東京2020はさまざまなスポーツをお子さんとともに楽しめるまたとないチャンスです。そこで、子どもの運動能力向上に詳しいスポーツトレーナー・遠山健太が各競技に精通した専門家とともにナビゲート! 全33競技の特徴や魅力を知って、今から東京2020を楽しみましょう。今回は「近代五種」! 競技解説はトレーナーの松下優子さんです。

  • 近代五種の魅力とは?

近代五種の特徴

近代五種はその名のとおり、フェンシング、水泳、馬術、レーザーラン(射撃、ラン)というまったく違った5種類の競技を1日で行い、その総合得点を競う競技です。種目は、男子/女子個人戦、男女ミックス(混合)リレーがありますが、東京2020で実施されるのは男子/女子個人戦のみです。心身ともに限界まで追い込まれるため、万能性を競う複合競技、「キング・オブ・スポーツ」とも呼ばれています。

ヨーロッパでは、王族・貴族のスポーツとも呼ばれて人気がある半面、さまざまな競技施設・競技用具を要することから競技人口が伸び悩んでいました。しかし、国際近代五種連合のさまざまな取り組みにより、加盟国が100カ国を超えるなど近年広がりを見せています。ヨーロッパやロシアなどの競技レベルが高く、近年では中国、韓国を初めアジア諸国も競技レベルが向上してきており、日本もその国の一つです。

まずは5種類の競技について説明しましょう。

1.フェンシングランキングラウンド(エペ)
全身すべてが有効面となる「エペ」で戦います。1分間1本勝負、総当たり戦で行うため、1本1本の勝敗が勝負の分かれ道となります。集中力と瞬発力が必要な種目です。勝率70%250点が基準点で1勝すれば+6点、1敗すれば-6点となります。

2.水泳(200m自由形)
200mの自由形。大会により25mもしくは50mプールのどちらかで開催されます。2分30秒を250点(男女共通)とし、1秒あたり2点増減します。

3.フェンシングボーナスラウンド(エペ)
フェンシングランキングラウンドのランキングによってこのボーナスラウンドが与えられるかが決定します。フェンシングランキングラウンドの下位選手から順に30秒1本勝負でスピード感あふれる試合が繰り広げられます。ランキングラウンドとボーナスラウンドの合計点がフェンシングの得点となります。

4.馬術(障害飛越)
貸与馬に乗り、制限時間内に競技アリーナに設置されたさまざまな色や形の障害物を飛越しながらコースを周回します。実際に馬と対面するのは競技開始20分前となるため、騎乗の技術だけでなく馬の性格や特徴を把握し、柔軟に対応する能力も必要となります。この種目はたとえ上位選手だったとしても思わぬミスが頻発し、順位の入れ替わりが激しくなります。そこも見所の一つです。12障害15飛越で行われ、300点満点からの減点方式となります。

5.レーザーラン(射撃5的+800m走を4回)
これまでの3種目の得点を1点=1秒にタイム換算し、時間差を設けて上位の選手からスタートします。10m離れた場所から直径約6㎝の標的にレーザー(レーザーピスト使用)を5回命中させたら、800mのコースを走行します。それを4回繰り返し、着順を競います。長い距離を走った後に息を整え、小さな的に命中させることは肉体的にも精神的にも非常に難易度が高い種目です。

また、射撃は競技者が横に整列した状態で行うため、横の競技者のプレーが視界に入り、かなりのプレッシャーを感じます。焦らず自分のプレーに集中し、パフォーマンスを発揮できた者が勝利をおさめることができます。

毎回の射撃での順位の入れ替わりが見所で、このレーザーランでフィニッシュした着順が競技全体の最終順位となります。

近代五種を観戦するときのポイント

近代五種の観戦方法について、東京五輪を念頭にご紹介します。男女合わせて3日間、隣接した2会場で行われます。フェンシングランキングラウンドは武蔵野森総合スポーツプラザ、そして、水泳、フェンシングボーナスランド、馬術、レーザーランは五輪史上初となる東京スタジアムの仮設プールで開催されます。4種目は同一会場で開催されるため、観客は移動することなく試合を観戦し楽しむことができます。特に最終種目のレーザーランは、疲労が蓄積した中での順位の入れ替わりが激しい戦いとなり、観客もハラハラドキドキ、会場は大いに盛り上がること間違いありません。

東京2020でのチームジャパンの展望

現在、東京2020の日本代表に、男子は岩本勝平選手、女子は朝長なつ美選手の内定が決まっています。新型コロナウィルス感染拡大の影響で東京2020が延期となり、代表内定をかけた日本選手権なども開催未定となっております。今後、試合が開催された後、代表残り2枠(男女1名ずつ)を勝ち取るのは誰か注目です。

遠山健太からの運動子育てアドバイス

すべて競技特性が異なるので、体力づくりもすべて5競技分の特徴をとらえてトレーニングする必要があるこの競技。現段階では、似たような競技は小・中学生にはありませんが、近代五種の子ども版が今後スポーツ界に出てきたらいいなと常々思っていました。「子どもはいろんな動きを体験することが大切」というのは以前からお話させていただいておりますが、1つの特化したスポーツをやってその成績を評価するよりも、様々なスポーツを年間通して行って体づくりをしていくことはとても有益なことだと考えています。もし、何かしらのスポーツ教室に通われるのであれば、年間通して3つほどの種目をローテーションで行うのもよいかもしれません。

競技解説:松下優子

エヌディエス、ジム&スタジオNeeDS所属。施設マネージャー。プロスポーツ選手から一般のお客様まで幅広くトレーニング指導を行う。公式HP、インスタグラム:needs_0118