東京2020はさまざまなスポーツをお子さんとともに楽しめるまたとないチャンスです。そこで、子どもの運動能力向上に詳しいスポーツトレーナー・遠山健太が各競技に精通した専門家とともにナビゲート! 全33競技の特徴や魅力を知って、今から東京2020を楽しみましょう。今回は「マラソンスイミング」! 競技解説は、牧村祐太さんです。

  • 「マラソンスイミング」の魅力とは?

マラソンスイミングの特徴

マラソンスイミングとは、オープンウォータースイミング(OWS)という名称で行われている競技です。世界選手権では5㎞、10㎞、25㎞が採用されていますが、その中で10㎞競技をマラソンスイミングと定義しています。五輪では、この10㎞競技が採用されるため、マラソンスイミングとなっています。2008年北京五輪から正式種目に採用されました。

マラソンスイミングは、主に屋内の決まったレーンを泳ぐ競泳と違い、海や川・湖などの自然の水の中を泳ぎます。個人が泳ぐレーンに決まりはなく、コースは基本的に決められたブイをまわっていきます。

国際水泳連盟が定めている競技規定のもと、統一したルールで行われている点で、遠泳とは異なります。泳ぎ方に決まりはなく、途中で底に立っても失格にはなりませんが、歩いたりジャンプをすることは禁止されています。また、水温にも規定があり16℃以上31℃以下となっています。

フリーレーンのために選手同士が近いので、選手同士の接触や駆け引きなど競泳とはひと味違ったレース展開があります。また、自然の中でのレースのため、単純な泳力のみではなく、当日の波や水温の変化、天候・潮流などの影響を考慮し、レースを進めていく知識や経験・テクニックが必要となります。

マラソンスイミングを観戦するときのポイント

観戦するときの3つのポイントをご紹介しましょう。

①自然や人との駆け引き
前述のとおり、マラソンスイミングは自然の中を泳いでいきます。当日の波や水温の変化、天候・潮流などが大きく影響します。時間の経過とともに変化していく状況を読み、自然環境を味方につける力が大変重要になります。最短距離を泳ぐことが重要なわけではなく、試合環境・試合状況を読んでコース取りをしていきます。

「なぜそんなところを泳ぐのだろう」と思うこともあるかもしれませんが、それも戦略のひとつなのです。会場によっては海洋生物との接触や影響などもあります。また、選手同士が近いため、接触による体力のロスや集団の中での立ち回りや対人の影響も大きく受けます。ただ、やみくもに泳いでいるわけではなく、自然や人の流れを読み対応していく戦略や技術を感じながら観戦していただけると、よりマラソンスイミングの奥深さに触れることができるでしょう。

②終盤でのスパート
マラソンスイミングのトップ選手は約2時間で10㎞を泳いでいきます。序盤・中盤は、体力を温存してトップ集団から離されないような位置取りが重要。ドラフティングといわれる前の選手の後ろにつき推進力を得るテクニックや集団での位置取り、波の利用などを考慮したコース選択など様々な駆け引きは、すべて終盤でのスパートのためといっても過言ではありません。7㎞付近から徐々にペースが上がり、近年では数人が一気にゴール前になだれ込むレース展開も珍しくありません。長距離でのレースではありますが、レースが終わるまでは何が起こるかわからない、目の離せないレースになることでしょう。

③給水
前回のリオ五輪でも、ユニークな給水方法が「釣り」のようだと話題になりました。ポンツーンと呼ばれる浮き桟橋から「フィーディングポール」と呼ばれる給水用の竿(5m以内)を用いてドリンク等を受け取ります。

2時間ものあいだ、自然の中を泳ぎ続けるタフなレースにおいて、給水は大変重要な要素になります。補給ミスによる脱水やエネルギー不足は、終盤のスパートに影響を与えると考えられるからです。また、給水のためにいったんコースを外れなければいけないため、うまく給水ができないと大幅なタイムロスにつながってしまい、順位を落とすこともあります。見た目もさることながら、非常に重要な要素となる給水もぜひ注目してご覧になってください。

東京2020でのチームジャパンの展望

3月20日時点で、まだ代表選手は決まっていません。男子では豊田壮選手、南出大伸選手。女子では貴田裕美選手、新倉みなみ選手の4名が5月末に行われる世界最終予選会に出場し、代表権を争います。

この中で唯一五輪の出場経験があるのが貴田選手。今大会出場となれば3大会連続となります。それぞれ5月末に向けて経験を積み、調整してくるでしょう。当日の試合環境によっては誰が勝ってもおかしくありません。誰が代表になっても五輪本番での活躍が期待できるといえるでしょう。単純な泳力だけで判断ができない種目だからこそ、代表権争いからも目が離せません。

遠山健太からの運動子育てアドバイス

「泳ぐ」は幼少期にマスターさせたい基本動作のひとつ。危機回避のためにも習得したほうがよいと言われ、日本では泳ぐ環境がどこのエリアでも整備されていますよね。泳げるようになると、水球、サーフィン、アーティスティックスイミングなど、水泳以外のスポーツにも展開できるでしょう。マラソンスイミングはあまり知られていない競技のひとつですが、やはり泳げないと実施できないので、四泳法とはいいませんが、幼少期のうちに25mを完泳できるようにしたいものです。ただ、水泳指導の過程で「水への恐怖」の克服に失敗すると前に進みづらくなるので、まずは公園のじゃぶじゃぶ池に行くのもよいかもしれませんね。

競技解説:牧村祐太

リラクゼーションサロン、スポーツクラブ勤務等を経て、フリーランスで活動。指導実績は0~104歳まで。現在は札幌市内で子どもから高齢者、アスリートまで幅広い世代に対して身体や動作の基礎づくりをテーマにトレーニング・コンディショニング指導を行い、プロゴルファーや競泳選手等のトレーナーや専門学校にて講師を務める。JSPO-AT・NASM-PES・健康運動指導士

ナビゲーター:遠山 健太

リトルアスリートクラブ代表。トップアスリートのトレーニングに携わる一方で、ジュニアアスリートの発掘・育成や、子どもの運動教室「リトルアスリートクラブ」のプログラム開発・運営など、子どもの運動能力を育むことに熱心に取り組む。自身、2児の父であり、子どもとともにめぐった公園での運動や子育て経験を生かし、パークマイスター(公園遊びに詳しく、子どもの発育を考えて指導ができるスポーツトレーナー)としても活動している。著書は『スポーツ子育て論』(アスキー新書)、『運動できる子、できない子は6歳までに決まる!』(PHP研究所)、『ママだからできる運動神経がどんどんよくなる子育ての本』(学研プラス)など多数