「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第150回のテーマは「デジタルデバイスチケット制導入」です。

これまでのお話はこちら

我が家は、デジタルデバイスを早くから子どもに与えていました。禁止するよりもきちんと自分で使えるようになってほしい、という方針だからです。時間を決めて、「終わり」と声をかけたら辞められるようにするなど、使い方のトレーニングをしてきました。

息子は、以前はもっといろいろなことに興味があって、親が言わなくても本や図鑑を読んだり、折り紙や工作をしたりしていたのに、成長に従って「YouTubeでゲーム攻略動画を見る」→「ゲーム攻略をする」のサイクルにどっぷりとハマるようになりました。

ゲームをすることも、攻略方法を自分で知ることもどちらも悪いことではありません。でも、そればっかりするのは問題です。本を読んだり工作をしたり、ワークをやったり……そういうその他の経験ももっとやってほしいので、子どもと話し合いをしました。

その結果、我が家では「デジタルデバイスチケット」を作ることにしました。第139回「息子の視力」で描きましたが、最近視力を守るために、連続で画面を見ていい時間を20分にしています。なので「デジタルデバイスを20分使っていい」という権利をチケット制にしたのです。

チケットは平日は2枚、休日は5枚。外出時や移動の際は、親もスマホを見ることが多いのでチケットなしでOKにしました。「チケット」は概念だけだとわかりにくいので、実際に100円ショップで買ってきたマグネットシートでチケットを作り、ホワイトボードに貼って家族全員で管理できるようにしています。

  • 手作りの「デジタルデバイスチケット」

別にとしてデジタルデバイスの利用を制限しているわけではありませんし、「平日に合計40分しか使えない」ことが目的ではありません。他の体験をたくさんしてもらうためのチケット制です。なので、他のことに対するモチベーションを上げるため、「親がやってほしいこと」ができたらチケットをゲットできるというルールにしました。

お父さんは本を読めるようになってほしいので、「本を読む」ことにインセンティブを付けました。マンガ以外の低学年用の本なら1冊1チケット。中高学年用の本ならそのレベルやページ数に合わせてゲットできるチケット枚数を設定します。マンガはほっておいても読むのでチケットはありません。

私は、本人がやりたいと言って始めた家庭学習ワークをちゃんとやってほしいので、それに対してチケットを設定しました。低学年用の家庭学習ワークは、国語や算数で個別に分かれているので、終わらせたら1冊1枚のチケット。もっと難しいワークをやるときは問題数に対してチケットを設定しました。

子どもに何かをさせるときに、インセンティブを与えることは「外発的動機づけ」と言われ、自分がやりたいことではなくて報酬がほしいがためにやることなので「報酬がなくなるとやる気がなくなる」と言われています。

ちなみに息子は「食」に意欲がなく、お菓子などをインセンティブにしても効果がありません。物欲もあまりないのですが、「デジタルデバイスを使える権利」はものすごく欲しいらしく、「デジタルデバイスチケット」はかなりのインセンティブになるようです。他の体験も決して楽しくないわけでも嫌いなわけでもない、でも息子の中でデジタルデバイスを使うことの優先順位が圧倒的に上位にあるのです。

本人が心から「これをやってみたい! 」と思う、「内発的動機づけ」を伸ばすのがよい……と言われても、子どもにとっては「今やりたいことだけやりたい! 」となるものです。「一つのことだけに熱中ぜすに、他のこともいろいろやろう」ということを、6才児の好奇心や興味だけに任せるのは難しい、というのが正直なところです。

優先順位が低いだけで、息子本人はワークも読書もやれば楽しい。しかし、その楽しさに気付かせるためには、親の管理や誘導が必要だと感じました。

そして、デジタルデバイスが20分ごとのチケット制になることで、親のほうも「子どもになにをさせるか」ということに意識を向けられるようになりました。前は、子どもがダラダラとデジタルデバイスを使っている間は、親もダラダラしていたんですよね。

今は息子が「20分」のデジタルデバイスを使っている間に、大人がやりたいことをさっと済ませて、チケット欲しさだとしても「ワークをやる」とかであれば子どもに付き合います。学童でやってきたワークがちゃんとできているか見て、間違っていれば一緒に直して、全部できたらチケットを与えます。これによって、一定期間にちゃんと家庭学習のスケジュール管理ができるようになり、息子も時間配分を考えるようになりました。よりやりたいゲームに絞り、ワークや本を積極的にこなすようになっています。

「もっとやりたいことがあるなら、本来やるべきことをこなせばいい」というのは、6才でもわかる動機づけだったようで、「やんなさい! 」「ゲームばっかりやってるならゲーム取り上げるよ! 」みたいな、ネガティブなコミュニケーションをしなくて済むようになりました。今のところそれが最大の利点です。

将来的には、チケット制じゃなくなっても自分で時間管理ができるように、いろいろと成長に合わせて変えて行きたいと思っています。

新刊『骨髄ドナーやりました!』

(少年画報社刊/1,045円)
初代骨髄バンクアンバサダーの俳優・木下ほうかさんも「『ちょっと人の命を助けて来るから!』。こんなカッコいいことを言い放つお母さん。私はこんな最強マンガを待っていました」と絶賛する書籍が発売!! 日本骨髄バンク完全監修の爆笑必至の骨髄ドナー体験マンガです!
夫婦揃って献血が好きで、骨髄ドナーに登録しているさるころとノダD。2人は事実婚・共働きで息子を育てています。夫のノダDは今までに3回骨髄ドナーにマッチングをしていて、3回目で骨髄提供をしました。そんなある日、骨髄バンクから届いた書類をよく見ると、なんと今度は妻のさるころが骨髄ドナーにマッチングしたお知らせでした……! 非血縁ドナーのマッチング確率は数百~数万分の1とも言われており、骨髄ドナーは登録してもマッチングするとは限りません。そんな中、なんと夫婦で2年連続ドナーを体験。そんな激レアなn=2のリアルガチな体験談をあますことなくお届けします! 詳しくはコチラ

著書『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』

(幻冬舎/1,100円)
全編書き下ろしエッセイマンガ!
バツイチ同士の事実婚夫婦にめでたく子ども誕生! ここから「家事と育児をどうフェアにシェアしていくか」を描いたコミックエッセイです。家事分担の具体的な方法から、揉めごとあるある、男の高下駄問題、育児はどうしても母親に負担がいってしまうのか、夫のキレにどう対処する? などなど、夫婦関係をぶつかりつつもアップデートしてきた様子を赤裸々に描きます。くわしくはコチラ

著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。