「人生100年時代」と言われる現代。20代でも早いうちから資産形成を進めることが求められています。一方で、どのように投資・資産運用の目利き力を磨けばいいのか、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

この連載では、20代の頃から仮想通貨や海外不動産などに投資をし、現在はインドネシアのバリ島でデベロッパー事業を、日本では経営戦略・戦術に関するアドバイザーも行っている中島宏明氏が、投資・資産運用にまつわる知識や実体験、ノウハウ、業界で面白い取り組みをしている人をご紹介します。

今回は、"4つの豊かさ"を追求する資産家と資産家を目指す方のための勉強倶楽部・プライベートバンククラブ代表の竹内直樹氏に独占取材を行いました。

  • 左から筆者、竹内直樹氏

竹内直樹

ボンズライフプランニング オーナー兼会長
プライベートバンククラブ 代表
トヨタ、レクサスのセールスコンサルタントを経て、2007年からプルデンシャル生命のライフプランナーとして活動スタート。8年連続社長賞入賞。MDRT成績資格会員となる。2016年、トータルライフプランニングに特化した会社「ポンズライフプランニング」を設立。
2018年、資産家と資産家を目指す方向けの「金融・不動産・ビジネス」の三本柱の勉強倶楽部である「プライベートバンククラブ」を運営開始。延べ3000人のライフプランニングと50社の財務・資産運用・人事・採用コンサルティングに携わる。

本当の豊かさを形成する「4つの要素」

――本日はありがとうございます。竹内さんとは、竹内さんが主催するプライベートバンククラブの勉強会で、仮想通貨(暗号資産)について話してほしいと頼まれて以来のお付き合いですね。その後は、投資の失敗体験を赤裸々に語るしくじりトーク会をやったりもしました。もともとプライベートバンククラブは、どのような背景があってスタートしたのでしょうか?

投資や資産運用の世界は正しい情報が少なく、正しい情報が入って来ないという面があります。それで騙されてしまう人も多い。

私だって億単位の損失を出してしまったこともありますし、少なくとも私の知る友人たちにはそうなってほしくないし、騙されない人を1人でも増やしたいという気持ちがありました。

惑わされないリテラシーを高めてほしいというのがプライベートバンククラブを設立した背景ですね。間違わない資産運用手法を提供したいと思っています。

――竹内さんの実体験が背景にあったわけですね。プライベートバンククラブでは、「4つの豊かさ」がキーワードになっていますよね。毎月行われていた勉強会(現在はオンライン化の準備中)でも竹内さんが毎回その話を欠かさずしているのが印象的でした。

そうですね。4つの豊かさとは「お金」「時間」「仲間」「情報」を指しています。この4つがそろわないと本当の豊かさを得たとは言えないという思いがあるんです。

財があっても本音を語れる親しい友人がいないのは寂しいですし、かといってただの仲良しクラブも違う。世代を超えた交流がないと面白くないですし、全く情報が入って来ないというのも成長や成熟がない。だから、4つの豊かさを追求することに価値があると考えています。

真の豊かさを目指すのがプライベートバンククラブですね。

――確かに、どれか1つが欠けても寂しい人生になってしまいますよね。友人がほとんどいない資産家がいますが、その人はパチンコばかりしているそうです。一生かけても使い切れない資産がある人ですが、全然楽しくなさそうで。プライベートバンククラブは、運営陣も会員さんも楽しい人が多いですよね。最初は何人くらいからスタートしたのですか?

最初は3人の運営陣でスタートしました。今は8人ですね。会員さんは当初20~30人くらいでしたが、今は100名前後の方々に参加していただいています。

勉強会を月に1回開催して、毎回ゲスト講師を2名お招きしています。各ゲスト講師のジャンルは多岐にわたっていて、ビジネスや税制、法律、国内外の不動産、仮想通貨(暗号資産)……などなどです。

勉強会のあとに懇親会も行うのですが、コミュニティづくりを重視しているので懇親会から参加する人も多いですね。いずれ死を迎えたときに、墓石が花でいっぱいになるような仲間を増やしたいというのがあります。

――よくわかります。私はもう人とのつながりでしか仕事らしいことはしていないのですが、「利害に関係なく、何かあったら駆けつけたい」と思える相手や「この人が亡くなったらお葬式に参列しなきゃな」と思える相手をどれだけ増やせるかが豊かさにつながるのだと思うのですよね。例えば、学生時代にお世話になった教授や、振り返ると人生の転機になったきっかけを与えてくれた人とか。年々そう思える相手が増えていくのが嬉しいです。

そうなんですよね。4つの豊かさを求めている人たちが集まると、自然とつながりが濃くなって浸透していき、やがて化学反応が起こると思っています。

投資の失敗談もネタになる

――竹内さんが投資や資産運用で重視しているポイントはどんなところですか?

