「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第148回のテーマは「かわいくお願いできるようになってきた」です。

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「不機嫌になったり怒ったりするコミュニケーションはダメ」が、我が家の絶対ルールなのです。そんな我が家は「コミュニケーションは訓練と練習で改善できる」がモットーで、「ニコニコ・ブートキャンプ」と呼ばれています。

ネガティブなコミュニケーションは、人間性の問題ではなくて「訓練が足りない」と考えたほうがいいと思うんですよね。「基本はすごくいい人なのに、欠点がある」という場合、「いい人」が基本ならば、欠点は改善できるはずですよね。

人間の思考にはクセがありますし、コンディションによっても左右されます。コミュニケーションの欠点は「生まれ持った性格や人間性の問題」だとは思わずに、「練習すれば改善できる」「ネガティブな状態にならないように環境を整える」と考えるようにしています。

というわけで、我が家はポジティブにコミュニケーションできなかった場合、やり直しをしてきました。

以前は不満を相手に伝えるときに「なんで○○しないの!? 」と言いがちだったパートナー。これは「自分が思うルールが正義であって、全員がそれに準じるべき」という考えが前提です。でも、「それは本当に正しいルールなのか? 」というところから考えると、だいたいの場合は「自分がこうしたい」ということだったりします。だったら「○○してほしい」と言うほうがいい。なので、「お願いする」ことが我が家のルールになりました。

これまで何度も話し合いをしてきました。話し合いで解決すれば簡単ですが、そうは行きません。そのため、最初ははロールプレイングというかコミュニケーションのやり直しをしてもらっていました。「なんで○○しないの? 」と言われたら、「なんでかと言われれば、私はあなたじゃないから」と返す。そして「○○してほしいならそう伝えてほしい」と言います。そしてもう一度「○○して」と言ってもらう。

これを根気よく続けました。「なんで一回言ってわかんないんだよ」と私が言うのは、パートナーが「なんで○○しないんだよ」と言うのと同じです。私は相手にお願いしてもらいたいので、自分もお願いするしかないのです。

第110回「甘え方にはスパルタ指導」でも描いてますが、これは息子にもやっています。将来息子が自分よりも身体的に弱い相手……女性や子どもに、「なんで○○しないんだよ」と不機嫌を撒き散らして要望を通すような人間になってほしくない。という切実な思いからです。

ちなみに私は初婚でもずっと「お願い」をしていました。でも、お願いしても全然伝わらない。そして最終的には、「命令されないとわからない」と言われてしまいました。お願いベースだと、「やる/やらない」を決断するのは自分であって「じゃあやらなくてもいい」という発想になっていたようなのです。でも私は「命令」は嫌でした。なぜなら、決定までを私がやらないといけないからです。そして「この先の人生で自分を思いやって助けてくれる人はいないってこと? 」と思ってしまい、結局離婚しました。

私はパートナーに命令したくないし、パートナーからも命令されたくない。お互いを思いやって、お互いの要望を叶え合いたいのです。私は離婚を経験したことで、自分人生の優先順位がはっきりしました。これが実現できないのであれば、私は相手と一緒にいる意味はありません。

ちなみに「○○して」と言うのも、乱暴な言い方をすると命令になりかねません。「○○してくれると嬉しいな」といったように、「お願いしている」とわかるように言うところまで練習なのです。なので、我が家では「かわいくお願い」するまでがルールです。

最初はパートナーも、「家族なのにそんなこと言わなきゃいけないの」と嫌がりました。そもそも「やさしく」「かわいく」お願いをする経験が今までほとんどなかったからです。それを見て「そうか、男性はとくにそういう経験がほとんどないんだなあ」と気が付きました。でも、私は大事にしてくれない人を大事にする気はありません。なので「常識とか世間とかはどうでもいい。私と一緒にいたいならそうしてほしい」とお願いしました。

そうやって数年がかりで、相手が怒って言うたびに「そうじゃない言い方で言って」と言い続けたところ……最近「○○してくれると嬉しいな」と、言ってくれるようになりました。

すごく! すごく嬉しい! 嬉しいので絶対その要望通りにしようと思うし、うっかりそれができなくても「ごめんね! 次から気をつけるね」と素直に言えます。これまで延々と些細なケンカを繰り返してきた我が家。「なんで○○しないの」と言われれば、100%小競り合いになります。でも「○○してくれると嬉しいな」「○○したら○○してね」と言われれば「うん、わかった」「うん、次からそうするね」で終わりになるんです!

これが当たり前だったら、ここまで嬉しくないのかもしれないのですが……。でも自分の要望を通すのに、ケンカはいらないということを練習していけばできるようになるんだな~と思いました。

と言いつつ、すぐに100%そうはならないのが人というもので……。相変わらず我が家では小競り合い、些細な夫婦ケンカはあります。でも「改善できる」という経験があれば、ケンカも「改善のためのステップ」です。とはいえ、1つの問題をクリアしたらハッピーエンドとはいかないところが現実。大量にある問題を諦めずに、1つ1つクリアして行きたいなあと思いました。

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。