FXの大相場の数々を目撃してきたマネックス証券、マネックス・ユニバーシティ FX学長の吉田恒氏がお届けする「そうだったのか! FX大相場の真実」。為替相場分析の専門家がFXの歴史を分かりやすく謎解きます。今回は「アベノミクス円安の最後の謎」について紹介します。

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前回私は、2012年から2015年にかけて、ほんの2年半で75円から125円まで、約50円もの大幅な米ドル/円上昇、つまり記録的な円安となった「アベノミクス円安」は、実は予言、というと仰々しいですが、ほぼ事前に予想された結果だったと述べました。

では、なぜこの歴史的円安大相場は予想できたのか、それとも一種の「陰謀論」のように、実は予めシナリオが用意された結果ということだったのか。今回は、そういったことについて、改めて検証してみたいと思います。

為替は予想可能で、FXは中長期取引でも利益が出せる!?

最初に確認しますが、「2015年までに120円を超える円安に誘導する。そして大幅な株高を実現し、安倍長期政権を確実にする」といったシナリオがあったので予め、結果としてそうなったといった「陰謀論」の類いは、(もしもあったとしても)、私は知りません。私が2015年120円超の円安を予想したのは、すこぶるオーソドックスな円安予想の考え方によるものに過ぎませんでした。

  • 【図表】米ドル/円と購買力平価(1973年~)(出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成)

    【図表】米ドル/円と購買力平価(1973年~)(出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成)

ではなぜ「2015年」だったか。1980年代後半以降4回の円安トレンドの継続期間は、平均2年4カ月、最長3年4カ月でした。これを参考にすると、2011年10月から始まったこの円安トレンドが平均以上に長く続くと予想した場合、2014~2015年まで続くといった見通しになりました。

次に「120円超」の考え方。上述の4回の円安トレンドでは、基本的に日米の生産者物価基準の購買力平価前後まで米ドル高・円安が進んでいました。その上で、これまではこの購買力平価を上ブレた場合は1~3割程度でした。

この当時のこの購買力平価は95円程度だったので、それを1~3割上回ると105~125円程度まで米ドル高・円安が進むといった計算になります。そして、徐々に上ブレ率が大きくなっていたことも参考にすると、購買力平価を3割以上も上回り125円を目指す可能性がある、といった見通しになったわけです。

結果として、この米ドル高・円安トレンドは、2011年10月75円から、2015年6月125円まで、3年8カ月続き、その間の米ドル/円の最大上昇率は6割超に達しました。円安の継続期間としては、1980年代後半以降の最長記録を更新し、米ドルの上昇率も、2番目に大きなものに。まさに記録的な円安大相場となりました。

逆にいえば、「記録的な円安になる」といった予想があれば、過去の平均的な円安トレンドは、実績を調べることで分かるわけですから、「平均以上の円安トレンド」の具体的なシナリオは十分計算可能だったということでしょう。

私が言いたいのは、「陰謀論」を知らなくても、とくにインサイダー情報がなくても、FXにおける歴史的な大相場は、実はオーソドックスなアプローチだけで予想が可能だったということです。

もう10年以上もお付き合いのある個人投資家の方から、「あなたの話を聞いて、初めて為替相場も予想が可能で、FXも中長期の取引で利益が出せると思った」という言葉をいただいたことを改めて思い出しました。

ただ、まぁ少なからずの読者は、単に「私の予想が当たりました」といった自慢じゃないの、と冷めた目になっているのかもしれませんし、それももちろん否定しません。

吉田恒(よしだひさし)

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティ FX学長
大手の投資情報ベンダーの編集長、社長などを歴任するとともに、著名な国際金融アナリストとしても活躍。2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊、2016年トランプ・ラリーなどマーケットの大相場予測をことごとく的中させ、話題となる。

機関投資家に対するアナリストレポートを通じた情報発信はもとより、近年は一般投資家および金融機関行員向けに、金融リテラシーの向上を図るべく、「解りやすく役に立つ」事をコンセプトに精力的に講演、教育活動を行なう。2011年からマネースクエアが主催する投資教育プロジェクト「マネースクエア アカデミア」の学長を務める。2019年11月より現職。書籍執筆、テレビ出演、講演等の実績も多数。マネックス証券