「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第58回のテーマは「怒るときのルール」です。

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最近「怒らないための考え方」を書いてたら、パートナーから「それだといつも穏やかな人みたいだから、怒ってるときの話も書け」と言われたので書きます……。

怒るときに我が家ではまず、「気持ちの共有(共感や理解)」を求めます。そしてその後、必ず「どうしてほしいか」という、「相手に求める、正解の行動」まで伝えることにしています。これをしないと、夫婦ゲンカがケンカのまま終わってしまい「問題」→「解決」までになかなか至りません。20話「やってほしいことをやってもらうには」の回でも書きましたが、正解は提示した方が相互理解が進むと思います。

実際の話し合いでは、マンガで書いたように「こういうセリフが言ってほしい。こうしてくれたら嬉しい」と伝えて、実際に言ってもらいます。たまにこの話を友達などにすると「素直によく言ってくれるね。うちは無理」と言われるときもありますが、我が家の場合、夫婦で空手をやっていて私(妻)の方が先輩で上段位のせいか、素直にやってくれるんですよね。空手は鍛錬として正しい「型」を打つのですが、夫婦のコミュニケーションも「型を打たせる」スタイルです。コミュニケーションも日々鍛錬なのです……!

うちのパートナーは、正解を自分で考えさせるより、こっちの方がコミュニケーションがスムーズなんですよね。パートナーが私から不満を言われてふて腐れるのは「で、どうすればいいの? 」という気持ちだからだそうです。わからないままにこちらの怒りを解消しようとしてやったことが「さらに怒りを増幅させたらどうしよう」と思うと、だいたい「様子見」となり、こっちは「あんだけ言ったのになんの行動もしないのか。そうか……」と失望する流れになります。だったら、「正解もセットで言う方がいいのでは??」となり、我が家では「こういう行動で困った/傷ついた」「だからこうしてほしい」をセットでいうことになっています。

「こうしてほしい。こう言ってほしい」と実際にロールプレイさせちゃうのはロマンのかけらもありませんが、ロマンよりは「今日夫婦がニコニコしていられる」方が私にとっては優先順位が高いのです。

それに「私にとっての正解」はちゃんと夫に伝えなきゃわからない。全員に当てはまる「妻が不機嫌なときはこうする」みたいなマニュアルってあるようで本当は無いんじゃないかと思います。妻が不機嫌だったり、ストレスが溜まっていたりするようなときに花を買ってきてくれて嬉しい人もいれば、何かを買ってもらうよりもじっくり話を聞いてくれる方が大事な人もいる。

我が家は相互理解が大事だからこのような運用をしていますが、お互いが完全に役割分担して別々に行動した方がいい夫婦だったらこんなロールプレイは必要無かったりするかもしれません。夫婦の正解を「世間の中」に求めるより自分たちで話しあって理解しあった方が快適だと思い、実践してみています。

そして我が家では、「正解を伝える」のは相手に対してのサービスなんですよね。相手に「正解を教えない、自分の機嫌の直し方を当てさせて、不正解の場合は怒ったまま」というのはすごく意地悪だなあと思うのです。私はできたらやりたくない。「自分の機嫌の直し方はわからない。どうにかして! 」というのが許されるのは、子どもだけなんじゃないかな? 大人なら自分の機嫌の治し方なんて自分で提示しなきゃいけないのでは? と思って私はやってます。

うちでは正解を提示して、やってもらったら「そうそう、ありがとう。嬉しい」とその場で伝えてハッピーになるんですけど……。その「よし、それが正解だ! 」って言う態度が雄々しすぎて「山賊の頭領に褒められてるみたい」とよく言われてしまいます。空手で後輩に指導してる方がよっぽどニコニコしています。怖いと思われたくないから……!

まあ、うちの夫にはそっちの「強そうな人」のアプローチの方が受け入れられやすいからそうしてるんですけどね……(40回「ケンカの仕方もそれぞれ」でも書きましたが、うちの夫は「なよなよされると、ムカつく」「強い人の方が好き」という人なので……)!!本当に夫婦の正解は夫婦の中にしかないなあと思います。

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。