東京2020はさまざまなスポーツをお子さんとともに楽しめるまたとないチャンスです。そこで、子どもの運動能力向上に詳しいスポーツトレーナー・遠山健太が各競技に精通した専門家とともにナビゲート! 全33競技の特徴や魅力を知って、今から東京2020を楽しみましょう。今回は「野球」! 競技解説は、トレーナーの田中優也さんです。

  • 「野球」の魅力とは?

野球の特徴

野球は1チーム9人ずつで構成された2チームが3つのアウトを取ることにより、攻撃と守備を9回繰り返し行います。9名の選手は各チームの戦略により、打順と守備位置(投手・捕手・1塁手・2塁手・3塁手・遊撃手・左翼手・中堅手・右翼手)が決まっており、打撃側のチームが反時計回りに1塁・2塁・3塁・本塁と1周することで得点が得られ、より多く得点しているチームが勝者となります。

東京2020の会場となる福島あづま球場の大きさは両翼100m中堅122m、一方、横浜スタジアムは両翼94.2m中堅117.7mと、スタジアムによって大きさが違うことも野球の特徴の一つです。

東京2020では10日間で全16試合が行われ、出場6チームを2リーグに分け、予選ラウンドは総当たりで戦い、1~3位の順位を決めます。その順位をもとに、ノックアウトステージと呼ばれる決勝トーナメントでは、敗者復活を含む変則トーナメントを全チームで行って優勝チームを決めます。

野球を観戦するときのポイント

東京2020では、各国のトップレベルの選手たちが招集され、レベルの高い試合になることが予想されていますが、まずは投手・捕手のバッテリーVS打者の駆け引きがポイントになると思います。

北中米の投手は160km/hを超える速球派が多く、手元で動かすボールに力強さがある印象です。一方アジアの投手は、技術やコントロールに優れている投手が多いように思います。また、アンダースローやサイドスローなど、いろいろな投法で変化球を武器に持つ技巧派など様々なタイプの投手がいるため、どのような投げ方でどんなボールを投げてくるのかを観てるだけでもおもしろいと思います。

攻撃側はどのような戦略で攻撃をするかによって打順が変わります。ホームランバッターが揃う強打が売りのチームがあれば、足を絡めながらヒットを量産していくチームもあり、いろいろな形でチームの特徴を最大限に生かす攻撃があるため、各国どのような攻撃をしてくるかも楽しみです。

また、守備面でも肩が強い選手や足が速い選手など、各国身体能力の高い選手が揃っており、難しい打球や強烈な打球を裁くスーパープレーが出ることが予想され、ハイレベルなプレーを観られる野球少年は興奮することでしょう。

東京2020でのチームジャパンの展望

現時点(2020年4月5日)で出場が決定している国は、開催国の日本、イスラエル、韓国、メキシコです。あと2枠をかけて戦う中には、アメリカ、プエルトリコ、ドミニカ、キューバ、チャイニーズタイペイなど、プレミア12に出場した強豪国が残っており、どの国が出場を決めても、日本にとっては厳しいゲームが予想されます。

稲葉篤紀監督率いる侍ジャパンは、プレミア12で見事優勝しているだけに相手国は目の色を変えて挑んでくると思われます。それに立ち向かう侍ジャパンはこの6月にメンバーを決定する予定でしたが、東京2020が1年延期となったことで、まだどうなるか決まっていません。プレミア12のメンバーも含め、コンディションの良い選手など新たにメンバー入りする可能性も考えられます。登録メンバーは24名とプレミア12のときより少ない人数になるため、「走・攻・守」が揃った選手が多く選出されるでしょう。

日本チームは「先発投手が試合を作り、中継ぎ投手が流れを引き継ぎ、また悪いときは流れを変え、抑え投手が試合をまとめる」というように、バッテリーを中心として、いかに守りからリズムを作れるかが勝敗の鍵になります。

また、攻撃側では、1番打者の出塁率が侍ジャパンの課題になるでしょう。1番打者の出塁率を上げ、日本らしいつなぐ野球でバントや盗塁など足を絡めた攻撃で、コツコツ1点ずつ先制点、追加点を取っていくことで勝利につながると考えています。クリーンナップには強打者が揃い、ホームランも期待できるため、大量得点につながることで侍ジャパンに勢いづくことは間違いないでしょう。

2008年の北京五輪では4位という結果でしたが、東京2020ではメダル争いはもちろんのこと、プレミア12同様に優勝を期待したいと思います。

遠山健太からの運動子育てアドバイス

日本を代表するスポーツとも言える野球。打つ、走る、投げる/捕る、など様々な基本動作が入っていることもあり、体力面で総合的な能力が求められますし、チームで勝利を目指すためには頭を使いながらプレーすることも必要です。最近では幼少期に技術・戦術に重きを置きすぎるがあまり、楽しさの部分が抜け落ちてしまっていることが問題になっていることも耳にします。私がアメリカにいたころは学校でティーボール※が盛んでした。基本的なルールは野球に近いですが、体力や技術がそこまで試合に影響することがないので、男女混合でも楽しくできました。ケガの予防という観点でも、幼少期はティーボールから始めてみるのも良いかもしれませんね。

※野球やソフトボールに極めて類似したボールゲームで、1988年に国際野球連盟と国際ソフトボール連盟が協力して考案したもの。本塁プレートの後方に置いたバッティングティーにボールを載せ、その止まったボールを打つことからゲームが始まるためピッチャーが存在しない点が、野球やソフトボールと大きく異なる

競技解説:田中優也

日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー。ウィンゲート所属、ティップネス東武練馬店・吉祥寺店で活動中。Jrユースサッカー クラブ与野フィジカルコーチ。埼玉県さいたま市のパーソナルトレーニングジム「JustStyle」のチーフトレーナーとしてジュニアアスリート、一般の方まで幅広くトレーニング、コンディショニング指導を行っている。