本来、土地や建物の不動産は、被相続人(亡くなった方)が居住していた住まいの敷地や何かの事業を行っていた土地は、相続税を計算する際には実際の取り引き価格ではなく、所定の評価の低減措置があります。そうした措置を利用できない生前贈与は、単純に考えれば得策ではありません。
それでも、これまでに紹介してきたように、土地や建物などの不動産を生前贈与する際には特例が設けられており、税制上の優遇が認められています。
実際のところ、不動産を生前贈与するメリットとは何でしょうか。そして、デメリットはないのでしょうか。今回は生前贈与を不動産で行う際のポイントを詳しくみていきましょう。
まずはメリットから紹介していきます。主だった利点として以下の5つが挙げられます。
(1)贈与する相手を生前に決められる
土地などの不動産は、一定程度の規模があってこそ利用価値が高まります。細かく分筆して多くの相続人が相続すると、利用価値がなくなってしまって意味がありません。
相続人同士で共有名義にもできますが、活用するための意思をまとめるのは大変ですし、次世代の相続まで考えると相続人がさらに増えて、トラブルのもとになりかねません。また、病気などで収入が得られない子どもなどに確実に収入源となる資産を残してあげたいと考えるケースにも有効です。
事業を継ぐ意思のある孫などへの贈与も考えられます。子どもは事業を継がなかったけれど、孫が手伝い始めたなどのケースも考えられます。
(2)贈与により財産を減らし、相続税を減らせる
原則、贈与税率よりも相続税率の方が低いので、すべてのケースにおいて有利とは限りませんが、相続財産が多い場合は、小分けにして贈与する方が有利なケースもあります。
また、配偶者に居住用不動産またはその取得資金を贈与する際の「贈与税の配偶者控除」、子どもや孫への「住宅取得資金の贈与の特例」などは、贈与税を支払わずに相続財産を減らす方法となります。
(3)贈与された不動産を活用して、受贈者が収益を上げることができる
例えば「贈与された土地にアパートを建てて、家賃収入を得る」などが考えられます。家賃収入をストックしておけば、将来の相続税支払資金に活用できます。不動産を生前贈与するケースは、一般的に相続財産も多いと考えられます。
(4)相続時のトラブルを避ける
不動産は金額が多いため、相続時にトラブルになりがちです。ただ、生前贈与によって事前に方向性を確立しておけば、そのリスクを回避できます。例えば、受贈者以外の相続人への配慮を取り入れた遺言状を作っておけば、まったく不満なく相続できるかどうかは別として、争いが長引くことを防ぐことができます。
(5)金融資産の贈与より、実質的に大きな資産を贈与できる
不動産の評価は固定資産税評価額であったり、路線価だったりします。それらは一般的に実勢価格より低額です。