JR東海は2020年中に新型車両「315系」の開発を始める。同社の金子慎社長が新聞社合同の年頭所感向けインタビューで明らかにし、共同通信をはじめ一般紙も1月1日付の記事で報道した。新春向けにふさわしい話題といえる。

  • 中央本線を走る211系の普通列車(写真:マイナビニュース)

    中央本線を走る211系の普通列車。新型車両「315系」は中央本線などで運用予定とされている

「315系」はJR東海にとって313系以来となる新型電車。量産化された場合、既存の211系、213系、311系の3形式を置き換えるという。

■313系の「JR東海顔」は「315系」にも継承される?

JR東海は現在、在来線普通列車向けの電車として211系、213系、311系、313系の4形式を運行している。このうち最新型の313系は1999(平成11)年に登場し、2014年までの15年間で539両が作られた。2019年にも2両が製造されており、これは当初の予定にはなく、事故で廃車となった車両を補充するためだった。この2両も含めると、20年にわたって製造された形式となる。313系の優秀さを示している。

「315系」は21年ぶりの新形式となるけれど、現時点では情報が少なく、まだ「開発するタイミングが来た」というだけで、仕様もデザインも発表されていない。すでに概要が決まっていて、外観デザインが整っていたら、予想イラストを発表したはずだ。

筆者にとって、「315系」の気になる第1点は「JR東海顔」が継承されるか。313系は先頭車両に貫通扉を設置し、既存の形式と連結可能としたほか、311系で採用された運転台の曲面ガラスを継承した。この意匠は後に登場したJR東海の特急用車両や気動車にも継承され、「JR東海顔」と呼びたくなるほどに定着した。東海道新幹線で移動中、車窓にこの顔の車両が見えると、名古屋に近づいたなと思う。

  • 313系はJR東海の在来線普通列車向け車両の代表格として、名古屋・静岡地区で活躍中

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これに関しては、貫通扉の設置は継承されると思われる。在来線の普通列車向け車両は編成同士を連結することで乗客増に対応している。長距離運用ではトイレのある編成とない編成を連結するなどの配慮も行われる。こうした運用を行う車両を置き換えるならば、連結時の通路となる貫通扉は必要だろう。もし変化があるとすれば、ホームドアに対応するため、ヘッドライトを運転席の上に移すくらいかもしれない。

気になる第2点はロングシートかクロスシートか。「乗り鉄」や旅行者には、進行方向と同じ向きで車窓風景を眺めやすいクロスシートが好まれる。しかし通勤時間帯の混雑を考慮すると、ロングシートのほうが扱いやすい。製造コスト面でもロングシートが有利。JR東日本などは積極的に通勤用車両のロングシート化を進めている。

既存の313系は転換クロスシート、セミクロスシート、ロングシートの3タイプがあり、編成も2両、3両、4両、6両とバラエティに富んでいた。運用する線区によって使い分けるためだ。報道によると、「315系」は導入後、「岐阜や愛知といった地域を走る中央線などで運用する予定」とのこと。中央本線で運用される313系は転換クロスシート、211系はロングシートが多い。「315系」が211系を置き換えるならロングシートだろう。活躍する路線が増えればクロスシート仕様も登場するかもしれない。

■新技術が採用されるかどうかも注目

室内照明はLEDになるとして、気になる3点目は車内液晶モニターの採用があるか。JR東海はいまのところ、普通列車向け車両のドア上、窓上などに案内用、広告用の液晶モニターを採用していない。設置されるとすれば、広告運用方法、案内デザインの設計等を新たに取り組む必要がある。液晶モニターが採用された場合、JR東海は新たな広告メディアを持つことになり、ビジネスチャンスにつながるだろう。近年の流れだと車内監視カメラの搭載も考えられる。

性能面は313系を踏襲すると思われる。313系は出力185kWの高性能な「かご形三相誘導電動機」を搭載し、電動車と付随車の割合を1対1としていた。3両編成では電動車1両について電動機数2台のところ1台とし、比率を保った。動力性能としては現在も遜色ない。ただし、新技術としてSiC素子を使ったVVVFインバータ制御装置の採用が予想される。日本車両が製造を手がけ、昨年デビューした東京メトロ丸ノ内線2000系は永久磁石同期電動機を採用している。こうした新技術がどれだけ反映されるか、注目したい。

313系は2両、3両、4両、6両編成によって、同型式で異なる機器構成を採用していた。適材適所で長期の運用計画が見通せるからできたことだった。しかし、編成変更の融通が利かず、保守点検の手順も異なる。「315系」の改良点は省エネルギーと機器構成の整理かもしれない。

313系が長期にわたって製造されたところを見ると、JR東海は1形式を長く使う方針のようだ。同形式の車両を長期運用するなら、製造コストは上がっても保守コストは下げる。これがJR東海の流儀だろう。一方、JR東日本のように数年で新形式を投入し、最新技術を反映させていく方針となれば大変革となる。いずれにしても、新型車両「315系」の正式発表が待ち遠しい。