有名撮影地のことを「お立ち台」と呼び、人が集まるということは、以前に解説しました。今回はもう少し踏み込んで、美しい風景と列車を絡めた撮影ができるところと、編成写真の撮影ができるところに分けて解説します。条件がよければいい写真を撮れるお立ち台は、意外に奥が深いのです(鉄道名や駅名などの設定は架空です)。

一眼レフカメラの扱いに慣れてきたテツヤくんは、久しぶりに御目出塔駅大俯瞰に行ってみることにしました。桜の時期に行ったときは混雑で思うように撮影できませんでしたが、今回は「望遠レンズもあるし、いい写真が撮れるはずだ! 」と、自信満々です。しかし、春は大混雑だったお立ち台が閑散としています。それには理由が……。

なんと、木が伸びて葉も茂り、駅や線路がよく見えなくなっていたのです。どんなにいい機材を準備しても、自然の力にはかないません。「木って意外に伸びるのが早いんだなあ」と、歯がゆい思いをしたテツヤくんでした。

お立ち台の様子は常に変化しています。特に撮影地周辺が落葉広葉樹林の場合は、夏と冬では全く条件が違います。更に、建物ができていたり自然災害があったりして景観が変わり、お立ち台が終焉を迎えることもあるのです。その一方で、新しい道が開通して新たに立ち位置ができたり、森林の伐採があって見晴らしが開けたりするなどして新しいお立ち台が誕生することもあります。ベテラン鉄ちゃんになると、線路周辺の地勢の変化まで観察して、新しいお立ち台を探すことから撮影に入るのです。時間やガソリン代を無駄にしないためにも、本に載っているような有名なお立ち台であっても常に最新情報をチェックしたいものです。

ここでの撮影をあきらめたテツヤくんは、ベテラン鉄ちゃんに誘われて別のお立ち台に行ってみることにしました。ところが、着いたところはただの線路際。美しい風景を撮れると思っていたテツヤくんは、「ここがお立ち台?? 」と少々心配。しかし実はここ、編成写真が撮れる線路際のお立ち台でした。編成写真とは、走っている列車の全体がわかるよう、バランスよく撮影したものです。周囲をよく見てみると、電柱が少なくて背景にはいい感じに森があります。しかもバリ順(バリバリの順光)。一見何気ないような風景でも、列車を格好よく撮影するための条件が揃っているのです。

先客の鉄ちゃんは4、5人だけ。まだまだ立ち位置は余裕かと思いきや、みんなが集まっている場所を少し外れるだけで構図に余計なものが入ってしまいます。このように、線路際のお立ち台は狭いもの。「ちょっとくらいいいだろう」と線路内に立ち入ると、「鉄ちゃんが列車を止めた」などという残念なニュースにつながってしまいます。このような場所で役立つのが脚立。2段程度の低いもので十分ですので、ひとつ持っていると便利です。

ミニ情報
「1st-train」
(webサイト)
以前紹介したような鉄道撮影地ガイドの本では、主に美しい景色と列車を撮れる撮影地を紹介していました。一方、このwebサイトでは編成写真を撮れるお立ち台が中心になっています。このような情報は、すべての鉄ちゃんたちの共有財産。線路から十分に離れ、ゴミを捨てない、違法駐車をしないといった基本マナーを守ってくださいね。