情報を持ってきた情報元の人や、その仕組み(スキーム)を作った人を重視しています。やはり「だれからの情報か」というのは大切ですね。信頼できる人からの情報だったら、その情報は聞く価値があると思います。

また長期投資の場合は、預高が高くて分散割合が高いことも重視しています。エビデンスがそろっていることも大切です。日本円ではなく、極力外貨での資産運用を考えています。

ビジネス(事業投資)の場合は、代表者の想いや、やりとおす意志を重視します。まだ新しいビジネスの場合、必ずしもエビデンスが取れるわけではありません。ですから、代表者の熱量を重視するんです。

ただ、熱は冷めてしまう可能性があるので、ヤケドしない範囲で投資するようにしています。あくまでも遊びの部分ですね。

――投資の基本は、「なくなってもしょうがないか」と思えるお金ですることですもんね。

そうですね。本命と遊びを分けることは大切だと思います。本命の方は、ドル・コスト平均法で長期で積み立てる感覚で資産運用するのが良いと思います。遊びの方は、あくまでもヤケドしない範囲に留めないといけませんね。

――ヤケドしない範囲でやめておけば、話のネタが増えるという面もありますしね。

それもありますね。話のネタを増やす感覚で細かく投資するというのはあるかもしれない。失敗が増えるほど、話のネタが増えます。投資家の方に会えば会うほど、失敗を重ねている投資家が多いことに気づいたんです。

投資で食べていきたいなら、失敗は必要だと思います。失敗しても、しくじりネタとして活かせますし、笑い話にもできると思います。

――実体験は何よりも学びになりますよね。本や動画で疑似体験するのも良いのですが、やはり実体験には勝てないと思います。

転ぶのも良しですよね。子どもと一緒ですよ。転んで失敗して成長していくのだと思います。

ある投資家の言葉に、「物事の辻褄が合うかどうか」という言葉があります。ブラックボックスがあったり嘘を重ねたりすると、段々と物事の辻褄が合わなくなる。嘘に嘘を重ねると、やがてボロが出る。この目利き力は、失敗も含めて経験しないと身につかないですね。

――身銭を切らないと実体験にはならないですからね。今回の新型コロナウイルスの影響で投資や資産運用を考える人が増えたと聞きますが、コロナショックで影響が出ている投資家や資産家の方は周りにいらっしゃいますか?

成功している方々の共通点だと思うのですが、状況が変わっても大丈夫なようにしている方が多いですね。しっかりリスクを考えていますし、最悪の状況に備えて楽観的に行動しているという印象です。

――悲観的に考えて楽観的に行動するということですね。私はどちらも楽観的かもしれない……。

老後の年金づくりの話題になると、「年金がない状況で100歳まで生きる想定をする」というお話をしています。その場合、早死するのは楽観的で長生きするのが悲観的という考え方になりますね。

年金がもらえなくて国を非難してもしょうがないですから、最悪の事態に常に備えておくことが大切だと思います。すべては自己責任ですし、最悪に備えると気持ちも楽になりますよ。

今後は「食」の領域に注目

――竹内さんが投資や資産運用で注意している、気をつけているポイントはどんなところですか?

1回案件がダメになった人からの投資話や、金儲けだけが目的になっている人からの投資話は気をつけるようにしています。マネーゲーム的な、大儀のない投資話にも気をつけています。仮に成功しても、充実感が薄いからです。

――確かに「あ、資産が増えたな」くらいにしか感じないですよね。充実感のない投資はしたくないですね。竹内さんが今、関心のある領域はどんな投資領域でしょうか?

「食」ですね。資産運用のひとつに、食も取り入れたいと考えています。新型コロナウイルスの影響で、あらゆるものへの価値観が変化したと思います。そのひとつが食かなと。

日本は食料自給率が低く他国に依存している面がありますが、今後もずっとwithコロナだとすると、輸出入に制限がかかる可能性があります。長引けば食量問題や価格競争、ハイパーインフレやハイパーデフレの可能性もある。食はすべての源泉ですから、注目せざるを得ません。

確かに、コロナショックの影響をダイレクトに受けた飲食店の多くはダメになってしまいました。ですが一方で、スーパーは業績が良くなっています。郊外や地方に農地を借りてサブスクで農業体験や自然体験ができたり、自給自足的な暮らしを体験できたり。それがやがて健康・免疫力を高めることにもつながると思います。教育にも良いですよね。

農業の他には、子牛の投資にも関心を持っています。育ったときに、たとえ牛の価格が下がってしまっても、みんなで食べられるわけですし、死亡リスクは保険でヘッジできる。みんなで食べちゃえば、金銭的に多少損したとしても、仲間との楽しい時間に変えられるわけで。そんな投資や体験を、都会にいても田舎にいてもできるようにしたいですね。

やっぱり元気じゃないと遊べないですし、仕事もできない。「4つの豊かさ」につながりますが、お金があっても元気がないと豊かではないと思うんですよね。各地に所縁の農地や牧場ができたら、キャンピングカーシェア事業を始めて、仲間やその家族と一緒に回るのも面白いなと思います。

――なるほど、では今後は食や健康に関することもプライベートバンククラブのテーマになるかもしれませんね。ますますジャンルレスになっていって楽しいですね。

勉強会のオンライン化を進めているところですので、場所や移動の制限なく参加できるようになると思います。オンラインとリアルの両方を充実させたいですね。

聞き手/執筆者: 中島 宏明(なかじま ひろあき)

1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。現在は、複数の企業で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。監修を担当した書籍『THE NEW MONEY 暗号通貨が世界を変える』が発売中。