サイクリストであれば一度は行ってみたいと思う聖地、「しまなみ海道」に連休を使って行ってきました。今回は、宿泊した宿での気づきについてお話をしたいと思います。

「しまなみ海道」は、広島県の尾道市と愛媛県今治市を結ぶ全長約70km、瀬戸内海に浮かぶ島々を巡り、それらをつなぐ橋を渡って四国まで行けるコースになります。それぞれの島の景色や観光スポット、橋から見渡す絶景から、いつしか「サイクリストの聖地」と呼ばれるほど有名になりました。確かに「いつかはしまなみ海道に行きたい! 」と思わせる魅力ある場所です。せっかく東京から広島まで行くわけですから、2泊くらいしてコースを味わいたい。そこで「サイクリストの聖地」に行くにふさわしい宿にお世話になりました。ロードバイクをこよなく愛するオーナーがサイクリストのためにと、明治時代に建てられた古民家を改装して作られたお宿「会雩(あっこ)」です。

この宿は、ロードバイク乗りであれば絶対に行きたくなる仕掛けがたくさん施されています。まず宿に入ると最初に飛び込んでくるのが、オブジェのように飾られているこだわりのロードバイクたち。このお出迎えは、最高にテンションが上がります。さらに愛車を整備できる空間があり、オーナー自らロードバイクを整備できるので、依頼することもできます。輪行したり、車にバラして積んできたロードバイクは、パーツが曲がってしまったりしている可能性もあります。なので、この宿でメンテナンスができることや、宿内に自分の愛車を入れることができて盗難の心配もないなど、非常に安心感があるのです。このようにロードバイクを愛する宿泊者にとって最高の施設となっています。

  • サイクリストの聖地「しまなみ海道」へ行ってきた(1)宿編

    オーナー所有のお宝もののロードバイクが飾られている。これを見るだけでも感動

  • 宿泊施設にある、自転車整備室。急なトラブルにも対応できる

また各部屋やトイレに至るまで、かつての名選手の名前が与えられています。洗面所のコップにまで名選手の似顔絵が描かれています。宿全体が自転車愛で包まれていると言っても過言ではありません。

そしてこの宿には店主がロードレースで知り合った方々が宿泊に訪れ、常にロードバイクの話をすることができるのです。こんな宿って他にありますか? こだわりを持ってロードバイクに乗っているスタッフ、宿泊施設の細部へのこだわり、宿泊者同士のコミュニケーションまで、ここでの体験すべてに「ロードバイク愛」を感じることができる設計になっているのです。

  • 宿泊者のロードバイクが勢揃い。今日は同じCOLNAGOオーナーが集合した。自転車談義が盛り上がる

ここで感じたのが、「ある意味、クレイジーなまでのこだわりや愛が『また来たい』という感情を作り出す」ということです。これはビジネスにも通ずると思います。実際に、社員から自社製品へのこだわりや愛を感じることができれば、それが顧客に伝わり、熱狂的なファンを獲得することに繋がります。

外食業を例に考えてみましょう。参入障壁はそれほど高くなく、開業する人も多い。よって競合店は数多あり、差別化することが難しい業態です。そんな中でお客様の心を掴み、常連客を作り出すには何が必要でしょうか。それは、クレイジーなまでのこだわりや愛を伝える"人"なのだと思います。そしてそれに共感して集う"人"たちが会話を楽しみふれあえる、そんな空間を作り出せるかどうかにかかっていると思います。そのためには、店主や店長そのものがクレイジーなほどのこだわりや愛を持ち、スタッフ一人ひとりに浸透させる努力が必要です。このような努力を怠っては、顧客に伝わる「メッセージ」がありません。実際に、店舗で提供する鶏肉となる鶏がどのような人たちにどのように育てられ、屠殺され、食材になり料理されていくかをVTRやVRでリアルに見せる研修をしているお店もあります。食の大切さ、命の大切さをスタッフ一人ひとりに知ってもらうことで、お客様に「メッセージ」を伝えようとしているのです。

サービスを提供する"人"が何を語り、サービスを受ける"人"が何を受け取ってくれるか、明確な「メッセージ」により相互に「感動体験」を創造できてこそ、リピート顧客を作り出すことができるのです。

事業活動の本質は「顧客の共感の創造」だとP.Fドラッカー氏は言っています。読者の方々も仕事で何を語り、顧客との間に共感を作り出せているでしょうか。仕事に少しでもこだわりを持ち、愛を持って顧客と接することで、自分のファン、商品のファン、会社のファンを作り出し、あなたから買いたい、もう一度買いたいという顧客が作れると思います。それが、仕事で成果を出す第一歩だと思います。