次々に新しい料理や食材などが登場するとあって、『食のトレンド』は刻一刻と移り変わっていく。しかし、クライアントや職場の同僚と「あれ食べた?」という話になることはよくある。そんなときに「……聞いたこともない」というのは、かなりマズい。この連載では、ビジネスマンが知っておけば一目おかれる『グルメの新常識』を毎回紹介していく。第8回は「生ラム」。

  • 「生ラム」

    「生ラム肉」は従来のラム肉より格段においしくなったと話題に

「生ラム」って何?

羊肉はひと昔前までは独特の匂いや食感が硬いといったイメージが定着しており、敬遠する人も多かった。羊肉独特の風味は羊の年齢が高くなるほど強くなるといわれており、生後1年以上の羊肉である「マトン」より比較的食べやすいのが、生後1年未満の「ラム」だ。

近年は物流スピードが早くなったり、冷凍技術が発達したことにより、ラム肉の鮮度が格段に上がり、おいしくなってきているという。中でも、流通過程で一度も冷凍されていない、通称「生ラム」も登場して注目を集めている(生ラムといっても、ラムを生で食べるわけではないので注意)。

ラム肉は貧血対策として効果が期待できる鉄分やビタミンB12、また体脂肪の燃焼を促すといわれるL-カルニチン、動脈硬化や血栓を防ぎ、酵素・DNA・タンパク質の合成を助ける働きがある亜鉛なども豊富に含んでおり、栄養面でも注目が集まっている。

最近では、飲食店でも羊肉料理の代表格であるジンギスカンだけでなく、様々なスタイルのラム肉料理が登場してきている。イタリアンや和風、中華といった様々な料理でラム肉が取り入れられるようになっているのだ。

「生ラム」はどこで食べられる?

都内だけでもたくさんの店で生ラムを使った料理が提供されている。例えば、ラムしゃぶ専門店「ひつじの湯」(東京・渋谷)では、オーストラリア産の生ラム肉を和風だしのしゃぶしゃぶでいただく「ラムしゃぶ」が人気。ラム肉の食べ放題メニューもあり、新鮮なラム肉をお腹いっぱい食べられる。

  • 「ひつじの湯」のラムしゃぶにはスライスの他、つくねも

「ラム肉は店内でスライスしており、通常より少し厚めにスライスすることでラム肉の旨味と程よいクセを感じられます」と同店店長の佐藤透さん。

また、「北海道生ラム焼肉 ひつじ屋」(東京・東糀谷)では鮮度抜群のオーストラリア産の生ラム肉を焼肉で食べられるだけでなく、希少な「ラムの塩タン」(税別690円)やレアで楽しめる「ラムユッケ」(税別790円)など生ラム肉メニューが豊富だ。

「生ラム」を食べてみた

今年10月31日にオープンした「298ゆあーず」(川崎・新丸子)は、生ラムと馬肉の料理を提供する珍しいコンセプトの店だ。「ラムチョップ」といった定番メニューだけでなく、「ラムソーセージ」や、首の後ろ側の肉を使った「ラムせせり」、心臓(ハツ)を使った「ラムこころ」なども提供している。まるで焼き鳥店に来たような感覚になるセセリやハツの料理に興味津々。

  • 「298ゆあーず」の「ラムせせり」には、ブドウとみょうがを添えてある

筆者は焼鳥のセセリが好きなので、まずは「ラムせせり」(税別680円)から注文。スライスしたラムのセセリ焼きには、ブドウとみょうがもトッピングされているので一緒に味わってみると、なんともジューシー。味も香りもラム肉特有の臭みがなく、やさしい肉の旨味が広がる。そこにブドウの果汁やミョウガの香りが加わり、とても上品なおいしさだ。鶏セセリよりも脂分が少なくヘルシーで、とても食べやすい。ラム肉が苦手な人でもこれは大丈夫だろう。

  • 「298ゆあーず」の「ラムこころ」は歯ごたえがよく、コクがあっておいしい

次は「ラムこころ」(税別680円)。ラムの心臓って想像もつかない味だが、口に含むと、ハツらしい楽しい歯ごたえで、噛んでいてとても心地よい。こちらもラム肉特有の臭みはまったくなく、ラムの旨味を味わい尽くしながら、時おりバジルソースの爽やかな香りが鼻腔から抜け、トマトの酸味がアクセントになって、あっという間に一皿を平らげてしまうおいしさだった。

昔に比べて抜群に美味しくなったラム肉の料理は、その食べやすさや栄養面から見ても幅広い世代におすすめ。ちょっと趣向を凝らしたいビジネスディナーでも、ワインと一緒に楽しんでみてはいかがだろうか。思った以上のおいしさに会話も弾むかも。