2023年卒採用の内定状況と2024年卒採用の見通しなどをまとめた「マイナビ 2023年卒企業新卒内定状況調査」が発表された。2023年卒の採用充足率は3年ぶりに減少し、採用活動について「前年より厳しかった」と分析している企業が前年より20ポイント以上も増加した。

今回は、この調査結果をもとに2023年卒の採用状況と2024年卒の採用の見通しについてポイントを探っていく。

2023年卒の採用充足率は81.3%
約半数の企業が「前年より厳しかった」と回答

内定者数を募集人数で割った採用充足率が、2023年卒は81.3%となり、2020年卒以降は上昇傾向にあった数値が3年ぶりに減少する結果となった。

過去10年を振り返ってみると、2017年卒が87.7%でピークとなり、その後徐々に減少傾向に入り、コロナ禍前の2020年卒に80.4%まで落ち込んでいたものの、コロナ禍の中で少しずつ上昇に転じていた。

しかしながら、アフターコロナを見すえた企業の採用意欲が回復傾向にあることが背景にあるのか、採用難に直面する企業が増えてきていることを裏付ける結果となっている。

  • 「マイナビ 2023年卒企業新卒内定状況調査」より

採用充足率を業界別に見てみると、「官公庁・公社・団体」(63.2%)、「建設」(70.3%)が全体平均より10ポイント以上低い数値となっており、採用計画通りの人材の確保に苦戦した様子がうかがえる。逆に「金融」「マスコミ」「ソフトウエア・通信」については、全体平均より5ポイント以上高い数値となっており、他業界と比較して採用が順調に進んだものと考えられる。

  • 「マイナビ 2023年卒企業新卒内定状況調査」より

9割に近い企業が2023年卒の採用活動を厳しかったと分析
「母集団の確保」や「選考への動員」が課題に

採用活動の印象については、全体では「前年より厳しかった」(49.6%)という回答割合が大幅に増加し、約半数にのぼった。「前年並みに厳しかった」(38.0%)と合わせると、9割に近い企業が2023年卒の採用活動を厳しかったと感じていることが分かる。

ほとんどの企業が採用難度の上昇を実感しているなかで、「小売」「商社」については、「前年より厳しかった」との回答が全体平均を上回っており、他業界と比較してさらに採用難を痛感している状況のようだ。

  • 「マイナビ 2023年卒企業新卒内定状況調査」より

「今年の採用活動の印象」に関して「厳しかった(前年並み+前年より)」と回答した企業に対して、その理由を調査したところ、「母集団の確保」(69.4%)とトップ。

次に「採用選考への動員」(51.4%)となっている。また、「内定辞退の増加」(39.5%)で3位に入っている。母集団の確保の難しさが際立った結果だが、たとえ母集団が確保できても採用選考までのつなぎ止めや、内定を出した後のフォローに苦戦している状況が見てとれる。

  • 「マイナビ 2023年卒企業新卒内定状況調査」より

インターンシップ参加者に志望度の高さを実感
WEBと対面で学生の印象の違いに戸惑いも

本調査では、応募者の志望度の高さや面接時の印象などについても調査しており、「志望度の高さや入社への熱意に関して」は、「インターン参加者が多かったので仕事内容をより深く理解したうえで入社を決めた学生が多かったように感じる(金融)」、「インターンシップ経験者ほど熱意高い(小売)」、「インターンシップ参加学生とそうでない学生とで熱意に差がある(建設)」など、インターンシップ参加者の志望度の高さを評価するコメントが複数寄せられ、あらためてインターンシップ実施の効果をうかがい知れる結果となっている。

また、「面接での様子や内容について」は、「インターン・会社説明会・一次面接はオンラインのため、二次面接で初めて対面する方が多い。対面面接において学生への印象が良くも悪くもガラッと変わるパターンが多かった。コロナの影響か、対面で人と話すことに慣れていない学生が多い(製造※建設を除く)」、「WEB面接はさほど緊張を感じなかったが、対面面接では総じて緊張を感じる学生が多かった(商社)」、「1次面接(WEB)と2次面接(対面)とで印象がまるで違う方がいました。1次面接ではスラスラ話せていたのに、2次面接ではしどろもどろな回答になってしまったりなど(ソフトウエア・通信)」等々、WEBと対面での印象の違いや、対面型の面接に慣れていない学生が多いことを指摘するコメントが目立つ結果となっている。

企業の採用意欲は2024卒も高い見通し
計画通りの人材確保には多くの課題も

長期的な若年労働人口の減少を見越してか、あるいはアフターコロナの業績回復に備えるためか、2024年卒の採用については、引き続き企業の採用意欲は高く、本調査によると全体の16.4%の企業が採用予定数を「増やす」と回答しており、上場企業では20.6%が「増やす」という結果が報告されている。

業界別では、「小売」「商社」「ソフトウエア・通信」が他業界と比較しても採用意欲が高いようで、「小売」「商社」では約18%、「ソフトウエア・通信」では約26%の企業が2024年卒の採用数を「増やす」と回答している。

  • 「マイナビ 2023年卒企業新卒内定状況調査」より

  • 「マイナビ 2023年卒企業新卒内定状況調査」より

しかしながら、採用活動の見通しについて「厳しくなる」と予測する企業が、2023年卒の調査では49.0%であったが、2024年卒の調査では18.8ポイント増の67.8%となっており、2024年卒はさらに人材獲得競争が激しくなることを予測している企業が多い結果となっている。

  • 「マイナビ 2023年卒企業新卒内定状況調査」より

今回は、「マイナビ 2023年卒企業新卒内定状況調査」をもとに、2023年卒採用の内定状況と2024年卒採用の見通しについてポイントを整理した。

アフターコロナをにらんだ業績の回復、継続的な事業の発展には人材の確保は不可欠ではあるが、2024年卒については2023年卒以上の採用難が予測されており、母集団形成から選考への動員、内定辞退の防止など、企業にとっては乗り越えるべき課題が少なくないといえそうだ。