新社会人の皆さま、ご入社おめでとうございます。さくら咲く4月に、主に学びの場から働く場に身を移して、これから先の未来への期待が膨らんでいることと思います。

ここでは、「新社会人にお勧めする『イノベーティブ』な働き方」と題して、これからの時代に求められる働き方を、イノベーションを切り口にして提示していきます。

  • 自分の進むべき道を見つけていますか?

    自分の進むべき道を見つけていますか?

3つの輪で自分の進む道を確認

自分は社会でてどんなことをしたいのか? できることは何か? 会社で何をすべきか? よくいわれる「Will/Can/Must」です(※下図参照)。

  • 「Will/Can/Must」図 提供:リクルートマネジメントソリューションズ

    「Will/Can/Must」図 提供:リクルートマネジメントソリューションズ

この4月に入社した方々は、まだ会社や組織に参加して間もないために、入社時にやりたかったことと今の業務のギャップはあまりないかもしれません。いっぽう、2018年や2017年に入社した人は、そもそもの自分の希望と、実際にやっている仕事とのギャップがある人がいるかもしれません。

入社3年以内に離職をする人が3割程度いる事実が、その証左ともいえます。

入社時にやりたいと思っていたことと今の業務のギャップは、多かれ少なかれほとんどの人に存在すると言ってもいいでしょう。「Will/Can/Must」の3つの輪が完全に一致する人は非常に少ない。むしろずれていることが普通で す。

●就職活動時に先輩が話していた仕事と違う
●職場の雰囲気がイメージと異なる
●人間関係にかなり不満がある
●仕事の評価が、納得いかない
●会社の方向性に違和感が拭えない

このような違和感に向き合い、大事に見つめてほしい。だからこそ、違和感の正体を探り、解消しようと動き、3つの輪の重なる面積が増えていくのです。そして、違和感がイノベーションのタネになる可能性を秘めていることもあります。

組織の論理を冷徹に捉えることが大切

では、その違和感がなぜ起きるのでしょうか? この3つの輪のなかで、就職活動中は概ね、Will(社会人としてやりたいこと)とCan(自分ができること)を軸に自分と会社を見つめ、自分自身のキャリアを決めてきたと思います。

そのとき、仮想のMust(組織人としてすべきこと)はあったかも知れませんが、生々しいものではなかったでしょう。社会人として1年2年と経つにつれ、組織側の事情が頭をもたげてきます。組織はMustで主に駆動し、どんどん「常識」を作り込んでいく装置なのです。

ビジネスパーソンである限り、組織の一員として生きていかなければいけません。唯我独尊で、自分のしたいことのみをして、自由に生きていくことは、組織人としては非常に困難です。組織の論理を冷徹に捉えていることが大切です。

守破離をおさえて、イノベーターになろう

新社会人はどのようにキャリアを積んでいくべきでしょうか?

守破離(しゅ・は・り)という言葉があります。日本の茶道や武道における師弟関係のあり方であり、修行における過程を示したものといわれています。

「守」とは型を学びきることです。まずは自分の仕事上の守を徹底していきましょう。そのときに大事なのはスタンスです。ただ闇雲に言われたことだけをひたすらこなすのではなく、自分自身でPDCA(Plan・Do・Check・Action)を廻しながら守に向き合うべきです。

P、すなわち仮説をもって、組織からの要請であるMustを理解して仕事をすることで、自分の成長に繋がっていきます。日進月歩、いや分進秒歩の時代です。「石の上にも三年」とか、「一人前になるのに最低でも10年」ということの真偽も見据えながら、守を徹底していきましょう。

仕事のやり方を習得したとき、自分に合ったより良いと思われる仕事のやり方が確立され、既存の型を「破る」ことができるようになります。こうすればもっと効率がよくなる。仕事の基本的考え方は踏襲しつつ、今までにない関係者を巻き込むことで変化を狙う。新しいテクノロジーを導入することで効果を高める……。といった様々な破の方法があるはずです。

更に修練を重ねていくと、既存の仕事に囚われることなく、型自体から「離れる」ことができるようになります。新しい仕事(新しい流派)の確立です。欧米企業と異なり、日本企業の多くは明確なJob Description(職務定義書)を規定していません。仕事をしながら新しい仕事をつくることを求めているのです。

新しい仕事は、新しいコトであり、新しい自分の発見でもあります。正にイノベーションであり、「イノベーティブ」な働き方でもあります。これが守破離です。

これらを踏まえて、「イノベーティブ」な働き方をどう実現していくのかについて、次回以降、事例を提示しながらお伝えしていきます。

執筆者プロフィール : 井上功(いのうえ・こう)

リクルートマネジメントソリューションズ エグゼクティブコンサルタント
1986年リクルート入社、企業の採用支援、組織活性化業務に従事。2001年、HCソリューショングループの立ち上げを実施。以来11年間、リクルートで人と組織の領域のコンサルティングに携わる。2012年より現職。イノベーション支援領域では、イノベーション人材の可視化、人材開発、組織開発、経営指標づくり、組織文化の可視化等に取り組む。