ブームは去ったかのようにも感じる「仮想通貨」ですが、その普及は世界中で着実に進んでおり、今後もさまざまなシーンでの活用が期待されています。本稿では、「仮想通貨に興味はあるけれど、なにからどう手を付ければいいかわからない」というような方向けに、仮想通貨に関連するさまざまな話題をご紹介。仮想通貨を2014年より保有してきた筆者の経験から、なかなか人には聞きにくい仮想通貨の基礎知識や歴史、未来像などもわかりやすくお伝えします。
今回のテーマは、「なぜ仮想通貨はボラティリティが高いのか?」。
ボラティリティってなに?
「ボラティリティ」とは、一言でいえば価値の振れ幅のことです。例えば、1BTCが100万円になったり120万円になったりします。これは20%の値動きがあるということですね。この値動きに対して、「ボラティリティが高い(大きい)」「ボラティリティが低い(小さい)」という風に使います。略して「ボラが高い(低い)」ということもあります。ボラティリティは、投資リスクを判断するための基準のひとつです。
ハイリスク・ハイリターン
ミドルリスク・ミドルリターン
ローリスク・ローリターン
などのような言葉を聞いたことがあると思います。ボラティリティが高いということは、ハイリスク・ハイリターン。つまり、ボラティリティが高いほどリスクが高いということです。仮想通貨は、数ある投資対象のなかでもボラティリティが高い投資です。
ボラティリティには、主に「ヒストリカルボラティリティ」と「インプライドボラティリティ」の2種類があります。
ヒストリカルボラティリティとは、過去のデータに基づいた変動率を示す指標です。一方、インプライドボラティリティとは、将来の変動率を予想する指標です。将来の価格を予測して売買権を得るオプション取引では、インプライドボラティリティが利用されます。インプライドボラティリティには市場参加者の将来への期待や予想が反映されるため、今後の価格変動を予測できることが特徴です。
ボラティリティの高さ(大きさ)をどう捉えればいいの?
「ボラティリティが高い=投資すべきではない」というわけではありません。捉え方や考え方は人それぞれです。価値の変動が激しいということは、リスクが高いとも捉えられますが、短期間で売買する場合はそれだけ利益を得る機会が豊富だということでもあります。
一方、ボラティリティが低い投資対象は、リスクは低いものの、利益が得られる機会が少ないということでもあります。私個人としてはデイトレードやスイングトレードのような短期間での売買には興味がありませんが、ボラティリティの高さに応じて投資手法を変えることも、リスクを抑えながら投資を継続させるひとつの方法ですね。
なぜ仮想通貨はボラティリティが高いの?
仮想通貨はボラティリティの高い投資対象ですが、これにはいくつかの理由があります。「市場規模が小さい」「ストップ高やストップ安がない」「中央管理者が存在しない」などの理由です。
仮想通貨は、2017~2018年にかけてそれなりに社会に知れ渡りましたが、まだまだ普及したと言えるレベルではありません。株やFXに比べると、市場規模はまだまだ小さいです。市場規模が小さいということは、大口の取引によって価格が大幅に変動する可能性があるということです。一瞬で値が上がることもあれば、逆に一瞬で値が下がることもあります。
株式市場の場合、株価の急激な変動を防ぐため、1日の値動きには上限が設けられています。上限を超えると取引は中止されるので、市場の混乱を避けることが可能です。しかし仮想通貨の場合、株式市場のようなストップ高・ストップ安のルールはありません。値動きに上限がありませんから、需要と供給のバランスによって、急騰したり急落したりする可能性があります。
多くの仮想通貨には中央管理者がいないため、仮想通貨を支えるブロックチェーンのプログラム修正や改善を行う際には、開発者やマイナーたちが話し合って決めることになります。スムーズに修正が行われれば良いのですが、プログラムの修正や改善をめぐり対立が起こることもしばしば。中央管理者が存在しないため、混乱が生じやすく、価格変動に影響する可能性もあるのです。例えば、ビットコインキャッシュのハードフォークをめぐってコミュニティが対立し、価格が急落したこともありました。
仮想通貨の値動きが激しくなるタイミングはどんなとき?
常に値動きが激しいとも言える仮想通貨ですが、特に激しくなるタイミングがあります。「取引所への新規上場」「市場関係者の発表」「政治家や著名人の発言」などです。
株式市場では、値上がりが期待される新規公開株が上場すると、上場直後から急激に株価が上昇することがあります。仮想通貨でもそれと似た傾向があり、新たな仮想通貨(コイン)の取り扱いが始まると、ボラティリティが高くなりがちです。
注目されている仮想通貨(コイン)が仮想通貨取引所に上場すると、投資家から多くの資金が集まります。ユーザー数の多い仮想通貨取引所に上場したときは特に注目度が高くなりますから、ボラティリティにも影響を与えるでしょう。
第36回の記事でご紹介したフェイスブックのLibraのようなニュースは、日々ネットやテレビで発信されています。市場関係者の発表によって、ボラティリティが高くなるケースもあります。プレスリリースや企業提携などのポジティブなニュースが発表されれば、価格が上昇する傾向にありますし、逆に、規制やハッキングなどのネガティブなニュースが流れると、急激に下落する傾向にありますよね。
仮想通貨に関する規制や将来性については、市場関係者だけでなく、政治家や経済界の著名人などさまざまな人が発言しています。影響力のある人の発言によって、ビットコインなどの値が激しく動くこともあります。政治家や著名人以外にも、ビットコイン長者などの発言も注目される傾向にありますから、SNSなどに注目しておくのも一考ですね。
第5回・第6回の記事でご紹介したようなアルトコインは、ビットコインよりも市場規模が小さいため、ボラティリティが高くなることもあります。また、仮想通貨取引所によってもボラティリティが異なるため、指標は一つではありません。それぞれの仮想通貨の価格は、それぞれの仮想通貨取引所によって異なります。そのため、ボラティリティも仮想通貨取引所によって違いがあるというわけです。自分に合った投資スタイルで付き合うのが良いと思います。
次回は、「ゼロ承認」についてご紹介します。
執筆者プロフィール : 中島 宏明(なかじま ひろあき)
1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、SAKURA United Solutions Group(ベンチャー企業や中小企業の支援家・士業集団)、しごとのプロ出版株式会社で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。
オフィシャルブログも運営中。