FXの大相場の数々を目撃してきたマネックス証券、マネックス・ユニバーシティ FX学長の吉田恒氏がお届けする「そうだったのか! FX大相場の真実」。為替相場分析の専門家がFXの歴史を分かりやすく謎解きます。今回は「為替相場」について紹介します。

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「アベノミクス円安」の主導役となった黒田総裁が、2015年6月に「円安終了予想」発言を行うと、本当に円安は終わりました。そしてこの黒田総裁の発言は、偶然や失言などではなく、ある「目的」を持った極めて意図的なものだった可能性があり、そして結果的にも円安の幕引きに見事成功したことを、前回までに説明しました。

それにしても、この「円安終了予想」発言が意図的なものだったとしたら、黒田総裁は思い通りに為替相場をコントロールできたということになります。日本銀行や財務省などの金融・通貨政策の当局者なら、為替相場もコントロールできるものなのでしょうか。

そんな疑問に対する答えは、「コントロールはできません、でもたまにできることもありそうです」ということです。ではそれはどういうことなのかを今回は説明したいと思います。

16兆円の円売り介入でも円高は中々止められず

まず「コントロールできない」ということ。皆さんの多くがそう思っていることでしょう。為替市場はどんどん巨大化する中で、国家が売買に参入(それを市場介入といいます)しても、ほとんど思い通りにならないというのが現実です。

たとえば、2008年に「リーマン・ショック」という世界的な株暴落が起こりました。そのあと間もなく1ドル=100円割れとなった米ドル/円でしたが、さらに当時の円最高値(米ドル最安値)の80円に迫ると、2010年9月15日、日本の通貨当局である財務省は円高を止めるべく米ドル買い・円売りの市場介入を実施しました。その金額は何と2兆1,000億円!!

  • 【図表】米ドル/円の週足チャート(2010~2011年)(出所:マネックストレーダーFX)

    【図表】米ドル/円の週足チャート(2010~2011年)(出所:マネックストレーダーFX)

それでも円高は止まらず、やがて80円を割れて、さらに75円まで続いたのです。これに対して、2011年11月4日まで断続的に実施された米ドル買い・円売り介入の総額は何と何と16兆4,000億円にも達しました(以上、財務省ホームページ参照)。こんなにも巨額の資金を投入しても円高を止められず、円安に戻すこともできなかったのですから、為替相場は誰もコントロールできないということが基本でしょう。

ただし、実は「為替相場をコントロールすることが、たまにできた」こともあったようなのです。いくつかの条件がそろう必要はあったようですが。いかにも財務省が、思い通りに為替相場をコントロールしたように見えた例が、実は過去にいくつかありました。その代表例として、2001年冬のことを説明したいと思います。当時、財務省は非公式ながら、「円安は135円になりそう」と語り、実際そうなったのですが、詳しくは次回で説明しましょう。

執筆者プロフィール : 吉田恒(よしだ・ひさし)

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティ FX学長

大手の投資情報ベンダーの編集長、社長などを歴任するとともに、著名な国際金融アナリストとしても活躍。2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊、2016年トランプ・ラリーなどマーケットの大相場予測をことごとく的中させ、話題となる。

機関投資家に対するアナリストレポートを通じた情報発信はもとより、近年は一般投資家および金融機関行員向けに、金融リテラシーの向上を図るべく、「解りやすく役に立つ」事をコンセプトに精力的に講演、教育活動を行なう。2011年からマネースクエアが主催する投資教育プロジェクト「マネースクエア アカデミア」の学長を務める。2019年11月より現職。書籍執筆、テレビ出演、講演等の実績も多数。マネックス証券