約半年連載を続けてきた「ビジネス自転車道」ですが、2019年末を区切りに、今回が最終回になります。スタートアップ経営者としてより経験を積み、もっと深みのある示唆を出せるようになったら、また違った角度から「ビジネス自転車道」をお届けしたいと思っています。

さて最終回では、初回のテーマであった「Bicycle for the Mind 〜知の拡張〜」について少し振り返ってみたいと思います。

この連載の「自転車道」とは、読者の皆さんの"知の拡張"を意味していました。自転車を単なる乗り物と捉えるのでは無く、自分の能力を拡張するものとして捉える、視点を変えて物事を捉えるようになることが、ビジネスにおける成果を導き出すという考え方でした。

これからのビジネスシーンに欠かせなくなるであろう「人工知能(AI)」は、「論理的」に物事を考えて処理していくことにおいて、人間よりも圧倒的に長けています。その処理スピードも、人が超えることはできません。

しかし一方で、"そもそも"を「問う」ことや「なぜ」を考えることなど、"発想の起点"を作り出すことは「人間」にしかできないのです。"発想の起点"を創り出すということは、どのように物事を捉えられるかということからスタートします。

ここでその考え方(道)が重要になってきます。起こった事象を単に受けとめるのでは無く、「なぜ? それが起こったのか? 」という「問い」を立てることです。時には物事を違った角度から見て、「なぜ、このようになっているのか? 」を自問自答することです。それを繰り返すことで、知は拡張して行くのです。

人間が「知の拡張」を止めてしまった瞬間に、我々はひとつの「人間らしい価値」を失ってしまいます。全て、人工知能で考えれば良いという、なんとも無機質で、均一的で、完璧な"つまらない"世界を作り出してしまうのではないでしょうか。そう、単に論理的に考えられただけのものは、全て同じ回答に導かれてしまいます。人間が非論理的に、感情的に、感覚的に物事を捉えることができるからこそ、この世界は「面白い」のではないでしょうか。

「自転車」も、自動車がありバイクがある中でなぜ、人はわざわざ自分のエネルギーと筋肉を使って自転車に乗るのでしょうか。なぜ私のような、時間があれば土日でも朝5時に起きて100キロ以上も自転車で走る「変態」がいるのでしょうか。それは、論理的に考えれば「無駄」です。しかし、論理では片付けられない、自転車で山を登ることの苦しみや絶景を見る楽しみ、自転車という趣味を通じての色々な方との出会いと別れ、自転車でレースをすることで得られる達成感、期待と違った結果への絶望感など、「経験」を提供してくれるからこそ、私は自転車に乗るのです。そしてその経験は、自分の能力、知識、考え方を拡張してくれる事につながっていると思うのです。人間だから味わえるこの感覚こそ、大切にしたいと思っています。

これからはテクノロジーの力で社会そのものがアップデートされていきます。この流れは変えることができません。だからこそ私たちは、自分の「知の拡張=自転車」を継続し、自らを進化させ続け、社会のアップデートに適応し、また社会をアップデートする側になる事が大切です。

知の拡張こそ、自分の人生を創り出す唯一の方法だと思うのです。皆さんもぜひ「Bicycle for the Mind 〜知の拡張〜」を続けて欲しいと思います。またお会いしましょう。

執筆:染谷剛史(そめや たけし)

ナレッジ・マーチャントワークス 代表取締役社長
1976年、茨城県生まれ。1998年、リクルートグループ入社。中途・アルバイト・パート領域の求人広告営業に従事。新人賞を受賞。マーケットプロデュース部門に異動し、WEB・モバイル系新商品開発に従事。2001年、株式会社デジットブレーン入社。副編集長、広告局マネジャー。大手ホテルやハウスウェディングのPRコンサルティングに従事。2003年、株式会社リンクアンドモチベーション入社(東証一部上場)。大手小売・外食・ホテルといったサービス業の採用・組織変革コンサルティングに従事。2012年には同社執行役員に就任。

以後も新規事業開発(グローバル事業立ち上げ、健康経営部門の立ち上げ)を経て、サービス業に特化した組織人事コンサルティングカンパニー長を担う。2017年、ナレッジ・マーチャントワークス株式会社を設立し、代表取締役に就任。多店舗展開型企業の経営・組織変革を目的にサービス産業に特化したシフトワーカーマネジメントアプリ「はたLuck」の開発を行う。

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