早くも1名並んでいた。

人気店の名物メニューをオーダー

「とんがらし」は、立ち食いそばをまとめた本やブログなどではほぼ100%掲載される人気店。「天ぷらもりあわせ」と呼ばれる名物メニューは、遠方から足を運ぶ価値のある逸品として紹介されてきた。名物女将とかわされる「モリアワセ・ナスヌキ・ヒモカワデ」などの呪文めいたコールは、この店ならではである。その先代が引退し、2代目に店を譲ったのは2ヶ月ほど前。このあたりの話や、常連が気づくような店の差異についてはここでは取り上げない。

店内に入ると、右に小さな食券機。今では呪文も不要になった。注文したのはもちろん人気ナンバーワンの「天ぷらもりあわせ」(550円)、さらに朝のジョギングで腹が減っているので「大盛」(60円)をプラス。

食券を厨房にパス。「そば」か「ひもかわ」を選べるので、「ひもかわ」をチョイス。後から続いた客の注文を聞くに、ほぼ全員が「ひもかわ」を選んでいた。「ひもかわ」とは幅広のうどんで、こちらの「ひもかわ」はきしめんほどは薄くないものの、平べったい。店内は広くなく、着席・立ち食いカウンター、さらにテーブルも中央に1脚ある。

天ぷらは全て注文を受けてから揚げる。そのため、後に続く客はタイミング次第では食券を渡すこともままならない。時間にしておよそ6分しっかり待って、番号で呼ばれる。

天ぷらが丼いっぱいに盛られた豪華な一杯

ナス天、エビ天、イカ天が美しく、そして丼いっぱいに盛られている。まさに他の追随を許さない豪華な一杯だ。かき揚げにはない、リッチな素材の味。ツルツルと口当たりのいいひもかわうどんは、しっかり食欲を満たす。少ししょっぱめのツユは汗をかいた身体に染み渡る。そこにおろししょうがをひとさじ加えると、爽やかな辛味のある夏にぴったりの味わいに変身。ツユを最後の一滴まで飲み干し、返却口でなく"返却カゴ"に丼を返す。ごちそうさまでした。

  • JR中央線「水道橋」駅から徒歩5分の「とんがらし」

ほかにも「鴨まみれ蕎麦」や「揚げ茄子おろしぶっかけ(冷)」のように、その字面だけで心躍るメニューもあった。名店を名店たらしめるのは、何度でも通いたくなるその味にほかならない。

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に銭湯を紹介する同人誌『東京銭湯』『三重銭湯』『尼崎銭湯』などをこれまでに制作。