前回は資本性ローンの利用シーンについて解説いたしました。今回は助成金担保融資について取り上げます。

公官庁から給付される助成金や補助金は、不正受給の予防と抑止の観点から、後払いとなることが一般的です。助成金の対象となる経費を企業が先に支払い、対象期間の経過後に助成金が着金します。企業側から見て出金が先で入金が後となりますので、助成金の交付決定通知が届いてから助成金を受領するまでの期間について、資金ニーズが発生します。この資金ニーズをつなぎ資金、資金ギャップ、入出金ギャップ等と呼び、融資商品として助成金担保融資が対応します。

助成金担保融資は、助成金額が上限となり返済が助成対象期間終了後と予め枠組みが固まっているため、交渉時の条件面の論点は保証をどうするかになります。大別すると、プロパー融資、信用保証協会付き融資、地方自治体が提供する制度融資、補助金対応POファイナンス®の4パターンが挙げられます。

プロパー融資は信用保証料が不要で、信用保証協会付き融資と制度融資は信用保証料が必要です。補助金対応POファイナンスはTranzax電子債権株式会社が提供している金融サービスで、融資実行時に借り手が保証料見合いの利用手数料を負担します。リーガル面での特徴は、交付決定された助成金を電子記録債権として登録し、この電子記録債権をつなぎ融資を依頼する金融機関へ担保として譲渡することです。

また、保証に関する具体的なスキームはWebサイトから確認できないものの、多摩信用金庫の「公的補助金つなぎ融資」のように、金融機関独自の融資商品として提供している事例もあります。

制度融資の実例として、2021年4月に新設された東京都の「補助金・助成金つなぎ」を紹介いたします。融資の諸条件と取扱指定金融機関について、「令和3年度東京都中小企業制度融資要項【6月21日改定版】」から情報を抜粋、一部筆者が追記して表にまとめました。

  • 「令和3年度東京都中小企業制度融資要項【6月21日改定版】」から情報を抜粋、一部筆者が追記

  • 「令和3年度東京都中小企業制度融資要項【6月21日改定版】」から情報を抜粋、一部筆者が追記

取扱指定金融機関については融資要項の資料内に但し書きがあり、「指定金融機関において東京都中小企業制度融資を取り扱うことのできる本支店等は、原則として、東京都内に設置された本支店等とする」と定められています。

助成金担保融資の利用実態は、スタートアップの融資に詳しく情報発信も積極的に行っている株式会社INQの若林哲平氏によれば、「補助金・助成金の支給までの資金のギャップを埋める所謂「つなぎ融資」は、民間金融機関を中心に活発に行われている。アーリーステージのスタートアップでは、各都道府県の信用保証協会の保証付きで、補助金等の交付決定額をベースに、金額は100〜3,000万円のレンジで、補助金等支給後の一括返済とするケースが多い。補助金支給後の一括返済となる短期と、1年以上の長期を組み合わせて同時に借入を行うケースも少なくない。東京都の「補助金・助成金つなぎ」は中小企業がよく活用するものづくり補助金や、今年度から開始された事業再構築補助金も対象となる。」とのことです。

筆者が補助金対応POファイナンスを取り扱っている金融機関の法人営業担当者にヒアリングしたところ、既に融資取引がある企業からの助成金担保融資の申し込みについてはプロパー融資の提案も可能で、申し込みが初回融資に該当する場合はTranzax電子債権株式会社のスキームで提案しているとの回答を得ました。

助成金担保融資に関する説明は以上です。次回は、継続的に融資を受けるために意識したい経営指標について考えます。