FXの大相場の数々を目撃してきたマネックス証券、マネックス・ユニバーシティ FX学長の吉田恒氏がお届けする「そうだったのか! FX大相場の真実」。為替相場分析の専門家がFXの歴史を分かりやすく謎解きます。今回は「アベノミクス円安の振り返り」を行います。

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ここまで「トランプ・ラリー」(2016年)、「アベノミクス円安」(2012~2015年)と2つの代表的なFX大相場について、計25回にわたって書いてきました。これからさらに、時間を逆戻りしながら、ほかのFX大相場の「真実」に切り込んでいくつもりです。

ただその前に、少し一息入れる意味で、「番外編」を数回にわたって書いてみたいと思います。

史上最大の政策相場の光と影

「番外編」の1回目は、「アベノミクス円安」のまとめです。「なんだ、結局まだアベノミクス・シリーズが続いているということじゃないか」といった突っ込みがあることは重々承知の上ですが、そこはお許しを。

約2年半で約50円もの大幅な円安が進んだ「アベノミクス円安」は、2度のいわゆる「黒田バズーカ」に代表されるように、政策が大相場のきっかけになることが多かったといった意味で史上最大の「政策相場」の一つでした。

  • 【図表】米ドル/円の月足チャート(2012~2016年)(出所:マネックストレーダーFX)

    【図表】米ドル/円の月足チャート(2012~2016年)(出所:マネックストレーダーFX)

2013年4月の「黒田バズーカ1」と「黒田バズーカ2」では、それを主導した日銀・黒田総裁の政策に対する気持ちにはかなり違いがあったのかもしれません。とくに後者の場合、消費税再増税を巡る駆け引きの要素もあり、その意味では安倍総理の消費税再増税延期の決断により黒田総裁は一敗地にまみれた可能性もあったのでしょう。

そして、この「黒田バズーカ2」受けて円安(米ドル高)が120円を超えていくと、それは行き過ぎた円安ということで、諸外国の経済にとって「弊害」となりかねない懸念も出始めました。

「円安仕掛け人」との見方が強かった、「インフルエンサー」の黒田総裁が円安幕引きに動き、結果としてそれに成功するといった最後の「黒田マジック」は、円安トリガーの「第二のアジア通貨危機」などを未然に回避するといった知られざる功績があったのかもしれません―――。

これが、代表的なFX大相場の一つであるアベノミクス円安の「真実」として、私が述べてきたあらすじでした。「そうだったのか!」、「FXって面白い!!」といった具合に感じてもらえたでしょうか。

ところで、日本でこの「黒田マジック」が注目される前に、「マジック」使い手の代表的な存在とされ、金融マーケットから強くリスペクトされた人物がいました。ECB(欧州中央銀行)の第3代総裁、マリオ・ドラギ氏がその人です。

「黒田マジック」に対して「ドラギ・マジック」と称されたことで、何となく黒田総裁のライバルのようにも位置付けられるドラギ総裁ですが、次回からは、このドラギ総裁が、「ドラギ・マジック」により、どのようにユーロを守ることに成功したかについて書いてみたいと思います。

吉田恒(よしだひさし)

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティ FX学長
大手の投資情報ベンダーの編集長、社長などを歴任するとともに、著名な国際金融アナリストとしても活躍。2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊、2016年トランプ・ラリーなどマーケットの大相場予測をことごとく的中させ、話題となる。

機関投資家に対するアナリストレポートを通じた情報発信はもとより、近年は一般投資家および金融機関行員向けに、金融リテラシーの向上を図るべく、「解りやすく役に立つ」事をコンセプトに精力的に講演、教育活動を行なう。2011年からマネースクエアが主催する投資教育プロジェクト「マネースクエア アカデミア」の学長を務める。2019年11月より現職。書籍執筆、テレビ出演、講演等の実績も多数。マネックス証券