「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第171回のテーマは「どこまで親は子どもを導くべきなのか」です。

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子どもの宿題や夏休みの自由研究、家庭学習ワーク……その付き添いをするたびに思うのは、「私が子どものとき、親はこんなに付きっきりで見てくれましたっけ? 」ということです。私の親は「宿題やりなさい! 」と口で言うだけでした。ドラえもんなど当時の漫画を読んでも、親が宿題を見るといったシーンはないので、やっぱり「親が子どもの宿題や勉強を見る」といったことは、一般的ではなかったように思います。

昭和の子育ては「しつけ」が中心だったけど、今の時代の子育ては「サポート」が中心という印象があります。私は後者のほうがいいと思っているので、サポートすること自体は全くイヤではありません。

私は大人になってから、「もうちょっとサポートしてもらえたら、困らなくて済んだことがいっぱいあったな……」といろいろ気が付きました。ちょっと工夫したらできたことも、「できない」と思いこんでいたことがたくさんあったのです。なので、自分の子どもにはたくさんサポートしてあげたいなと思っています。

と、意気込んでいたんですが、自分の子どもが自分が子どものときと同じわけではないんですよね。私は勉強のできないタイプの子どもでしたが、息子はわりと勉強ができるほう。なので、私が苦労したようなことは全然問題なくクリアしていきます。というわけで、ちょっと肩透かしを食らったようなところもありました。

ところが……! 成長するにつれて、息子の苦手なものが出てきました。息子は、自分で好きなように考える「自由回答」の問題が大の苦手なのです。私自身は答えが決まっている問題が大の苦手でしたが、「アイデアを出す」ことに苦労したことがありません。特別な訓練をしたわけでもないけれど、なんとなく「こうしたら面白いんじゃないかな」と自然と思いつくタイプでした。なので、「正解が決まっているものは得意だけど、自由回答は苦手」という自分と正反対の子どもに困ってしまいました。

さてどうしたらいいのか……と子どもを見ていると、「苦手」に対してとても感情的になりがちだと思いました。ただ、できないというより、アイデアを出すことをネガティブに感じる原因が、家庭の中にあるのではないか? なぜなら、今まで保育園や学校で「自由に考えよう」という課題に苦労していたような気配がないからです。つまり、家庭の中でだけ拒絶している。

幼児期までは、いろんなことについて私が「こうしてみたら」とすぐにアイデアを出していました。それはサポートのつもりだったのですが、息子にとっては「できる・できない」の比較対象が、家庭では親という大人相手になっているのではないかと思いました。

「お母さんはすぐに面白いアイデアを思いつくけど、自分にはできない」と、必要以上に思っているのかも……。つまり、息子が「できない」と言っているのは、私のせいなんじゃない? と責任を感じてしまいました。

かといって「私のせい」と言っててもどうにもならないし、「苦手だからしょうがないよね」というわけにもいきません。我が家はコミュニティケーションも考え方も、性格や素質だけではなく「練習すればうまくなれる」という考え方です。なので、私がどうやってアイデアを出しているのかを説明しました。

アイデアを「料理」に見立てて、まずは材料を集め、それから組み合わせるということを説明しました。何かの真似をしてもいいし、好きなものをアレンジしてもいい。頭の中だけで行っていることって、見えないし、子どもにはわからないですよね。自分は誰かに教わったわけではないけど、「こうやってみて」と言うことはできます。

一緒に「材料集め」をしたら、息子は自分でアイデアを作ることができました。やっぱり、親が考えたアイデアよりも自分で考えたアイデアのほうが本人も愛着があって嬉しいですよね。こうやって少しずつ練習と成功体験をさせていけば、苦手も克服できるんじゃないかなと思いました。

とはいえ、親が子どもの苦手の全てを克服させるなんてことはできないですよね。ちなみに、私もパートナーも、そして息子もあまり運動が得意ではありません。なので、運動能力についてのサポートはできていないのですが……。息子よ、学校で頑張って! と思っています。親のサポートも限りはあるし、できることしかできないという諦めも大事。

頑張って教えたアイデアの出し方ですが、一度やってすぐに定着するというわけでもありません。国語の問題でも、「自由に書こう」と言われると「できない」と言い出す息子。今度はお父さんがサポートしてくれました。夫婦で示し合わせたわけではないけれど、やっぱり同じ様に教えていました。そしてそのときも課題をクリア。やっぱり何度もやらないとうまくなれないなと思いました。

ちなみに今回このコラムを書くに当たり、息子本人に「アイデアの出し方教えたの覚えてる? 」と聞いたら「忘れちゃった」とのこと……ガーン!! 子どものサポートは、親の鍛錬でもあるのだなと思いました。コツコツやるしかないですね。

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。