「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第181回のテーマは「『役割』でお付き合いしないようにしてます」です。

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コロナ禍ですが、みなさま年末年始の帰省はする予定ですか? 我が家はパートナーの実家に行く予定があります。とはいえ、このご時世なので宿泊はホテル、集まっての会食などはない予定です。

それでも義実家へ行こうとなるのは、親戚との関係がよいからだと思っています。去年も書いたのですが、私は義実家との関係が良好です。たまに「事実婚なのに、義実家とお付き合いしてるんですね」と言われることがあります。

確かに「義実家から『嫁』として扱われてストレス」という人が、義実家からの干渉を受けないように事実婚に移行したという方もいらっしゃいます。婚姻という慣習が元になっている「役割」を無効にするために、「事実婚にする」というのはアリだな……と思っています。

私自身も初婚で法律婚していたときは、「結婚しているのに○○(仕事とか、長期出張とか、夜の外出とか)するなんて」などと言われたことがありました。役割によって「あるべき姿」とか「正しい姿」があるとされていて、それから外れると「外れないようにしなさい」と、あちこちから指摘されがちなんですよね……。

私は事実婚をして、それをオープンにすることによって「役割による押し付け」がグッと減ったと感じています。「どうも、通常の役割とは違うっぽい」と思ってもらうブランディングに成功している……とも言えます。

でも、本来は法律婚、事実婚関係なしに、「役割」ではなく本心で人と付き合ったほうがいいじゃないか? とも思っています。法律婚していたって、義実家と気が合わないなと思ったら付き合わなくてもいいはずなのです。

でもなぜかそういう立ち振る舞いは「わがまま」とされてしまい、みんな「いい年なんだから、ちゃんとした大人にならなきゃ」と自分の心を抑圧するように言われてしまいがちです。

私自身は、初婚のときに自分で自分に「いい年なんだから、ちゃんとした大人になりたい」と言い聞かせて行動していました。でも気がついたら「私のやりたかった結婚生活ってなんだろう」となってしまいました。私は人の縁には恵まれているのか、元夫の実家とも良好な関係で、特に義実家とのお付き合いで無理はしていませんでした。でも「息子である夫は何もしないから、代わりに妻が」と母の日のカードやプレゼントの手配などもやっていて……色々とお世話になっていたので、感謝の気持ちでやっていたのは確かですが、どこかで「これは良い妻の役割」と思ってやっていたような気もします。

考えてみれば、どうして「息子は何もしない」が許されているのか……? という気もします。男性は気遣いがなくても「仕方ない」と許されて、女性は「女なのに」と気遣いを求められる。実の息子が何もしないのに、妻が夫の親に気遣いを「しなくてはならない」というのも、社会的な構造のアンバンランスさだなと思うようになりました。

妻が、夫の親子間にある関係性の歪みやストレスの緩衝材になったり、スケープゴートにされたりするケースはよく聞きます。そんな状況で楽しく義実家と付き合えるわけがないですよね。「親とは妻がうまくやってくれればいい」と思っている男性には、当事者意識をもって妻を守ってほしいと言いたいです。

我が家はお互いが離婚を経験して、再婚で事実婚にするときに「役割でタスクをやるのはやめよう」と決めました。例えば、親に何か贈り物をするなら「実子」がやる。お互いの実家との付き合いは、行きたくないときは行かない。無理はしない。という約束です。

実際には私は義実家に行ったら色々とお世話をしてもらい、とても楽しい時間を過ごさせてもらいました。そうなると、「お世話になるし」と手土産も気合いを入れて考えるようになるし、帰宅したら「お世話になったから」とお礼のお手紙などを書いたりするようになりました。これは「良い妻の役割」ではなくて、純粋に感謝の気持ちからです。結果的には以前と同じ様に気遣いはしているのですが、「役割」からやっているわけではないと感じています。なので「事実婚なのに」「ちゃんと付き合っている」と見えるようになるということだと思います。

本当に円滑に付き合いたい人となら、お互いに気遣いをしあって楽しく付き合えると思うんですよね。私はもう「そういう人としか仲良く付き合わなくていい」と決めました。もちろん、そうでない人と絶縁したり不仲になったりするわけではなく、いい距離感でお付き合いするということです。「気が合わない人と、無理して仲良くする必要はない」と割り切ってからは、人間関係の悩みがグッと減った気がします。

コミュニティで生きている限り、全ての「役割」としての振る舞いをやめることは無理です。逆に「役割」と割り切って、任務を遂行する達成感というもあると思います。それでも「役割」と「本心」のバランスを考えて、なるべくストレスのない選択ができたらいいなと思っています。それではみなさま、よいお年を!

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。