ブームは去ったかのようにも感じる「仮想通貨」ですが、その普及は世界中で着実に進んでおり、今後もさまざまなシーンでの活用が期待されています。本稿では、「仮想通貨に興味はあるけれど、なにからどう手を付ければいいかわからない」というような方向けに、仮想通貨に関連するさまざまな話題をご紹介。仮想通貨を2014年より保有してきた筆者の経験から、なかなか人には聞きにくい仮想通貨の基礎知識や歴史、未来像などもわかりやすくお伝えします。

儲けの手段になり下がった仮想通貨? 実は違う

「仮想通貨」と聞くと、日本ではいまだにネガティブな印象が強いようです。「投資というより投機」「ただの怪しげな儲け話」「取引所のハッキングなどハイリスクなもの」というイメージが今でも残っています。一度イメージがこびり付くと、なかなか認識の切り替えができないのかもしれませんね。

投機的な面ばかりフィーチャーされがちな仮想通貨ですが、実際はそうではありません。第26回の記事でご紹介したように、銀行口座やクレジットカードを持っていない人の多い新興国での決済システム(オミセゴー)や、既存の銀行との融合を目指すハイブリッド銀行の構想(フュージョンバンキング、フュージョンコイン)など、世界では大きな変化の波、ある種の金融革命が起きようとしています。

日本語で得られる情報は、世界中に溢れている情報の極わずかな一部分に過ぎません。今回は、海外で起きている仮想通貨関連の変化の波について触れたいと思います。

銀行ライセンスの取得を目指す仮想通貨関連企業

アメリカのフィンテック企業であり、仮想通貨取引プラットフォームの「ロビンフッド」は、アメリカの規制当局に対して銀行の設立許可証を申請しました。ロビンフッドは、仮想通貨取引だけでなく、既存の銀行業務にも進出する意向を示しています。

また、リップル(XRP)を簡単に送金できるアプリ「XRP チップボット」も、銀行ライセンスを取得するための取り組みを進めているといいます。実際に銀行ライセンスを取得することができれば、提供サービスの拡大を図れるでしょう。さらに、銀行ライセンスの取得によって信頼性が向上し、XRP チップボットを採用しようと思う企業も増えるかもしれません。

スターバックスのような大手企業も仮想通貨の世界に参入

仮想通貨に関する話題は、フィンテックや仮想通貨の業界内だけのことではありません。大手企業も仮想通貨業界に参入してきています。

例えば、2018年8月にはスターバックスが、ニューヨーク証券取引所に上場しているインターコンチネンタル取引所(ICE)の「バックト(ビットコイン先物取引などを行うことができるデジタル資産のためのプラットフォーム)」にパートナーとして参入すると発表しました。

スターバックスでビットコインなどの仮想通貨決済が本格的に導入されれば、仮想通貨の普及は加速するでしょう。しかし、スターバックスの狙いは単なる決済手段としての仮想通貨ではなく、銀行業を始めることにあるのかもしれません。

プリペイド式のスターバックスカードには、世界中のあらゆる法定通貨がチャージされています。これはある意味、銀行でいう「預金」です。その額は、12億ドルにもなるそうです(2016年のウォールストリートジャーナルとS&Pグローバルマーケットインテリジェンスの調査より)。企業として、これを運用しない手はないですよね。

日本でもスイカで仮想通貨チャージが可能に?

日本でも少しずつですが、大手企業が仮想通貨を導入する動きが出始めました。JR東日本が発行している「スイカ」などの電子マネーで、2019年6月から仮想通貨でチャージできる国内初のサービスが検討されています。スイカは7,500万枚が発行されており、大手コンビニなど58万店で利用可能な電子マネーです。キャッシュレス化の波とともに、仮想通貨も普及するかもしれませんね。

GAFAやBATHも銀行を始める新時代

前述のフュージョンバンキングやスターバックス銀行のほか、今後はさまざまな企業が仮想通貨や銀行に関連するサービスを展開するようになるでしょう。

日本でも有名なGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)のようなユニコーン企業のほかに、中国のBATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)も銀行業を始める可能性が高いかもしれません。シカゴ大学経営大学院でMBAを取得し、立教大学ビジネススクール教授、マージングポイント代表取締役などを務める田中道昭さんの著書『アマゾン銀行が誕生する日 2025年の次世代金融シナリオ(日経BP社)』でも、アマゾン銀行の可能性について書かれています。

スターバックスやアマゾンなどのような普段利用するサービスと、伝統と信頼のある既存の銀行、そして新しい存在である仮想通貨が融合していくことで、私たちの生活はより便利なものになっていくかもしれませんね。

次回は、「ブロックチェーンについて学ぶには? 」についてご紹介します。

執筆者プロフィール : 中島 宏明(なかじま ひろあき)

1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、SAKURA United Solutions Group(ベンチャー企業や中小企業の支援家・士業集団)、しごとのプロ出版株式会社で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。
オフィシャルブログも運営中。