西表島(沖縄県八重山郡竹富町)の自然環境を守り、島の文化や暮らしの継承を目指す一般財団法人 西表財団の徳岡春美氏にも話を聞いた。同氏は「環境教育」「文化継承」「エコツーリズム」「環境保全」をキーワードに活動しているNPO法人 西表島エコツーリズム協会にて11年勤務したのち、2022年5月より現職に就いている。

  • 一般財団法人 西表財団の徳岡春美氏

徳岡氏は、西表島が抱えるオーバーツーリズムの問題について説明する。たとえば、大自然が魅力のマングローブの森では、近年、ハイシーズンになると観光客で大混雑が起きている。そもそも自然体験型ツアーを提供する事業者自体が急増しており、2020年には100社を突破。これにともない観光ガイドの質も低下した。幹線道路では制限速度を超過して飛ばし、あちらこちらで迷惑駐車も目立つように。また地元の人しか知らなかったような小さな滝にまで観光客が訪れるようになり、地域住民との軋轢も報告されている。

この先、島の観光事業を持続可能なものとするため、いま、どんな取り組みが必要だろうか――。竹富町が資金面をサポートし、観光業以外の業種からも広く人を募って設立した西表財団では、自然環境の保全・管理、文化や島の伝統的な営みの保護・継承、適正な観光管理の実現に向けた取り組みなどを精力的に進めている。

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――西表島にて観光ガイドを行える事業者数を絞る考えは?

徳岡氏「原則的には、竹富町観光案内人条例(令和2年4月施行)をクリアした人であれば観光ガイドになれるルールです。この免許制度をつくるとき、地元住民からは『西表島に住んでいないと観光ガイドできないようにして欲しい』という要望がたくさん寄せられましたが、職業選択の自由などにも抵触するため、そこまで強い制限はかけていません」

――観光ツアーのあり方について、ほかの地域の取り組みも参考にしている?

徳岡氏「北海道の知床五湖では10年ほど前から利用人数を調整しています。このシステムや運用の部分を参考にしました。西表島エコツーリズム推進全体構想を策定し、観光名所については『1日に何人まで訪れることができる』という上限人数を定めています。たとえばピナイサーラの滝は2023年10月より、1日あたりの上限を200人までに制限します」

――徳岡さんは、西表島に移住して19年とのこと。島のどんな魅力に惹かれた?

徳岡氏「当初、マリンスポーツが目的で滞在していましたが、やがて島の文化を知るようになったんです。民具づくりの第一人者である、のーじ(星公望)さんに草木編みを教わったり、あるいは島の祭りの手伝いまでするようになって。この大自然があるからこその文化、それが現代まで残っている。私が惹かれたポイントでした。では今後、どうやってその文化を守り、次の世代に伝えていくべきか――。気が付いたら、そんな事業に携わるようになっていました」

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――最後に、観光客に向けてメッセージがあれば。

徳岡氏「そうですね。観光ツアーに関する取り組み、イリオモテヤマネコ保護の取り組みも含めて、地域にはいまどんな課題があり、どんな取り組みをしているのか、そんなことを知ったうえで西表島まで遊びに来ていただければ幸いです。西表財団としても、これから解決していかなければいけない課題がたくさんあります。地道に取り組んでいきたいと思っています」

取材協力: 竹富町