東京2020はさまざまなスポーツをお子さんとともに楽しめるまたとないチャンスです。そこで、子どもの運動能力向上に詳しいスポーツトレーナー・遠山健太が各競技に精通した専門家とともにナビゲート! 全33競技の特徴や魅力を知って、今から東京2020を楽しみましょう。今回は「グレコローマンスタイル/レスリング」! 競技解説は、齋藤圭輔さんです。

  • 「グレコローマンスタイル/レスリング」の魅力とは?

グレコローマンスタイルの特徴

レスリングでは「フリースタイル」と「グレコローマンスタイル」という2つのスタイルが存在し、グレコローマンスタイルは男子のみの競技です。フリースタイルと違い、腰から下での攻防が行えず、上半身のみでの攻防が繰り広げられます。その歴史は古く、語源であるグレコは「ギリシャの」、ローマンは「ローマの」とあるように、古代ギリシャの時代から行われ、近代五輪第1回大会から採用され続けています。

競技方法はフリースタイルと共通で、マット上にある直径9mのサークル内で3分2ラウンド合計6分で戦います。勝敗の決め方もフリースタイルと共通で、両肩をマットに1秒間つける「フォール勝ち」と、6分間の中で相手より多く得点を獲得することによる「判定勝ち」等があります。判定の際に同点の場合、相手より大きいポイントを獲得することで優勢になる「ビックポイント」や、最後に得点を獲得することで優勢になる「ラストポイント」などがあります。そのほか、フリースタイルなら10点差、グレコローマンスタイルなら8点差をつけるとその時点で勝敗が決まる「テクニカルフォール」もあります。東京2020では59kg級、66kg級、75kg級、85kg級、98kg級、130kg級の6階級で試合が行われます。

体力的には、相手を一瞬で素早く持ち上げたり投げ技をかけたりするのに必要な「瞬発力」、3分×2ラウンド・合計6分間に力を出し続けるための「筋持久力」と「心肺機能」、相手からの素早い攻撃を防御するための「反射能力」、グラウンドでの防御姿勢や投げ技などの攻撃姿勢の際に反ったり捻ったりする「柔軟性」などが要求されます。

グレコローマンスタイルを観戦するときのポイント

グレコローマンスタイルは基本的に腰から下への攻撃ができないので、投げ技が多くなります。投げ技をかけるには、相手より低い重心で押し、相手の重心が自分より高い状態にします。さらに、押し出されるとポイントを奪われてしまうので、押し返しに来たタイミングで投げ技をかけにいきます。

投げ技には、相手の押し返す力を利用しタイミングよく一瞬で相手の懐に入り込む「一本背負い」、相手の腕を取り巻き込みながら投げる「巻き投げ」、胴体へのタックルなどで相手に組みついた状態から自分の後方へ持ち上げ投げ飛ばす「そり投げ」、相手が腹ばいの状態から一気に持ち上げ自分の後方に投げ飛ばす「リフト」など様々な種類があります。ちなみに「リフト」はもっとも大きな得点である5点を獲得できます。

フリースタイルのように足下を攻撃されることがないため、相手を持ち上げ、投げ技などの攻防が多くなるので、体を起こした姿勢になります。攻撃の際は、相手を押し体勢を崩して持ち上げにいくので、強く地面を蹴る脚部と臀部の力、相手を引き付け投げ飛ばすための強い背中の力、相手の懐に一瞬で入る素早い身のこなしが要求されます。防御の際は、相手に組まれても投げる体勢に入られないように重心をずらす技術や、投げられても体が天井を向かなければ得点を低く抑えられるので、体が返らないように耐えるための強い体幹が要求されます。

グレコローマンスタイルでは、試合中、膠着(こうちゃく)状態にならないようにするため、消極姿勢の選手には注意が2回入ります。2回目の注意が入った際、相手選手はパーテールポジション※からの攻撃を選択する権利を得ることができます。スタンド状態で試合を再開することもできます。パーテールポジションの際に、相手の胴体に手を回して回転させる「ローリング」や相手を持ち上げ相手が浮いた状態で「ローリング」をかけることで、高得点を取りにいくなど、激しい攻防が繰り広げられます。

レスリングはルールがわかりにくく、膠着状態になると何をやっているかわからなくつまらない試合になってしまうため、長い歴史の中で一般の観戦者でもわかりやすいように何度もルール変更が繰り返されてきました。そんな中で見られる豪快な投げ技や巧みな身のこなしはとても迫力があり、魅力的です。

※パーテールポジションとは、一方の選手がマットの中央で両手・両ひざをついて四つんばいになり、もう一方の選手がその背後から攻める構えのこと

東京2020でのチームジャパンの展望

現在2020出場が内定しているのは、2019ヌルスルタン世界選手権で金メダルを獲得した60kg級の文田健一郎選手です。東京2020でもメダル獲得が期待されます。他階級ではまだ出場枠を獲得しておらず、2020年3月27日~29日オリンピック・アジア&世界予選、および4月30日~5月3日オリンピック最終予選(ブルガリア・ソフィア)で出場枠獲得を目指していましたが、現在、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、大会の開催そのものが不透明な状況になっています(3月20日時点)。

世界大会などでは、日本選手は軽量級で活躍する選手が多いため、メダル候補選手が同階級でかぶって出場できないケースが多いのも現状です。中、重量級では、ここ数年世界選手権で入賞する選手はおらず、まだ五輪出場枠を獲得できていないので、東京2020での出場を期待しています。

遠山健太からの運動子育てアドバイス

レスリングというと、どうしてもフリースタイルのイメージが強いですよね。私は「グレコローマンスタイル」を観戦したことがありますが、投げ技をはじめとてもダイナミックな動きが多くて迫力があります。子どもと一緒に観ても、フリースタイルとの違いを理解してもらえないかもしれませんが、上半身中心の動きで相手を押したり引いたり、投げたり……どちらかというと、動きは相撲に似ているかもしれません。倒れたら終わりの相撲に対して、グレコローマンスタイルはグラウンドでの攻防もあります。現在、相撲が幼少期に推奨される遊びのひとつであるように、将来はグレコローマンスタイルもそうなるかもしれませんね。まずは子どもと一緒にグレコローマンの試合の動画を観てみてください。

競技解説:齋藤圭輔

ウィンゲート所属。高校時からレスリングを始め、大学時に全国大会でグレコローマンスタイル3位入賞。学生時代の多くの怪我や病気の経験を生かし、日々の健康と体力向上の素晴らしさを伝えるため、現在はパーソナルトレーナーとしてアスリエ与野、オアシス浦和、ルネサンス 北朝霞で活動している

ナビゲーター:遠山 健太

リトルアスリートクラブ代表。トップアスリートのトレーニングに携わる一方で、ジュニアアスリートの発掘・育成や、子どもの運動教室「リトルアスリートクラブ」のプログラム開発・運営など、子どもの運動能力を育むことに熱心に取り組む。自身、2児の父であり、子どもとともにめぐった公園での運動や子育て経験を生かし、パークマイスター(公園遊びに詳しく、子どもの発育を考えて指導ができるスポーツトレーナー)としても活動している。著書は『スポーツ子育て論』(アスキー新書)、『運動できる子、できない子は6歳までに決まる!』(PHP研究所)、『ママだからできる運動神経がどんどんよくなる子育ての本』(学研プラス)など多数