「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第146回のテーマは「家族の技能はありがたみが減る」です。

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保育園卒園の際の保護者による記念品作り、みなさんは経験ありますか?

長姉の子(保育園児)と次姉の子(幼稚園児)の時、どちらも保護者が有志で作る「卒園アルバム」のお手伝いをしたことがあります。全部作ったわけじゃなくて「ここのページだけ担当なんだけど、キレイに作れない……お願い」みたいな感じです。

グラフィックデザイナーでもある私は、デザインも写真加工もできるイラストレーター・マンガ家です。この手の職業は、“ちょっとした頼まれごと”をされやすいタイプです。世の中的には、「0円の頼まれごとをするのは無理」という人も多いです。私の知り合いでは「絵が描けることを、子どものコミュニティでは絶対に隠している」という人もいます。

しかし私は、全然隠していません。だからといって「これお願いできない? 」と言われることもほとんどありません。なぜなら、頼まれる前に「やろうか? 」と言っちゃうタイプだからです……!

絵を描く人の中には「適当に描く」のが可能な人と、「適当には描けない」という人がいます。私は大体の場合、「ま、いっか」と絵を描くハードルがめちゃくちゃ低いタイプです。それと同時に、「物事が進まず停滞すること」がすごく苦手な性格をしています。「誰かがやったほうがいいけど、なんとなく誰もやらない」タスクがあると、さっさと片付けたくなってしまうのです。

保育園の0才児クラスが終わるときに、「先生に御礼のメッセージカードを寄せ書きする」というタスクが発生しました。積極的に誰かが「こうしよう(またはこうしたい)」と言わない状況があると、「じゃあ、私がやりましょうか? 」って言っちゃうんですよね。それ以後、毎年メッセージカードの土台を作りました。

そんなわけで、卒園の記念品も作ることに。しかし私は「未解決タスクを解決したい」という欲望があるだけなので、別に「理想の記念品を作りたい! 」という積極的な願望はありません。なので、「こういう風にしたい」という要望がある人がいれば、その人にお任せします。または要望に合わせて作ります。

今回は卒園アルバムを作りたいママがいたので、アルバム係はお任せして、私は卒園の記念品を作りました。ママ友グループでのヒアリングの結果、「小学校の給食用のランチョンマットがほしいけど、学校によってサイズが違う」という理由で、「自分の子どもの似顔絵アイロンプリントシート」を作ることになりました。

なので私は人数分の「似顔絵アイロンプリントシート」の似顔絵を描いて、自宅でプリントアウトしました。子どもはアイロンプリントもらっても完成品じゃないから別に嬉しくないだろうな~と思い、似顔絵キーホルダーをおまけで作りました。100円ショップで写真を入れて作るキーホルダーキットを人数分買ってきて、プリントアウトしたものを切って入れました。完全に業者です。

パートナーは映像ディレクターなので、卒園記念DVDを作りました。我がクラスにはもうひとりプロカメラマンのパパがいて、2人で卒園式の撮影を段取り、3カメ固定で撮影(保護者は卒園式の間、席から移動しないように言われたため)。そしてその映像をパートナーが編集しました。

カメラマンのパパが、また気合いを入れて園の写真を撮影してきてくれて、ドローンで空撮までしてきたので(もちろん許可取りしたうえで)、「この写真使わないともったいない……」となり、私がDVDパッケージをデザイン。透明トールケース(一般的に販売されているDVDが入っているケース)を購入して、パッケージをプリントして入れて、さらに盤面印刷もしてしまいました……。完全に業者です。

私は記念品も全部1人で作って(アイロンプリントシート&キーホルダー)、さらにDVDのパッケージデザインもやったので、パートナーから「やりすぎ」とドン引きされてしまいました。しかし、パートナーが編集して焼いたDVDは120分入っていました……。過去のイベントの映像もおまけで入れたからです。

私はこれを実費のみでやったのですが、それもパートナーには「どうかと思う」と言われてしまいました。でも私は「仕事じゃないこと」は、お金もらうほうが面倒だと思ってしまうんですよね。お金をもらうと責任が発生してしまうけど、私が楽しくやっている間は趣味なので……。私は“お店屋さんごっこ”の延長で、売り物みたいなものを自宅で量産するのも好きなのです。

保護者でやる記念品作りはわりと揉めごとが起こりがちなタスクで、同世代の子持ちの友達の話を聞いていると、意見が割れたり、やりたくないことやらされたりするケースもあって結構大変そうでした。私の場合は力技でタスクを強奪してしまったような気もします。

世の中には子どもの行事や係、作り物をやりたくない人もいれば、すごい勢いでやるタイプの人もいて、我が家は「すごくやる」ほうだったんだな~と実感しました。ちなみにパートナーも「オレが好きなようにやりたい! 」というよりは、未解決タスクを放置できないタイプの人間です。

とはいえ、似顔絵のキーホルダーはランドセルにつけてくれる子がたくさんいて、「作ってよかったな~」と思いました。で、結局我が家では……DVDはまだ見てないし、給食のランチョンマットに似顔絵をアイロンプリントすることもありませんでした。うちの息子にしてみたら別に「似顔絵を描かれる」ことはまったく特別なことではないのです。そして、母親が描いた似顔絵をプリントされるのも気恥ずかしいようで……。アイロンプリントシートはしまわれたままです。DVDはもうちょっと時間が経って懐かしくなったら見ると思います。

息子は将来こんな我が家のことをどう思うのでしょうか。今のところ嫌がられてはいないようなのでよかったです。

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。