かなり高性能な各社の指定席券売機

インターネット予約の普及で、10~20年ほど前と比べれば、JR各駅の「みどりの窓口」に並ぶ利用者はかなり減ったように思われる。だが、年末年始や夏休みなど指定券類の1カ月前発売の時期には、まだ長い列ができ、かなり待たされることもある。

  • 出張で新幹線を利用するときは、なにかとあわただしいもの。指定席券売機をうまく利用したい(写真はイメージ)

それに比べて、普段から指定席券売機に並ぶ利用者の列は格段に少ないように思える。「機械はわからない」と、生理的になんとなく敬遠しているのか、あるいは人間の係員に相談したほうが安心できるのか。両方ともある駅では、「みどりの窓口」のほうが混雑する傾向にあるのは間違いない。

けれども、あくまで私見だが、JR各社の指定席券売機の操作方法は、銀行などに設置されているATMの操作方法と比べても、さほど難しいとは思わない。慎重に、順番に表示を追っていけば、それほど問題はないだろう。

JR東日本の駅では、要員削減という経営的な主旨から言えば本末転倒なのだが、指定席券売機の利用をすすめ、操作を案内する係員が配置されていることもあるので、遠慮なく質問すればいい。そもそも、指定席券売機の操作方法の案内掲示は、機械の周辺にあふれている。

  • 指定席券売機では、乗車券や自由席特急券も購入できる(写真はイメージ)

「みどりの窓口」でできることは、ほぼすべて指定席券売機でできると考えてよい。現金・クレジットカードのいずれでも支払い可能で、領収書の発行もできる。思っている以上に高性能なのだ。一度さわってみれば、その便利さに気がつくはずで、時間がないときなど、空いている指定席券売機の存在はありがたい。

指定席券売機でできることは?

JR各社の指定席券売機(JR西日本では「みどりの券売機」と呼ばれる)の機能は、会社が違ってもそれほど大きな違いはない。一部の機種によってはできないこともあるが、基本的な機能はかなり広い範囲のニーズに応えている。

  • 指定席券売機は「みどりの窓口」内や、他の自動券売機が並ぶ付近に設置(写真はイメージ)

  • JR東日本の指定席券売機。各社とも機能はほぼ同じ(写真はイメージ)

まず、新幹線・在来線を問わず、乗車券・特急券を購入する。「東海道・山陽新幹線」「常磐線」など、おもな方面が示されている場合はそこから進めばよい。方面が表示されていない列車でも、乗車駅、降車駅、乗車日時などを入力して列車を検索する「乗換案内」で表示されたならば、そこから進めば特急券などを購入できる。

もちろん自由席特急券も購入できる。また、乗車券も特急券と同じ区間はもちろん、区間が別でも購入可能であるし、「乗車券」という表示から、全国のJR線(JRの列車が乗り入れている会社線も含む)の乗車券だけ買うこともできる。

  • 他社の列車でも、「乗換案内」で空席検索をかければ購入することができる(写真はイメージ)

その他、「おトクなきっぷ(割引きっぷ)」も指定席券売機で買える。「青春18きっぷ」だって買えるのだ。ただし、販売範囲が限定されている割引きっぷは、販売範囲外の駅では買えないので注意が必要だろう。

便利な機能としては、新幹線回数券など指定席に乗車できる回数券や、割引きっぷの座席の指定だけを指定席券売機で行えることが挙げられる。予定が決まっておらず、先にきっぷだけ買っておいた場合でも、乗車直前に「みどりの窓口」の列に並び、長時間待たされることも少なくなる。

その他、「えきねっと」「エクスプレス予約」などのインターネット予約で確保した指定席券の発券は当然というところ。また、日常生活においては、定期券の購入ができるという点も大きなメリットだろう。

指定席券売機でできないこともある

ただし、指定席券売機も完全に「みどりの窓口」の代わりにはなれず、やはり列に並ばなければならないこともある。以下に代表的な例を挙げてみよう。

まず、学割や「ジパング倶楽部」など、紙の割引証を提出して、割り引かれたきっぷを購入する場合は「みどりの窓口」へ。通学証明書が必要な通学定期券の新規購入も同様だ(継続の場合は指定席券売機で購入可能)。一方、「大人の休日倶楽部」など、クレジットカードと一体になった会員証を使う割引は、指定席券売機でも購入可能である。

また、全国の列車が購入可能とはいえ、寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」だけは例外。指定席券売機で寝台券は買えない。その他、大半の観光列車は購入可能(一部の観光列車およびクルーズトレインなどは除く)だが、食事の予約などはできない。

特急券などの変更は、基本的に同じ乗車日・区間であれば、指定席券売機でも規則通り1回限り可能。ただし、たとえば東京駅から新大阪駅までの「のぞみ」の特急券を、東京駅から仙台駅までの「はやぶさ」の特急券には変更できない。つまり、区間や乗車する路線が異なる場合は、「みどりの窓口」でしか変更できない。その他、払戻しも基本的に「みどりの窓口」でのみ可能となっている。

こうして見ると、単純な片道・往復の出張や旅行くらいなら、とくに問題なく指定席券売機できっぷが購入できることがわかる。新幹線を使っての出張などには、大いに活用したいところだ。

※写真はイメージであり、本文とは関係ありません。

筆者プロフィール: 土屋武之

1965年、大阪府豊中市生まれ。鉄道員だった祖父、伯父の影響や、阪急電鉄の線路近くに住んだ経験などから、幼少時より鉄道に興味を抱く。大阪大学では演劇学を専攻し劇作家・評論家の山崎正和氏に師事。芸術や評論を学ぶ。出版社勤務を経て1997年にフリーライターとして独立。2004年頃から鉄道を専門とするようになり、社会派鉄道雑誌「鉄道ジャーナル」のメイン記事を毎号担当するなど、社会の公器としての鉄道を幅広く見つめ続けている。著書は「鉄道員になるには」(ぺりかん社)、「まるまる大阪環状線めぐり」(交通新聞社)、「新きっぷのルール ハンドブック」(実業之日本社)、「JR私鉄全線 地図でよくわかる 鉄道大百科」(JTBパブリッシング)など。