仙台市交通局は1月7日から、地下鉄南北線向け新型車両「3000系」の制限付き一般競争入札を受け付けている。入札に必要な書類の提出期限は1月23日まで。公式サイトによると、入札項目は「車体製造」「台車製造」「主回路制御装置製造」「空気ブレーキ装置製造」「ATC/O装置製造」「低圧電源装置製造」とのこと。ただし、それぞれの入札参加者募集要領を見ても、仕様は「仙台市交通局本局庁舎で公開」となっている。

  • 仙台市地下鉄南北線の現行車両1000N系

この段階でわかる情報は、全22編成という数量と、ATC(自動列車制御装置)とATO(自動列車運転装置)の搭載くらいだ。現行車両の1000N系は4両編成で全21編成だったから、1編成の増加となる。性能を上げて所要時間や運転間隔を短縮し、増発する目論見か、あるいは検査修繕時の予備編成を1本増やすか。ATCとATOは1000N系でも搭載済み。1000N系は自動運転を実施しているけれども、運転士も乗務する。新型車両「3000系」は無人運転まで進化できるか。そこまでは読み取れない。

この仕様書を取材したと思われる記事が河北新報電子版の1月6日付の記事「新車両は無塗装 仙台市地下鉄南北線に24年度登場」。外装は「無塗装」を基本とする。「杜の都」をイメージした白地に緑帯の1000N系とは大きく印象が異なるだろう。車両のデザインは受注した製造会社が手がけるけれども、仙台市はワークショップを開催して市民のアイデアを反映させる。これは地下鉄東西線でも行われた手法だという。

現行の1000N系は1987(昭和62)年の開業時から使用している1000系の更新車で、2003~2013年に冷房装置の取付け、車いすスペース設置、VVVFインバータ化などが行われた。「3000系」の車体サイズは1000N系と同じ見込み。車内にデジタルサイネージ(トレインビジョン)を搭載し、車いす・ベビーカースペースは全車両に設ける。性能面では省電力化を進め、制御系統の機器は二重化して故障による運行停止を避ける。「3000系」の導入は2024年度から7年間かけて行われ、1000N系と交代していく。

■アルミとステンレス、同じ銀色でも性質は異なる

ところで、最近の鉄道車両はアルミ合金やステンレスを採用することが多い。無塗装で素材の色のまま銀色という車体も多いけれど、じつは塗装した車両もある。相模鉄道は相鉄・JR直通線用の12000系がステンレス製、相鉄・東急直通線用の20000系がアルミ合金製の車体で、どちらも濃い青色「YOKOHAMA NAVYBLUE」で塗装されている。東海道新幹線で見られる「白地に青帯」の車両も、300系以降はアルミ合金製の車体だ。阪急電鉄もアルミ合金製の車体にマルーンカラーを施している。

そして仙台市地下鉄南北線の1000N系もアルミ合金製の車体に塗装している。一方、地下鉄東西線の2000系はアルミ合金製の車体だけど無塗装。これはアルミ合金製車両としては珍しい事例で、引き続き「3000系」でも採用されるかもしれない。

  • 仙台市地下鉄東西線の車両2000系

アルミ合金もステンレスも銀色で、特性としては鋼鉄より軽く、さびにくい。だからどちらも塗装する必要性は低い。しかし、アルミ合金製の車体は塗装する事例が多い。その理由はほこりや鉄粉、油などの汚れがこびりつきやすいから。塗装した車体は洗車すれば汚れを落とせる。しかし、アルミ合金は汚れでだんだんくすんでくる。素地にこびりついた汚れを取り、光沢を復活させるには研磨したほうがいい。西武鉄道の新型特急車両001系「ラビュー」はアルミ合金製の車体だけど、素材の色ではなく、クロームシルバーで塗装している。

ステンレス製の車体は比較的汚れにくいため、無塗装が多い。だからといってアルミ合金製がステンレス製に劣るということはない。これは塗装とその保守に限った話で、アルミ合金製はステンレス製より軽く、車体を軽量化できるなど利点もある。鉄道事業者が車両の素材を選択する場合、製造価格なども合わせて総合的に判断する。

前述の河北新報の記事によると、車体の素材はアルミまたはステンレスの両方を検討しているようだ。無塗装にこだわる理由は、「車両基地に塗装ブースを設置する必要がなく、塗り直しなどのメンテナンス費用が少ない。車体の重量を軽くできるメリットもある」とのこと。これは1000N系と2000系の運用実態から導かれた方針だろう。

塗装しないという選択肢だけ見ればステンレス製になりそうだけど、南北線はほとんど地下区間だから、東西線の2000系と同様、アルミ車体の無塗装でも汚れにくいという判断があったかもしれない。仙台市交通局の実績次第で、他の地下鉄でもアルミ合金製車体の無塗装化が進む可能性もある。