次々に新しい料理や食材などが登場するとあって、『食のトレンド』は刻一刻と移り変わっていく。しかし、クライアントや職場の同僚と「あれ食べた? 」という話になることはよくある。そんなときに「……聞いたこともない」というのは、かなりマズい。この連載では、ビジネスマンが知っておけば一目おかれる『グルメの新常識』を毎回紹介していく。第49回は「お取り寄せ冷凍パン」。

  • 自宅で手軽に焼き立てパンが味わえる「お取り寄せ冷凍パン」は、今人気上昇中

「お取り寄せ冷凍パン」とは?

自宅にいる時間が増えた今、食事のクオリティにこだわりたいという人が増えている。主食であるパンもその一つで、せっかくだからおいしいパンを焼き立てで食べたいという人も多いはず。とはいえ、自宅の近くにベーカリーがなかったり、せっかくベーカリーで買っても焼き立てではなかったりすることも。また外出自体も控えたいという人にとって、おいしいパンを食べたいときに手に入れることは難しいもの。そんなときに便利なのが、「お取り寄せ冷凍パン」だ。

冷凍パン自体は目新しいものではないものの、これまでは主に業務用として、大量にパンを消費する外食店やホテル等で利用されてきた。その場にパン職人が常駐していなくても、店舗の機器や環境に左右されることなく、常にプロが作った品質の良いパンを提供でき、また、提供直前に焼き直せばまさにベーカリーのオーブンで焼いたばかりのようなおいしさが味わえるからだ。この手軽さとクオリティの高さを自宅でも楽しめるように、ここ数年で個人向けのお取り寄せ冷凍パンのサービスが生まれ、じわじわと利用者が増加してきた。

さらに、コロナ禍の影響で遠出することが難しくなったことで、お取り寄せ冷凍パンの人気は急拡大。「普段スーパーで買えるものとは違うパンが味わえる」「外出しなくてもおいしいパンが届くのが便利」との声が上がっている。

「お取り寄せ冷凍パン」はどこで購入できる?

お取り寄せするには、主にネットでの注文がおすすめだ。検索してみるといくつかのパンメーカーがヒットする。中でも話題になっているのが、パンフォーユー(群馬県桐生市)が運営する冷凍パンのサブスク「パンスク」だ。月額3990円(税込み・送料込み)で月に1回、日本全国のどこかのベーカリーから冷凍パンが届くというもの。今年2月にサービスを開始し、すぐにコロナ禍に突入したため、巣ごもり需要もあり急激に利用者が増加したという。

  • 「パンスク」で届くパンのイメージ。毎回新しいパンに出合えるという点も楽しい

パンスクには日本全国のベーカリー18店舗が参加しており(2020年11月現在)、月ごとに違う店からランダムで届く仕組みで、1箱には6~10個の冷凍パンが入っている。食べたいときに常温での自然解凍か、トースターか電子レンジで加熱するだけで食べられ、冷凍のままなら1ヶ月は保存可能だ。

同サービスでは、焼き立ての味を自宅で再現できるよう、「パンを入れる袋」と「冷凍するタイミング」の2点に独自技術を導入しているという。同社パンスク事業責任者 包(つつみ)直也さんによると「パンを焼き上げた後、それぞれのベーカリーで弊社独自の袋に入れた状態で冷凍しますので、パンの鮮度を長く保つことができます」とのこと。

また、毎月どんなパンが届くかわからないためワクワク感を高めてくれる。旅行がしづらい状況でもあるので、訪れたことのないベーカリーのパンを食べれば、自宅での食事も普段とは違うものとなりそうだ。

「お取り寄せ冷凍パン」を食べてみた

スタイルブレッド(群馬県桐生市)は2018年3月より家庭向けの冷凍パンブランド「Pan&(パンド)」をスタートした。同社公式オンラインストアでは、数量限定商品など含めて60種類以上のパンだけでなく、パンに合うデリなども購入することができる。今回は、初めて冷凍パンを取り寄せる人におすすめという「はじめてパンセットV」(3850円/税込み・送料込み)を試してみた。

  • Pan&「はじめてパンセットV」の内容。シンプルなプチパンをはじめとした7種28個が入っていた

上記写真の上半分は食事に合いそうなシンプルなパン。左から国産小麦の「ナチュール」、はちみつ豆乳味の「ハニーソイ」、ミルク風味の「ミルク」(各2個×2袋)。写真上から3列目は、左から「プレーンマフィン」(4個×1袋)、「Wチョコパンド」と「発酵バタークロワッサンprime」(各2個×1袋)。写真最下列が「パン・オ・レ」(4個×2袋)。どれも小ぶりで素朴な印象のパンだ。

パッケージ裏面にはそれぞれ、そのパンに合った加熱方法が書いてある。例えば「冷凍状態のままトースター(900W目安)で2~3分加熱後、そのまま扉を開けず余熱で6~8分保温」といった具合だ。中には、常温で解凍してからトースター加熱をするものもある。指示に従って、「発酵バタークロワッサンprime」「ハニーソイ」「パン・オ・レ」の3種を冷凍状態のままトースター加熱してみた。

  • さっきまでカチコチだったのに、トースターで焼くと表面はパリッ、中はふんわりに仕上がっている

トースターから取り出すと、まず手触りに驚いた。冷凍状態から焼き始めたのにほどよく焼き色がついて、3種とも表面がかなりパリッと仕上がっている。

まずはクロワッサンを手でちぎってみる。生地の層がパリパリと軽く焼きあがっているのに、内側はしっとりして発酵バターの香りが豊か。単に冷凍保存していたクロワッサンをトースターで焼き直したのとは明らかに違う食感と香りだ。

ハニーソイはフランスパン生地のような香ばしい生地で、外側がパリッとしているのに、ちぎってみると中はもっちもち。はちみつのほのかな甘みが後を引くおいしさで、バターやジャムとも相性が良さそうだ。

パン・オ・レはシンプルながら、きめ細かい生地がしっとりとしていて、生地自体の旨味が感じられる飽きのこない味。味にクセがないのでどんな食事とも合わせられそうだ。いくつでも食べられそうな小ぶりサイズで、小さい子どもにも喜ばれそう。

どれも冷凍パンとは思えないような品質に驚いた。特に焼き上がりの表面の香ばしさや内側のしっとりとした食感は絶妙。まるでベーカリーのオーブンから取り出したばかりのようなおいしさだった。

「焼き色がしっかり付く一歩手前で瞬間冷凍し、水分と旨味をぎゅっと閉じ込めています。最後の仕上げはお客様のトースターでの焼き上げです。焼きたての一番美味しい状態で召し上がられるよう、計算して設計しています」と、スタイルブレッド広報 川口茉由さん。パンがどれも小ぶりで食べやすく、冷凍庫で長期保存も可能であることから、家庭での利用が急増しているそうだ。

特にコロナ禍の自粛時には前年比約6倍の注文もあったとか。「普段の自宅での食事に冷凍パンを活用することで、衛生面の不安や外出時のストレスなく、いつでも食べたいときに焼きたてパンの味を楽しんでいただけたら」と川口さんは話す。

たまには焼き立てのおいしいパンを食べたい!というパン好きの人にとって、冷凍パンなら自宅で手軽に焼き立てが味わえるのでおすすめだ。冷凍とは思えないパンの香ばしさを、一度体感してみては。

※価格はすべて税込