夏の暑さが年々厳しくなって、ついに気象庁がこの4月から「酷暑日」を正式用語に追加した。従来は最高気温35度以上の日を「猛暑日」と呼んだが、今後は最高気温40度以上の日を「酷暑日」と呼ぶ。暑がりな人にとっては、電車の冷房を強化してほしいところだろう。ただし、冷房が苦手な人にとっても厳しい夏といえる。そんな中、JR東海とJR西日本は東海道・山陽新幹線「ひかり」(16両編成)を対象として、7・8月に弱冷房車を設定すると発表した。

  • <!-- Original start --></picture></span>東海道・山陽新幹線「ひかり」(16両編成)の3号車が弱冷房車に<!-- Original end -->

    東海道・山陽新幹線「ひかり」(16両編成)の3号車が弱冷房車に

発表によると、弱冷房車の実施期間は今年の7月1日から8月31日までとのこと。16両編成で走る「ひかり」の3号車(普通車自由席)を弱冷房車とする。ここで暑がりの筆者は少し安心した。自由席なら間違って弱冷房車を指定する心配はない。一方、弱冷房を好む人にとって、弱冷房車を利用したいと思っても座席指定ができないし、急いでいても「のぞみ」ではなく「ひかり」を選ぶことになる。「こだま」にも設定してほしいところだが、停車駅が多く、デッキに行けば扉が開くごとに寒さがやわらぐのかもしれない。

期間中、すべての「ひかり」が対象ではなく、山陽新幹線区間のみ走る8両編成の「ひかり」に弱冷房車は設定されない。もっとも、8両編成の「ひかり」は朝などに数本程度だが。

温度設定は誰が決める? JR東海に聞いた

ところで、そもそも新幹線の車内は何度に設定されているだろうか。加えて、弱冷房車は一般的な冷房車と比べて何度くらい高めに設定されているのだろう。インターネット上で検索してみると、具体的な数値もあるようだが、JR東海に聞いたところ、

「夏季の新幹線車内における温度については、快適にご利用いただけるよう乗務員が状況に応じて設定しております」

とのことで、温度を固定しているわけではないようだった。環境省は「室温28度」を推奨しているものの、新幹線ではスーツや長袖ワイシャツ着用のビジネスパーソンも多いから、28度は暑いかもしれない。外気温が40度前後になると、逆に28度を寒いと感じることもありうる。このあたり、たしかに乗務員が客層や外気温との差を勘案して設定したほうが良いだろう。人間が感じる温度だから、どんなセンサーより人間の感覚が大切だと思う。

ただし、弱冷房設定には目安があって、「空調の設定温度を通常車両より2度高めに設定しています」とのこと。つまり、通常車両の設定温度が28度だったら30度、25度だったら27度になる。通常車両の温度は乗務員が決めるが、弱冷房車の温度差は自動的に決まる。

「新幹線の車内温度は、乗務員がきめ細かく車内巡回を行い、節電に努めながら適切な温度となるよう調整を行っています。一方で、車内の混雑状況、お客様の体感温度にも個人差があるなど、すべてのお客様にご満足いただけない場合もあるため、ご要望があれば、乗務員にお申し付けいただきたいです」

ということなので、車掌に相談してみても良いかもしれない。もっとも、冷房が苦手な人であれば羽織るものを1枚持つなど、乗客も工夫していると思う。筆者の場合は暑がりなので、携帯ファンを持ち込んでいる。新幹線は1車両で最大64~100人が乗るため、全員が満足する温度設定は難しい。弱冷房車は「せめて16両編成のうち1両だけでも冷房が苦手な人に寄り添いたい」という気持ちが込められているのではないかと思う。

弱冷房車の試験導入は2025年に続いて2度目

弱冷房車の試験導入は昨年夏も実施された。昨年(2025年)の実施期間は8月1~7日と8月18~31日の2期間、合計21日間だった。対象となる列車は10本で、東京~岡山間の「ひかり」3往復、新大阪~博多間の「ひかり」1往復、他に名古屋発博多行の「ひかり」1本、名古屋発広島行の「ひかり」1本だった。今年は昨年より大幅に拡大されたことになる。

昨年夏の期間中、弱冷房車の利用者にアンケートを実施していた。JR東海に聞くと、

「調査の詳細は差し控えさせていただきますが、性別や年齢問わず、弱冷房車に対して好感を持っていただける方が一定数存在しました」

これで弱冷房車に一定の要望があるとわかり、今年は対象列車を大幅に増やした。このアンケートは今年も実施するという。アンケートの結果次第で、来年も弱冷房車の試験導入範囲が拡大される可能性がある。「ひかり」だけでなく「こだま」「のぞみ」も一部号車を弱冷房車にするかもしれない。近年の「のぞみ」は3号車も指定席となり、多客期には全車指定席となるから、指定席の弱冷房車を設定するだろうか。その場合はEXアプリの座席選択画面に弱冷房の表示が欲しいし、予約時も気をつけたい。まだまだ仮定の話だが、弱冷房車を望む人は期待しているだろう。

なお、今回の発表で、末尾に「運転状況等により、急遽、試験を中止する場合があります」とあった。昨年はダイヤが乱れた影響により、1本の列車で弱冷房車の設定を中止した経緯があるとのことだった。

N700系にあった送風口が懐かしい

暑がりな筆者の目線で恐縮だが、N700系には窓の上、荷棚の下に小さな送風口があり、わずかながら風向きも変更できた。筆者が東海道新幹線に乗車するとき、この送風口を目当てに窓側の席を取り、着席してすぐに風を浴びて、汗だくの頭を冷やしたものだった。ところが、N700Sでは送風口がなくなっている。

「N700Sからは、N700Aにおいて荷棚下に設置していた空調の吹出ルーバーを廃止し、座席横の側面パネル背面の見えない部分に空調の吹出口を設置しています。空調の吹出口と側面パネルの一体化により、広い吹出口を確保することで室内温度を均一化するとともに、吹出音の低減を実現しつつ、視覚的ノイズを排除することで、より快適な客室空間を実現しています」(JR東海)

つまり、吹出口を分散させて、優しい風を広範囲に行き渡らせることで、換気と空調の効率化を図ったことになる。

冷静に考えれば、暑がりの筆者にとって、冷気を浴びたい気分は乗車直後だけで、つねに風を浴びると肌寒く感じることもあった。前述の通り、暑ければ自身でハンディファンを用意すれば良いことだろう。寒がりの人も、羽織るものやブランケットを用意しておいたほうが良いと思われる。ちなみに、グリーン車ではブランケットの無料貸出しがある。荷棚の車端部にあるので自身で取り出し、使い終わったら座席に置いていけば回収される。

ところで、新幹線にちなんだハンディファンがあるかもしれないと思い、検索したら、すでにJR公認の「ドクターイエロー923型ハンディファン」や「しんかんせん扇風機」が発売されていた。冷房が苦手な人向けに「新幹線ブランケット 923形ドクターイエロー」「N700S普通車座席モケット柄ブランケット」もある。ぜひ駅の売店で販売してほしい。

暑がりにとっても寒がりにとっても、これからやってくる「酷暑日」の対策を準備しておきたいところ。寒がりな人は「ひかり」の弱冷房車を試してみてはいかがだろうか。