続いて、不動産の生前贈与の主要なデメリットをまとめました。
(1)不動産の市場価値に応じた高額の贈与税が課せられる
贈与税は高額ですので、メリットと合わせて総合的に考える必要があります。
(2)「不動産取得税」や「登録免許税」などが必要
不動産の贈与の場合は、贈与税だけではなく、不動産を新たに取得したことによる「不動産取得税」や登記を移転するための「登録免許税」などが必要となります。相続による取得は不動産取得税はかからないのです。
(3)「小規模宅地等の特例」が利用できない
被相続人が居住していた土地や事業を行っていた土地は、一定の面積までは、課税評価額が最大20%まで削減されます。課税評価額が1/5にもなるのです。ただ、この制度は相続時に限定されますので、贈与の場合はこの特例を利用することはできません。
有利に不動産生前贈与を行う方法
税率の高い贈与を相続税に置き換えられるのが「相続時精算課税制度」です。相続時精算課税制度を活用して不動産を生前贈与するとどのようなメリットがあるのでしょうか。こちらもデメリットと併せてご紹介します。
メリット
■財産の評価は相続時に決定される
将来、不動産の価格が上昇しても、相続財産の評価は贈与の時点のもので計算されます。ただし、その逆の場合もあります。
■贈与を相続税に置き換えられる
仮に相続時精算課税制度を利用して非課税枠限度の2,500万円相当の不動産を贈与したとなれば、その時点で非課税となります。相続発生時に2,500万円の不動産を相続財産に組み込んで、相続税が計算されます。本来は贈与なのですが、課税は相続税で計算されるのです。
デメリット
■暦年課税に戻れない
一度選択すると、元の暦年課税に戻れないなど、相続時精算課税制度のデメリットがそのまま不動産贈与にもあてはまります。また、不動産価格が将来下がる恐れもあります。
都市部で空き家が増えている理由
まとまった大きな土地は相続発生に伴い次第に細分化され、やがて自宅の敷地以外は他人の手にわたっていくのが一般的ではないでしょうか。都市部でも、そうしてできた極小敷地が空き家となって社会問題化しています。相続税が高く、維持できないのが原因です。
また細分化防止のためには、複数の子どもの人数分同等の不動産を新たに用意する必要がありますが、土地の価格が高くその選択肢も不可能です。残念ながら、今ある土地を積極的に活用し、維持しようとするケースよりは、その反対の事例の方が多く見受けられます。
贈与した不動産を有効に活用し維持できる特定の相手に贈与することは、健全な土地利用のうえでも望ましいかもしれません。
※写真と本文は関係ありません
■ 筆者プロフィール: 佐藤章子
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一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。