「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第180回のテーマは「サンタ問題無事解決」です。

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去年、第129回「サンタが来なくても楽しい家もある」でクリスマスの話を書きました。私が「サンタシステム(子どもにサンタさんがプレゼントをくれるよと言う設定の話)」について、あまり積極的ではないというお話です。

私は、「サンタさんが来ない家」で育ちました。クリスマス・イブは父親がプレゼントを持っていつもよりも早く帰ってくる日だったのです。こういうクリスマスは、昭和の頃はわりとあったと思うんですよね。しかし、今は「サンタさんが来てくれる」というクリスマスが主流のような気がします。

私があまり積極的にサンタシステムに乗れていない……というのは去年お話したのですが、サンタシステムを経験していない私には「いつ、どう終わらせるのか? 」というところが問題の一つでした。「お父さんとお母さんは自分を騙していたの? 」と思われたりしないかなあ……と思うと、積極的「いい子にしていたらサンタさんが来るよ」とか言えず、いつも曖昧に「サンタさん……来るんじゃない? 」くらいの感じで運営していました。

ですが今年。「サンタさんに何頼むの? 」という話をしたあと、息子に「ねえ、もうプレゼント頼んだ? 」と言われました。「いや、まだだよ」と言うと「今、僕の目の前でサンタさんに頼んで」と言われたのです。「子どもは見られない決まりなんだよ」などと言っていたのですが、「お母さんはショックかもしれないけど、僕はもう『エスパー魔美』を読んでしまったのだ! 」と言われました。

ちなみに藤子・F・不二雄先生の名作、『エスパー魔美』の「エスパークリスマス」という回です。魔美ちゃんが「今までずっともらいっぱなしだったたから、パパにクリスマスプレゼントをあげたい」と思い、パパに「サンタがもし来てくれるなら、クリスマスプレゼントは何がほしい? 」と聞くのですが、その後パパが独り言で「あいつ中学生にもなってまだサンタクロースを信じてるのかな」と言うシーンがある話なのです。その後、魔美ちゃんがクリスマスをしてもらえない子どものために、サンタの格好をして高畑さんとクリスマスパーティーをしてあげるいいお話なのですが、話の最後に魔美ちゃんのパパとママが寝ている魔美ちゃんの枕元にクリスマスプレゼントを置きに来るシーンがあります。

そのコマをビシッと指しながら「もう! 僕は知ってしまった! 」と息子に突きつけられたのです。いや、息子よ……君は去年も『エスパー魔美』読んでいたけど(息子は藤子・F・不二雄先生作品が大好き)、そのときは気が付かなかったんだね~。そうか、今年気がついたんだね、と思いました(私も読んだはずなのに、それで息子がサンタシステムに気が付くことに全く気が付いてなかったんですが……)。私は、息子が自分でサンタシステムに気が付いたので、正直言って「よかった~」と、肩の荷が降りたような気持ちになりました。本人が傷付くほど盛大に「サンタさんが来るよ」と言っていなかったのもあるかもしれないですが。

自分の家にはサンタはこなかったものの、私自身は子どものころから「サンタがいるってまだ信じてるの? 」と言う人ががすごくイヤでした。全力でサンタがいるように振る舞っておいて、ある年齢になったら「まだ信じてるの? 」みたいに言われることは理不尽だなあと思っていました。

なので今回、「子どもが自分で気が付いて無事に終わる」ということがあるんだ、と安心しました。しかも「お母さんはショックかもしれないけど」と、親のほうを気遣ってくれました。

念の為、息子には「お母さんは小学生のときに、周りのお友達が『まだサンタ信じてるの? 』『サンタはいるもん』ってケンカしているのを見るのがイヤだったんだ」という話をしました。「マイルはどう思う? 」と聞いたら「僕はお友達をがっかりさせたくないから、この事はみんなには言わないでおくよ」と言っていました。

実際に、息子はその後通学路で会ったお友達とそのママに「サンタさんにプレゼントお願いした? いい子にしてないとサンタさん来てくれないよ」という話をされたときに「大丈夫、僕はいい子だから来るよ」と答えていました。か、完璧だ……。

「サンタクロース」という存在は、子どもの頃は信じさせてもらって、ある年齢になったら「サンタをやる側」になるという考えがあるそうで、それは素敵な考え方だなあと思います。そういう意味では、息子はもうある意味全て知った上で「サンタがいるよ」と言う側になったということなんですよね。だから、サンタの一員になったとも言えます。

私は誰も傷付かないいい決着がついたと思って安心したのですが、パートナーは「もう少しサンタをやりたかった」とのこと。楽しんでサンタシステムをやっている親としては、ちょっと残念だったかも。って、毎年通販で買ったものをラッピングしてそれっぽく演出していたのは私なのですが……!! 今年もクリスマスプレゼントをオーダーした後、Amazon Echoの画面に通知が出ないように、通知を切ったりと小細工を頑張っていたんですけどね……。息子はすでに真実に気がついていました。

子どもにまだ気づかれたくない! と思っている方は、『エスパー魔美』を読ませるのはもっと大きくなってからにしたほうがいいです。逆に「そろそろ気がついてほしいな」と思ったら『エスパー魔美』をクリスマス前に読んでもらうのもいいかもしれません……!

サンタさんが来るおうちも、来ないおうちも、みなさまよいクリスマスを。

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。