東京2020はさまざまなスポーツをお子さんとともに楽しめるまたとないチャンス! そこで、子どもの運動能力向上に詳しいスポーツトレーナー・遠山健太が各競技に精通した専門家とともにナビゲート! 全33競技の特徴や魅力を知って、今から東京2020を楽しみましょう。今回は「やり投」。競技解説は、パーソナルトレーナーであり、現役のやり投選手である松田知明さんです。

  • 「やり投」の魅力とは?

やり投の特徴

やり投とは、男子は重さ800g、長さ2.6m~2.7m、女子は重さ600g、長さ2.2m~2.3mのやりを角度約29度のラインの内側に、どれだけ遠くに投げられるかを競う競技です。その際、やりが地面に落下するまでは助走路に留まらなければなりません。

やり投はヨーロッパで盛んに行われており、特にフィンランドでは、国技として小さな子どもの大会もたくさん開催されています。日本では、中学生まではジャベリックスローといわれる、ひと回り小さなプラスチック製のやりを使うスタイルで、高校生から本格的にやり投をスタートさせるのが主流となっています。

1985年にドイツ出身のウベ・ホーン選手が104m80cmという、とてつもない記録を出したため、翌年にやりの規格が変わり、飛距離が10%程度落ちるように調整されました。女子も1999年に規格が変更されています。

現在の男子世界記録は、チェコ出身のヤン・ゼレズニー選手が出した98m48cm。世界歴代2位の記録と4m以上も差があることから、数十年は抜かれない記録だといわれています。女子の世界記録は、現役選手のチェコのバルボラ・シュポタコバ選手が持つ72m28cmです。日本記録は溝口和洋選手が出した87m60cmで、当時の世界歴代2位の記録。女子はつい最近である2019年10月、北口榛花選手が出した66m00cm。前回の日本記録を2m20cmも更新する素晴らしい記録です。

やり投を観戦するときのポイント

やり投の基本的な投げ方はみんな同じです。やりを後ろに引いて助走をつけて投げます。ただし、真っ直ぐ投げなければまともに飛ばないため、筒の中を通すようなイメージで投げなければいけません。また。助走のスピードをやりに伝えられると記録も伸びることから、短距離走を得意とする選手が多いのも特徴です。じつは、やり投の選手は、100mを10秒台で走ることも珍しくないんです。

やり投を楽しむための3ポイントをご紹介しましょう。

①日本選手の活躍に期待ができる!
日本の男子選手は80mオーバーの記録を持っている選手がほかの国と比べても多く、女子選手も成長著しい選手がかなり多いです!

日本人は、野球、バレー、バドミントンなど上から打つ、投げるスポーツが盛んなことから小さいときから腕を振ることに慣れていて、途中からやり投に転向する人が多いのも、そこに理由にあるのかと思われます。2014年に86m83cmの記録を出した新井涼平選手や、2009年ベルリン世界選手権で銅メダルを獲った村上幸史選手も、中学まで他競技をやっています。女子で注目の北口榛花選手もバドミントン出身! 一躍、東京2020のメダル候補となっています。

②やりの種類とキレイな放物線
やりにはかなりの種類があり、それぞれ素材、硬さ、握るグリップの厚さなどが違います。個人的には、スパイラル模様が入ったやりが飛んでいる姿がとてもキレイだと思います。特に上位選手の投げるやりは本当に見事で、美しい放物線を描く様子には感動します。

やりの価格は1万~20万円以上とかなり差があり、なかでも、海外製のやりはとても高価です。私自身、学生時代は上位選手たちが20万円以上のやりを何本も持っているのをうらやましく眺めていました(笑)。

風が強い日は、向かい風が吹くと押し戻される印象がありますが、じつは、風に乗せるように投げられるとかなり伸びていきます。それぞれの選手の、風との付き合い方にも注目です。

③やり投選手はカッコいい!
やり投選手は、筋肉が全体的に発達していて、身長も高い人が多いんです。私は北京オリンピックの金メダリストである、ノルウェーのアンドレアス・トルキルドセン選手の甘いマスクと肉体美にずっと憧れていました。

日本の佐藤友佳選手も美人アスリートとして活躍していて、人気の選手です。しかも、自己ベストの62m88cmはオリンピックの入賞ライン! 海外ではモデルとして活躍している人も多いので、イケメン、美女探しといった楽しみ方もいいかもしれません。

東京2020でのチームジャパンの展望

北京五輪の8位入賞ラインは、男子82m06cm、女子59m64cm。
リオ五輪の8位入賞ラインは、男子82m42cm、女子62m92cm。

先ほど紹介した新井涼平選手が、自己ベストの86m83cmを、北口榛花選手が66mの記録を出せば、入賞どころか2人ともメダルが取れる位置にいます。ほかにも、2019年に男子で80m以上の記録、女子で60m以上の記録を出している日本選手が何人もいるので楽しみです。まだ内定ではないので、ここからまた伸びてくる選手に期待です!

遠山健太からの運動子育てアドバイス

アメリカンスクールに通っていた高校時代、陸上競技シーズンに入ると、選手層の薄さからやり投げに駆り出され、肩を痛めた苦い思い出があります。通常のボール投げとは異なる特殊な投げ方は、ぜひ東京2020でチェックしてみてください! 全国小学生陸上競技交流大会では、ジャベリックボール投という、やり投の小学生版の競技があります。この競技に採用されているジャベボールは、投げ動作の練習用具としてニシ・スポーツから売られているもの。このように、ボール以外のものを使って子どもに投げ動作体験させてみるのも楽しいかもしれませんね。

競技解説:松田知明

おおさきRC所属、パーソナルジムLIFE sports代表。宮城県古川工業高等学校でやり投を本格的に始め、佐賀インターハイに出場。仙台大学中退後、仙台リゾート&スポーツ専門学校でトレーナー資格を習得。その後、スポーツクラブで東北No.1売り上げトレーナーとなり、独立。2017年、仙台でパーソナルジムLIFE sportsを設立。現在もやり投を続けながら、プロスポーツ選手や一般向けの指導を行っている。

ナビゲーター:遠山 健太

リトルアスリートクラブ代表。トップアスリートのトレーニングに携わる一方で、ジュニアアスリートの発掘・育成や、子どもの運動教室「リトルアスリートクラブ」のプログラム開発・運営など、子どもの運動能力を育むことに熱心に取り組む。自身、2児の父であり、子どもとともにめぐった公園での運動や子育て経験を生かし、パークマイスター(公園遊びに詳しく、子どもの発育を考えて指導ができるスポーツトレーナー)としても活動している。著書は『スポーツ子育て論』(アスキー新書)、『運動できる子、できない子は6歳までに決まる!』(PHP研究所)、『ママだからできる運動神経がどんどんよくなる子育ての本』(学研プラス)など多数