大型連休の前後にJR北海道の話題がいくつか報じられた。連休前には寂しい話題もあり、北海道新聞4月26日付「石北線無人5駅、廃止検討 JR『地元と事前協議』」によると、JR北海道は石北本線の無人駅5駅と、通行量の少ない踏切41カ所の廃止を検討しているという。同紙4月28日付「宗谷本線の無人29駅、管理見直し協議へ 沿線自治体とJR」では、見出しの通り宗谷本線の無人駅29駅と、踏切48カ所の廃止を含めた見直しについて、関連自治体がJR北海道と協議する意向で合意したと報じられた。

路線名 廃止を見据えて検討する駅
石北本線 北日ノ出駅、将軍山駅、東雲駅、瀬戸瀬駅、生野駅
宗谷本線 日進駅、北星駅、智北駅、南美深駅、紋穂内駅、恩根内駅、豊清水駅、天塩川温泉駅、咲来駅、筬島駅、佐久駅、歌内駅、問寒別駅、糠南駅、雄信内駅、安牛駅、南幌延駅、上幌延駅、下沼駅、徳満駅、抜海駅、南比布駅、北比布駅、蘭留駅、塩狩駅、東六線駅、北剣淵駅、下士別駅、瑞穂駅

対象となる駅と踏切の条件は石北本線も宗谷本線も同じ。駅については「過去5年間で1日平均の利用者が3人未満」の無人駅、踏切については「1日の車両通行量が50台未満で、5キロ以内に迂回路がある」となっている。おそらくこれがJR北海道にとって統一の基準であり、今後は他の路線でも同様の駅と踏切が選定されると思われる。自治体としては路線の維持が念頭にあるだろうから、路線維持のため協力する方針になると予想される。

ほぼ同じタイミングで前向きな話題も出た。ひとつは日ハム新球場への引込み線方式による新駅設置案。北広島市が北海道日本ハムファイターズの新拠点の誘致に成功し、新球場の建設にあたり、複合商業施設も備えたボールパークとする。この用地は千歳線沿線にあり、北広島市はJR北海道に新駅設置を要望している。JR北海道は協力するとしつつも、道内随一の過密ダイヤである千歳線の新駅設置には慎重な姿勢を見せる。

そこで本線上ではなく、引込み線を分岐させた上でボールパークの敷地内に新駅を設置する案が出た。千歳線の本線上に新駅を作れば、札幌方面および新千歳空港方面の一般利用者とボールパークの観戦客が混在する形となり、混雑解消のためにボールパーク新駅または北広島駅で車両を増結するなどの対応が必要になる。一方、引込み線方式の新駅設置案も、観戦客の動きに合わせた臨時列車を過密ダイヤにいかに組み込むかという課題がある。どちらが良いかは議論の余地があり、予算との兼ね合いもあるだろう。

新千歳空港駅からスイッチバックなしで道東方面へ

さらに大きなニュースとして、新千歳空港駅の抜本的な改修案が報じられた。第1報は北海道新聞5月2日付「新千歳空港駅、路線改修へ 苫小牧・道東方面が直通に 22年の完成目指す」。手狭になった新千歳空港駅の拡張だけでなく、千歳線の新ルートを建設し、大幅に改良する構想である。実現すれば、南側の苫小牧方面からスイッチバックなしで新千歳空港駅へ進入でき、石勝線の列車も新千歳空港駅へ乗入れ可能となる。事業費は約1,000億円、2019年度予算で調査設計費を計上し、早ければ2022年に完成させるという。

北海道新聞の記事で示された地図では、新しい新千歳空港駅と石勝線の位置関係がつかみにくかった。札幌側で線路を合流させると、札幌~帯広・釧路間の特急列車は新千歳空港駅でスイッチバックするようにも読み取れる。新千歳空港駅を始発駅にするかもしれないといううがった見方もできる。

  • 新千歳空港(新)駅の配線略図(左側が現在の配線、右側が構想)

この疑問を解消する記事が、北海道建設新聞の5月3日付1面「新千歳空港駅の改良構想 千歳線本線引き込み 苫小牧方面は貫通」だった。この中で線路配置の略図が掲載されており、新千歳空港(新)駅は島式ホーム2面4線で真ん中の2線は行き止まり式、石勝線とは駅南側から分岐する新線を介して本線と合流する方式にするようだ。これなら道東方面の特急列車もスイッチバックなしで新千歳空港駅に立ち寄れる。

北海道新聞では「国土交通省が(中略)検討に着手した」と、国土交通省を主語にしていた。そのために国が主導するプロジェクトのような印象を受けた。一方、北海道建設新聞では「JR北海道が(中略)構想している」と、JR北海道が発案したような書き出しとなっていた。本文では「4月下旬に開かれた財務省の財政制度等審議会の中で、JR北海道幹部から構想が説明された」とある。

新千歳空港駅を作り直し、長編成に対応するとなれば、北広島市のボールパークから札幌方面の輸送にも対応できるのではないか。なるほど、ボールパーク新駅単体の話で、JR北海道が慎重だった背景はこれかと腑に落ちた。

これらを組み立てると「JR北海道が発案し、空港政策、訪日外国人増加施策を検討する国土交通省が前向きに取り組む意向」になると予想できる。うがった見方をすれば、JR北海道が財務省に支援を要請したけれども、財務省からは国土交通省の予算で解決せよと指導された……という成り行きだろうか。国土交通省としては、鉄道局の予算が限られているため、空港特別会計から費用を捻出する方向で検討せざるをえない。省内で最も力を持つ航空局を説得できるか。これが今後の注目点になるかもしれない。

新千歳空港(新)駅は地上に設置するわけにもいかないだろうから、かなり長いトンネル区間になると思われる。鉄道ファンとして真っ先に浮かぶ課題としては、この区間に道東方面の特急「スーパーおおぞら」「スーパーとかち」をはじめ、気動車で運行される列車が乗り入れられるかどうか。かつて気動車特急が地下駅を発着した事例はあるし、現在の新千歳空港駅に気動車の臨時列車が乗り入れた実績もある。とはいえ、地下駅に多数の気動車列車が毎日停車するとなれば、換気機能の強化などが必要になるだろう。

解決すべき課題は多く、構想のままかもしれない。しかし「乗り鉄」としては、新線ができたら乗りたくなる。今後の動向に注目したい。