「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。記念すべき第100回のテーマは「人生を120%で生きるのをやめました」です。

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今回で連載が100回になりました! すぐネタがつきるかなと思っていたら日々ネタがあり、気が付いたら100回目となりました! ありがとうございます。

今回は、100回記念でちょっとボリューム多めです。そして私が「2人目の子どもを持つことを選択しなかった」話です。ちょっとセンシティブな話ですね。ただ、この決断で私……我が家のポリシーや方向性が決まったところがあると思っています。

元々我が家は、再婚同士。子どもをつくろうと思って不妊クリニックに初めて行ったのは私が37歳で、パートナーが45歳のときでした。体外受精での妊娠なら可能と診断されて、幸運なことに最初の治療で妊娠できて、私は38歳で出産しました。

実は、このときの治療で凍結受精卵が1つ保存されていました。クリニックは「出産後1年以上経ってからでないと治療は再開しない」という方針だったので、「凍結受精卵を使って2回目の妊娠をするかどうか」については子どもが満1歳になってから悩み始めました。

私はなんとなく「子どもは2人くらいは欲しい」と思っていて、妊娠したときは「もう1回チャンスがある!」と思っていました。……が、出産は30時間の陣痛の後に緊急帝王切開となり、思った以上に大変で体調が戻るのにも時間がかかりました。

そして、我が家は0歳児から保育園に預けたのですが、保育園で集団生活をすると0歳児でも感染症にかかりやすくなります。看病をする私も一緒に体調を崩して毎月熱を出すような生活をしていました。

体調不良の中でハードな山登りをしているような日々……。そんな1年を過ごした私は「え、これからまた妊婦になるの……ちょっとまだ無理……」と思うようになっていました。

妊娠してから出産までには9カ月かかります。不妊治療とはいえ、年を取れば取るほど成功率が下がっていきます。39歳の私にはそんなに悩む時間はないとわかっていても、まだ決められず、もう1年悩むことにしました。どうして1年単位で悩むかというと、「凍結受精卵」の保存についての経費を毎年払う日が来るからです。その締め切りの日までにどうするか決めることになりました。

私はわりといろんなことに対して決断をするのが早いタイプで、普段はあまり悩まないのですが……この件については年単位で悩みました。妊娠中も出産も決して楽ではなかったものの、「2人くらいは産める」とどこかで思っていたのです。でも、いざ「じゃあ治療を開始しますか」と言われると「いや、チョット待って」と思ってしまう。

そもそも論として、まず私の住んでいる場所は、保活が大変です。フリーランスは認可外保育園に入れないと正社員の人達と同じポイントになることすらできず、認可保育園に入れませんでした。認可外保育園は安くて月に8万、高いと15万ほどかかります(園によって入れる月齢が違うので、産まれた月によって選択肢が変わります)。不妊治療や保活で子どもが生まれて1歳になるまでに、最もスムーズにいく計算でも、我が家の場合は出産費用以外に100万円はかかってしまいます(同じ東京23区内でも自治体や年度で条件は違います)。

子どもが欲しいことが優先なら引っ越しも視野に入りますが、すでに1人目をその同じ経費をかけて激戦を勝ち抜いて保育園に入れている状態を蹴ることになってしまうので、それもできれば避けたかった。自分の体調や、経済状況を考えると「2人目をつくりたい」という気持ちがどうしても盛り上がらなかったのです。

たぶん、これが初婚のときの私だったら迷わずつくっていたような気がします。初婚のときの私は「家族が欲しい!」という気持ちが強く、そのためだったら「私が全部頑張れば大丈夫!」と思っていました。そして……結局は「家庭運営は1人だけが頑張ってもダメ」ということを深く痛感して、離婚に至りました。

この経験で「私が全部頑張ればいい」という考えは傲慢だし、人を信頼して頼ることがいかに大切かを知れたので、決して後悔はしていません。でも、「自分ができると思ったことができなかった」ということにショックを受けていたのです。自分で自分を裏切ったような気持ちでした。

なので「頑張ればできるよね」ともう1人子どもをつくって、それで「やっぱり無理してた。自分にはできなかった」となることが一番怖かったのです。結婚は大人同士がするものなので「失敗でした」となっても、夫婦だけならリセットは簡単だと思います。でも、子どもは「ごめん、私にはやっぱり無理だった」ということは私にはできないと思いました。

