連載コラム『あなたの家計簿見せて! "給料減少時代"の家計診断』では、相談者のプロフィールと実際の家計簿をもとに、5人のFPが順番に、相談者の家計に関する悩みについての解決策をアドバイスします。


【相談内容】
まだ家のローンも残っているのですが、夫が老後に不動産収入を得たいといっていて、ほぼフルローンでアパートを1棟購入しようとしています。子どもたちの教育費もあと少しかかるのですが、どのようにやりくりをしていったらいいでしょうか? アドバイスをお願いします。

相談者プロフィール

相談者の家計状況


【プロからの回答です】

  • 2つのローンを抱えるのは大変なことだと思います。あと少しでお子さまの教育費がかからなくなるので、単純に考えればそれをそのままローンの支払いにあてれば、2つのローンを抱えても返済は可能のようにみえます。しかし、よく考えてください。ご主人の現在の収入がいつまでも続く保証はありません。やりくりだけでなく、収入やローン返済について考えることが大切です。

(※詳細は以下をご覧ください)


2つのローンの支払いについて

アパートローンの内容がよくわからないので、具体的にお話ができないのですが、明確なことは5,500万円の借金を背負うということ。アパートのローンについては、入ってくる賃料を返済にあてようと考えていると思いますが、満室状態はいつまでも続くものではありません。また、リフォーム費用や税金等支払いもあります。最初は満室でローンの支払いができていたものが、途中で空室がでてきて支払いが大変になる可能性も否定できません。そこで、2つのローンの支払いについてご提案させていただきます。

お子さまの教育費がかからない時点(長女で1年後、長男で3年後)で、余裕ができるので、ローンを一部繰り上げ返済して、マイホームのローンを早くなくすことが肝要です。

現在、貯蓄が1,100万円あります。この中で普通預金と定期預金から一部繰り上げ返済にまわします。その後お子さまの教育費が減っていきますので、これも貯めて一部繰り上げにまわします。これでほぼマイホームのローンは返済が終わるかと思います。それでもまだ余裕があれば、今度はアパートローンの繰り上げ返済を行ってください。

金利の低い現在、貯蓄をするよりもローンの返済にまわした方がいいでしょう。いざという時の費用も必要ですが、ある程度で十分だと思います。

やりくりよりも奥様の働き方を見直す

今後の家計は、収入としてアパートの賃料がプラスされますが、これはそのままローンの支払いや税金に消えてしまいます。まずは、マイホームのローン返済を減らすことで、これについては上記に記載した通り、繰り上げ返済でなるべく早めに完済します。

家計の支出については、実はあまり見直し項目がありません。18歳以上の4人家族で考えれば、かなり節約しているのではないでしょうか? 保険料も1万円と必要最低限の加入です。そこで、お子さまが大学生のうちは、家計のやりくりを考えるというよりも、収入を増やすということを考えてみるべきかと思います。収入を考えるということは、奥様の「パートの働き方を変える」=「103万円の壁を越えて130万円以内で働く」ということ。

130万円までは、今のようにご主人の扶養のままでいられます。反対に、ご主人の所得から配偶者控除(38万円)をマイナスすることができなくなりますが、別に配偶者特別控除(最高38万円)をマイナスすることができますので、ご主人の所得もそれほど変わりません。さらに税金の支払いも下記のようにそれほど高額ではありません。

130万円を超えてしまうと、ご主人の扶養から外れて自分で国民年金と健康保険に加入しなければならなくなるので、その場合は思い切って正社員となるか、パートなら160万円以上を稼ぐことを目指してください。実は、130万円~160万円の範囲で働くパートの場合が一番損なのです。せっかく長時間働くことにしたのに、社会保険料や税金で収入は130万円とほとんど変わらないという結果になってしまいます。

65歳から悠悠自適の人生を送る

お子さまが大学を卒業するたびに1人分ずつ教育費がかからなくなります。それを繰り上げ返済にまわしましょう。そして早めにマイホームのローンを終了し、あとは夫婦2人でアパートのローンを返済してください。アパートのローンもある程度お金が貯まった時点で、繰り上げ返済を考えます。なるべく65歳までにはアパートのローンも完済したいので、退職金を利用しての返済も考慮します。そうすれば、65歳以降は、アパートの賃料と年金でローンの心配もなく、豊かに暮らしていけるのではないでしょうか。

<著者プロフィール>

(株)プラチナ・コンシェルジュ ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士 菅田芳恵

大学卒業後、証券会社・銀行・生保・コンサルティング会社に勤務。49歳から2年間で7つの資格を取得し独立。様々な資格を活かして多面的に話をすることが得意。資産運用、家計管理、ライフプラン、キャリア形成、年金、心の健康についてアドバイス、執筆、セミナー講師として活躍中。