ブームは去ったかのようにも感じる「仮想通貨」ですが、その普及は世界中で着実に進んでおり、今後もさまざまなシーンでの活用が期待されています。本連載では、「仮想通貨に興味はあるけれど、なにからどう手を付ければいいかわからない」というような方向けに、仮想通貨に関連するさまざまな話題をご紹介。仮想通貨を2014年より保有してきた筆者の経験から、なかなか人には聞きにくい仮想通貨の基礎知識や歴史、未来像などもわかりやすくお伝えします。

仮想通貨全体の普及に貢献するかもしれない新仮想通貨

現在、仮想通貨の種類は2,000あるとも3,000あるとも言われています。この数字の中には、「これから開発する予定の仮想通貨」も含まれています。投資家から開発資金を募るICO(Initial Coin Offering:新規仮想通貨公開の意、IPOをもじった造語)は世界中で行われていますが、投資詐欺も多く発生しています。「どの仮想通貨を買えばいいか」は、一概には言えません。投資・購入する人は、仮想通貨について見識を深める必要があるでしょう。

今回は、それらの数ある新しい仮想通貨の中から、いくつかをピックアップしてご紹介します。ご紹介する仮想通貨には、ICOの情報は含まれていません。これから開発資金の出資を募るのではなく、「すでに自由に売買できる状態」であることを条件にご紹介します。今回取り上げるのは、「NEM(ネム)」「OmiseGo(オミセゴー)」「Fusion Coin(フュージョンコイン)」の3つの仮想通貨です。

ハッキング事件で一躍有名になった「NEM」

「NEM(ネム)」
単位:XEM
総発行枚数:約90億枚(89億9,999万9,999枚)

「NEM」は、ニュー・エコノミー・ムーブメントの略です。従来の経済の仕組みに縛られない新しい経済の枠組みを目指し、平等な分散型プラットフォームの創出を目標としたプロジェクトから生まれました。「ビットコイントーク」というインターネット上のコミュニティで、UtopianFutureというハンドルネームのチームによって考案され、現在はNEM財団という団体がNEMをバックアップしています。

NEMにはコアなファンが多く、コミュニティが強いという特徴があります。NEMのファンは「NEMber(ネムバー)」と呼ばれており、NEMで決済ができるフリーマーケット「nemket(ネムケット)」の開催や、フリーマーケットサイト「nemche(ネムシェ)」の開設、NEM決済でお酒が飲める「nem bar(ネムバー)」をオープンするなど、NEMを広めるさまざまな活動をしています。ビットコインをビットコインホルダー(ビットコイン愛好家)たちが広めたのと同様に、NEMberたちがNEMを広めようとしているわけです。

新興国の決済インフラとなり得る「OmiseGo」

「OmiseGo(オミセゴー)」
単位:OMG
総発行枚数:1億4,024万5,398枚

「OmiseGo」は、Omise(オミセ)というオンライン決済会社が開発した仮想通貨で、銀行口座を持っていない人でもスマートフォンなどで簡単に送金や決済ができるのが特徴です。Omise社は、タイ、インドネシア、日本に拠点を置いています。新興国では銀行口座を持っていない国民も多いのですが、そうした国々であっても銀行口座を持たずに簡単に送金や決済ができるようにしています。

特にタイで普及しており、約3分の2のモバイル会社がOmise社の決済サービスを利用しているそうです。タイの金融庁やマクドナルドも同社の決済サービスを利用しており、SBIグループやSMBCグループなどの日本企業が同社に出資しています。銀行口座不要でオンライン決済できるのは、とても便利ですよね。日本は、現金、クレジットカード、銀行引落、コンビニ払いなどのさまざまな決済手段がありますが、決済インフラの整備が進んでいない国では高いニーズがあると思います。

銀行をプラットフォームとした「Fusion Coin」

「Fusion Coin(フュージョンコイン)」
単位:XFC
総発行枚数:3,000万枚

「Fusion Coin(フュージョンコイン)」は、2015年に日本人とフランス人などのチームによって作られ、Fusion Partners(フュージョンパートナーズ)という企業が発行している仮想通貨です。ICOによる資金調達は行わず、全て自己資金で開発されました。リップルのIOU(仮想通貨と交換できる電子債権)が使われており、信頼度の高いリップルの送金の仕組みを活用することで、世界中の通貨にスピーディーに変換できます。ビットコインの送金時間は平均10分、イーサリアムだと平均2分かかりますが、フュージョンコインは5~6秒で送金を完了できるのが特徴です。

Fusion Partners社の構想の一つであるFusion Bank(フュージョンバンク)では、Fusion Coinを一つのツールとして捉え、Fusion Coinをハブとして「信頼度の高い金融サービスを提供し、世界中の誰もがアクセスできるように人々をつなぐ」というビジョンを掲げています。

従来の金融システムに、ブロックチェーンを含む革新的な技術を導入し、グローバルかつ安全で信頼できる金融サービスを提供することが同社の目的です。法定通貨と仮想通貨の交換はもちろん、メジャーな仮想通貨と仮想通貨の交換、仮想通貨と金・銀などの現物資産との交換、デビットカードの発行、仮想通貨の融資・ローンサービス、仮想通貨を担保とする融資など、金融業界の新時代を切り開く多種多様なサービスの提供が計画されています。

次回は、「投資・投機目的だけではない仮想通貨の利用方法」についてご紹介します。

執筆者プロフィール : 中島 宏明(なかじま ひろあき)

1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、SAKURA United Solutions Group(ベンチャー企業や中小企業の支援家・士業集団)、しごとのプロ出版株式会社で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。
オフィシャルブログも運営中。