ブームは去ったかのようにも感じる「仮想通貨」ですが、その普及は世界中で着実に進んでおり、今後もさまざまなシーンでの活用が期待されています。本稿では、「仮想通貨に興味はあるけれど、なにからどう手を付ければいいかわからない」というような方向けに、仮想通貨に関連するさまざまな話題をご紹介。仮想通貨を2014年より保有してきた筆者の経験から、なかなか人には聞きにくい仮想通貨の基礎知識や歴史、未来像などもわかりやすくお伝えします。
仮想通貨と法定通貨の両方を扱うハイブリッド銀行
第26回の記事でご紹介した「フュージョンバンキング」は、仮想通貨と法定通貨の両方を扱うハイブリッド銀行です。2015年に開発されたフュージョンコインが発展し、銀行業となりました。
フュージョンバンキングでは、仮想通貨と法定通貨を交換する単なる取引所の機能だけではなく、「仮想通貨とゴールド(現物資産)の交換」「仮想通貨のオフライン管理コンシェルジュサービス」「デビットカード(銀行カード)の発行」「仮想通貨貸し付け・ローン」「企業融資」「投資プラットフォーム」「分散型銀行業」などのサービスを世界中で展開していきます。ビットコインをはじめとするさまざまな種類の仮想通貨と法定通貨、金融サービスなどをつなぐハブ的な存在となり得るでしょう。
フュージョンバンキングのオンラインバンクシステムを世界の仮想通貨取引所や仮想通貨関連企業に提供することで、仮想通貨全体のステータス向上に貢献するはずです。
仮想通貨取引所や仮想通貨関連企業だけでなく、各国の銀行や金融機関、証券会社、フィンテック企業などにもフュージョンバンキングのオンラインバンクシステムを提供することになれば、さらに金融革命を推し進めることになるかもしれません。
また、フェイスブックも独自の仮想通貨を2020年に発行すると発表しています。GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)やBATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)が仮想通貨の世界に参入し、フュージョンバンキングのようなハイブリッド銀行を始める可能性もあるでしょう。変化はジワジワと起こることも多いですが、変わるときは一瞬です。大きな波は、すでにすぐそこまで来ているのかもしれません。
ビッグデータを有し活用できる企業が勝者になる?
GAFAやBATHなどの企業が銀行業を始めたとき、既存の銀行や金融機関は生き残っていけるのでしょうか。地場に根差した金融機関は生き残っていけるかもしれませんが、多くの銀行や金融機関は消えていくのかもしれません。自然な競争原理ですから、ある程度は致し方ないですよね。
GAFAやBATHはビッグデータを保有しており、その活用方法を常に考えています。GAFAやBATHなどの企業が銀行業などの金融サービスを始めるのは、極めて自然なことです。仮想通貨業や銀行業だけでなく、保険サービスなどにも参入するようになるかもしれません。
GAFAではありませんが、LINEはすでに「LINEほけん」を始めています。飛行機のなかからでも保険に加入でき、安価な価格設定なのでとても便利です。このようなサービスは、今後も広まっていくでしょう。
日本の楽天は、すでに銀行業やクレジットカード、スマホ決済、保険などのサービスを始めています。ブロックチェーンの開発にも着手しているそうですから、楽天ポイントを仮想通貨に換えたり、楽天独自の仮想通貨「楽天コイン」を発行したりするようになる日も近いのかもしれません。
普段生活をしていて貯まった楽天ポイントで仮想通貨投資などができるようになると、ハードルも下がりますね。楽天経済圏は、ますます強くなりそうです。
信用スコアによって資金が集まる未来
中国などではすでに導入されているそうですが、信用スコアとAIによって人の評価が行われる時代に入りつつあります。もちろん、プライバシーの問題や監視社会を良しとするのかという問題はあるのですが。
信用スコアと類似したものに、「クレジットスコア」があります。イギリスでは、銀行や金融機関がこのクレジットスコアを与信審査で参考にしているそうです。今はクレジットカードやローンの審査にしか使われていませんが、いずれは中国の信用スコアのようにより広範な「社会信用システム」になるのかもしれません。
BATHのひとつであるアリババグループの金融部門アント・フィナンシャルサービスグループは、2015年に「芝麻信用(セサミ・クレジット)」という中国初の実用的なクレジットスコアシステムを導入しました。セサミ・クレジットは、決済サービスの「支付宝(アリペイ)」のユーザーロイヤリティーを高める仕組みとしても考えられているようです。
セサミ・クレジットのスコアは、350~950点で、点数が高いと「ローンを低金利で組める」「賃貸物件の契約の際、敷金不要」「レンタルサービスを利用する際、デポジット不要」などのさまざまな特典があるといいます。
クレジットカードの支払い状況、購入履歴、SNSでの投稿、交友関係、職歴・経歴、年収・資産、健康状態などのビッグデータが信用スコアに活用され、素晴らしいアイディアを持った人や起業意欲のある人には、フュージョンバンキングが運営する投資プラットフォームからクラウドファンディングのように仮想通貨や法定通貨で資金が集まったり、融資を受けられたり、LINEや楽天、GAFA、BATHのような企業が提供するサービスの特典を得られたりする。
そのような未来が訪れるのかもしれません。真摯・誠実であればなにかを隠す必要もないわけですから、信用スコアが活用される社会も決して悪いものではないようが気がします。一方で、プライバシーが担保されたアナログな空間や時間も重宝されそうですね。スマホ断食やテクノロジー断食のような、オフラインの空間や時間も大切になりそうです。
次回は、「あの企業やあの人も仮想通貨・ブロックチェーン業界に参入する? 」というテーマについてご紹介します。
執筆者プロフィール : 中島 宏明(なかじま ひろあき)
1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、SAKURA United Solutions Group(ベンチャー企業や中小企業の支援家・士業集団)、しごとのプロ出版株式会社で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。
オフィシャルブログも運営中。