もちろん、子どもの人数に合わせて生活スタイルを変える人は多いです。経済的な問題があれば住む場所を変えたり、仕事のスタイルを変えたりすることもあります。でも、一番私が心配だったのは「メンタル」でした。自分の心に余裕がないと、いつも不安にかられていっぱいいっぱいで、視野が狭くなって人にも自分にも優しくすることができなくなってしまうんじゃないかということが心配だったのです。

初婚のときに、自分の理想と現実のギャップに追い詰められていく経験をしていたので、またああなるのが怖かった。もう1人子どもがいる生活が理想ではあったけど、その理想のために現状を無視して無理をして、後からギャップに苦しめられるんじゃないか……という大きな不安です。もう1人子どもが欲しいというのは私の理想でしたが、何かに追い詰めらずに人にも自分にも優しくできる状態の自分でいることも、私にとっての理想だったのです。

パートナーは「産んだらなんとかなるよ!」というタイプで……実際今までいろんなことがなんとかなってきたので、そういう考えもありだなとは思いました。そもそも、人によって何人子どもを持つかはハードルの高さが違います。

もちろん、不妊治療をしたからってスムーズに妊娠できるわけではなくて、同世代の友人達も2人目の妊娠には苦労しているのも知っていたし、どんなに頑張ってもできないかもしれない。ただ、「できなかった」と「やらなかった」は、私の中ではかなりの違いがありました。

そして私は結局「やらない」ほうを選びました。

子育てだって、ずーっと大変なわけではありません。やっぱり最初の1~2年が大変で、その後は徐々に楽になると思っています。だから、私が心配しているようなことはすぐ終わったかもしれない。40過ぎて何人も産んでる女性だってたくさんいます。パートナーは頼りにできるし、信頼している。でも、私が私を信じきれなかった。自分が安心してできることを超えて120%くらいの感じで「無理して頑張る」ことが怖かったのです。

今、息子が5歳になって実際に子育ては赤ちゃんの頃に比べて楽になっています。「でも、今44歳の私がこれから妊活するか?」というと、そういう気持ちにもならず……。とことん考え抜いて出した答えなので、今のところ一人っ子の子育てをしている状況に後悔はしていません。

別に子育てに限らず、人生は何があるかわからないので、この先120%の力を出さなきゃ乗り越えられないこともあると思います。でも、そうなったらそうするしかないのだし、逆に少し余力があるならその分でできることをしたい。

自分にも人にも優しくしたいという理想があるので、子ども支援の基金に寄付をしたりするようになりました。たまたま縁があって骨髄ドナーを経験しましたが、それも自分に余力があるからできたことだなあと思っています。その経験の後は以前よりも献血に行ったりするようになりました。

自分は「無理しないで生きる」選択をしたからこそ、 親しい人が無理して頑張らないといけない状況のときはサポートすることができます。そしてその人がその選択をしたことを支えてあげたい。

子どもをもう1人持つ理想は叶ってないけど、今のところ「人にも自分にも優しくいる」という理想は叶っています。そう考えると別に「諦めた」わけじゃなくて、別の理想を選択しただけなんだなとも思えます。

ちなみに私は再婚するときに「44歳で2人の子持ちで、養育費を払ってるような男を選ぶのは止めたほうがいい」とか「その年から子どもをつくるなんて厳しいよ」とか言われたことがあります。2人目をつくるかどうかはこんなに悩んだ私ですが、再婚も1人目の子どもを産むのも、何の迷いもなかった。それは私の中では「120%くらい無理して頑張ってやる」ことではなかったんですよね。

私にとって120%の力をかけないとできないことも、他の人には無理じゃないことはたくさんあります。同時に、他の人からみて無理なことが私にとっては全然無理せずできることでもあったりする。時として120%無理して余裕がなくなってもやる必要があるものもあります。他者の選択と自分の選択は比べられるものじゃないと思います。だから「自分が納得できる答えを出す」のは自分にしかできないんですよね。

そして自分で選択した人生を、よりよく生きていくしかないのだと思います。

今の私は、パートナーと息子といろんな体験を一緒にして、いつもニコニコして暮らし、友人や親類が困っていたらいつでも助けられるような状態でいたいというのが理想ですが、理想って、こだわり過ぎると自分を追い詰める原因にもなりがちです。理想の形はいくつもあって、状況によってよりよいものを選ぶという気持ちでいたいなと思います。

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