ウィーンから、ザルツブルグとミュンヘンを経由してパリに到着した。

ミュンヘンではヒトラーがナチス結成の決起集会を開いたビアホールを訪れた。3000人を収容できるらしい。ここにモーツァルトやレーニンもかつて訪れたというが、今でも営業が続いているのが面白い。

ホフブロイハウス(ミュンヘン)

列車でパリへと移動する。昨夜、自由すぎるせいかビールを少し飲み過ぎてしまった。ズボンのベルトがきつい。胃がもたれ気分があまり優れない。

パリではモンパルナス地区に宿をとった。有名な墓地がある。哲学者サルトルと妻(事実上の)のボーボワールが眠っている。きょうは時間が早いので訪れる人も少ない。

サルトルの眠る墓(モンパルナス墓地)

そういえば、20代のサラリーマンの方から、メールで「転職したい」という相談を先日受けた。理由は詳しくは書けないが、「マニュアル通りには生きたくない!」という思いをこの方は私に吐き出した。

「マニュアル通りに生きたくない」というのが目的で、その手段が「転職」だと考えているなら、その目的とその手法はずいぶんとかけ離れている気がする。相談されても、私は自分なりの「マニュアル」を答えるしかない。「マニュアルを破るマニュアル」を一応は考えてはみるが、これはトートロジーではないか。

答えに困る相談をされると、私は必ず「一人旅に出てみたら?」と言ってお茶を濁す。実際、一人旅をすれば大抵の悩みごとは解決する。経験上というより、私の中の統計上の話になる。

日々の生活の中で、どうしても解決できない悩みを解消しようと思ったら、非日常的なものに触れて気分を変えてみるしかない。色々と参加して経験してみるとよい。一見バラバラでも様々な角度から物事を見られるようになる。

パリ市内のピカソ美術館がリニューアルした。作品はもちろん、何よりも展示の方法と美術館全体の雰囲気が素晴らしい。

「ピカソの作品を知ってもらう」ではなく「ピカソを体感してもらう」というポストモダン(!?)な感じが良い。きっとピカソ本人が生きていたら、こういう展示の方法を望んだかもしれない。

「マニュアル」は破るためにはどうしたらよいのか。

自らの姿が作り上げられる拘束感。これを破るには非連続的な参加と体験を積んで自分なりのマニュアルで造作するしかない。後からいくらでも自分なりの「つじつま」は合わせられる。

新装されたピカソ美術館


<著者プロフィール>
片岡英彦
1970年9月6日東京生まれ神奈川育ち。京都大学卒業後、日本テレビ入社。報道記者、宣伝プロデューサーを経て、2001年アップルコンピュータ株式会社のコミュニケーションマネージャーに。後に、MTVジャパン広報部長、日本マクドナルドマーケティングPR部長、株式会社ミクシィのエグゼクティブプロデューサー等を経て、2011年「片岡英彦事務所」を設立。企業のマーケティング支援の他「日本を明るくする」プロジェクトに参加。2015年4月より東北芸術工科大学にて教鞭をとる。