「毎日のように怒ってしまう」「言うことを聞いてくれなくて困る」「夫(妻)と育児方針がかみ合わない」……などなど、育児に悩みは尽きません。特に、毎日忙しく過ごしている共働き夫婦なら尚更でしょう。

ここでは、育児中のマイナビニュース会員に"育児の悩み"についてアンケートを実施。寄せられたお悩みに対して"どのようにすべきか"を、NHKの育児番組でキャスターを務めた経験を持ち、現在は育児のセミナー講師や書籍執筆なども行っている天野ひかりさんに、アドバイスしてもらいます。

  • ルールを守る子ではなく"考える子"に育てよう


ルールを守ることは、誰かと一緒に生活する際、気持ちよく過ごすために必要なことですね。しかし、ときどきルールを守ることが目的になってしまっているケースがあり残念に思います。

今回は、「子どもが順番を守らなかったり規則を破ったりして反抗的です。何度も順番を守りなさいと教えてもできるようになりません。どうしたらいいのでしょうか」というご相談に親子コミュニケーションアドバイザーがお答えします。

与えられたルールを守ることが全てか

あるとき、園児数人が公園でブランコに乗る際、自分たちで決めて順番に乗るようになりました。最初は早い者勝ちだったのに、そのうちじゃんけんで順番を決めたり、昨日乗れなかったお友だちが先に乗れる順番にしたり、漕ぐ回数を決めて乗ったり……とても感心しました。

子ども達はなぜルールを決めて順番に乗れるようになったのでしょうか。それは、自分だけが乗るのではなく、みんなが楽しい気持ちになれることを考え出したからです。

仮に大人がルールを決めてそれに従わせたら、守った子はいい子で、守らなかったらダメな子というつまらない結果になったでしょう。大人がルールを押し付けず子ども達を見守ったので、子どもは毎日自分たちでルールを作り直して楽しく遊べたのです。

私たちは、ルールは絶対に従わなければならないものと受け止めがちですが、それが全てではないということですね。

時代とともに変わるルールもある

以前、高校の先生向けの講演でこんな質問をしてみました。「お子さんが突然頭を金髪に染めたら何て声をかけますか。2択でお答えください」
1.ダメだろ! すぐに黒髪に戻してきなさい。
2.お! 金髪にしたんだ。

1と答えた先生は200人中6人でした。「校則で金髪は禁止だから守らせねばならないから」との答えです。

しかし私は、校則は守らなければならないものだと教え込むこと以上に、なぜこの校則があるのかを考えさせる教育であってほしいと思います。校則はみんなが心地いい学校生活を送るためにあるのだとすれば、先ほどの園児のように、自分たちでルールを考え出せるのではないでしょうか。

最近ニュースでも取り上げられている頭髪についてはどうでしょうか。金髪や茶髪、白髪や赤毛は、みんなが心地よい学校生活を送るための妨げになるのでしょうか。世界にはいろんな色の髪の人がいます。それを当たり前に受け入れて育ってほしいと思います。

もちろん、学生の本分が勉学だとすれば、髪に必要以上に時間をかけて欲しくない、との思いもあるでしょう。でもそれがきっかけで将来の職業が見えることもあるかもしれません。もう一度黒髪にもどさせる時間の方が無駄な気もしてきますね。

つまり、ルールは時代の流れや状況によって通用しなくなるものがあるということです。子どもには「みんなで共存するためにこのルールは必要かな」と自分の頭で考えられるよう育ってほしいと思います。

そのために大人がかけることばは、「守りなさい!」ではなく、まずはその行動を受け入れて認めることばをかけましょう。

ブランコの例では、「順番に並びなさい!」ではなく、「みんなブランコに乗りたいよね!」です。そして「そのためにどうしたらいいかな?」と考えられるように子どもを信じて見守ることが大切です。

子どもは乗りたい気持ちをわかってもらえた後で、お友だちにも乗りたい気持ちがあることを理解します。そして、自分の頭で考え始めます。そうすれば先に書いた通り、自分たちでルールを作り始めるのです。

髪を染めた例では、「ダメだろ! 校則を守れ」ではなく、「金髪にしたんだね」と声をかけましょう。頭ごなしに言われずに寄り添ってもらえれば、本音を話し始めるかもしれません。校則を破るにはよっぽどの理由があるはずだからです。

いじめや罰ゲームなどが隠れているかもしれません。「これはダメでしょ」とコミュニケーションを断絶させずに、子どもが話をしやすい状況を作れるといいですね。

そして子ども自身が、校則を破った本当の原因を解決できるように導けることが大事です。状況や考えを整理し、自分が取るべき行動を子ども自身で決められるように、親は会話を重ねられるといいですね。

ルールを守るか守らないかではなく、このルールはみんなと共存するために必要なのかな? と考え、ルールを変えられる子に育てたいものです。

そのために大人にできることは、従わせるのではなく、まずは信じてそのままを受け入れることばをかけることではないでしょうか。