「人生100年時代」と言われる現代。20代でも早いうちから資産形成を進めることが求められています。一方で、どのように投資・資産運用の目利き力を磨けばいいのか、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
この連載では、20代の頃から仮想通貨や海外不動産などに投資をし、現在はインドネシアのバリ島でデベロッパー事業を、日本では経営戦略・戦術に関するアドバイザーも行っている中島宏明氏が、投資・資産運用にまつわる知識や実体験、ノウハウ、業界で面白い取り組みをしている人をご紹介します。
今回は「サラリーマンでも資産家になれる」と明言し、30年以上も不動産業界をけん引し続けてきた経営者、シノケングループ代表の篠原英明氏に独占取材を行いました。
サラリーマン層に向けた投資用アパートメント経営のビジネスモデルを展開し、多くの個人投資家から支持を集めてきたシノケングループは今、不動産経営の現場を海外に広げ、オンラインでも不動産投資が行えるような「REaaS構想」(不動産のサービス化)を進めています。
時代の先端を行く経営者は、今後の不動産投資の展開をどう見据えているのか。その視点や戦略から、学べることがたくさんあるはずです。
篠原英明
1965年生まれ、福岡県出身。株式会社シノケングループの創業者で代表取締役社長。
25歳のときにシノハラ建設システム(現在のシノケングループ)を設立し、旧来までの賃貸住宅経営の概念を覆し、土地を持たないサラリーマンであってもアパート経営はできるという、現代版ビジネスモデルの資産運用法を確立。多くの個人投資家の支持を得て事業を急拡大する。2000年、東京に進出。2002年には(現・東証)ジャスダックに上場する。
シノケングループは現在、日本以外に、中国、香港、シンガポール、インドネシアに進出。投資用アパート・マンション販売、賃貸管理、ゼネコン、エネルギー、介護・障がい者支援事業とグローバル化、多角化を進めている。
国際不動産戦略としてインドネシアを選んだ理由
――本日はありがとうございます。早速ですが、昨年、インドネシアでREIT(不動産投資信託)ライセンスを取得されたそうですね。
はい、そうです。昨年2019年7月29日、インドネシア現地子会社であるシノケン・アセットマネジメント・インドネシア(以下 SAMI)として正式に、インドネシア金融庁(OJK: Otoritas Jasa Keuangan)から不動産ファンドの運営を目的とした投資運用業のライセンスを取得(同月23日付)しました。
――なぜ、ビジネスの現場として、インドネシアを選ばれたのでしょうか? 他にも有望そうな国はあると思いますが。
まずは、人口の多さですね。実はインドネシアの人口は、世界第4位なんです。2017年の国連人口統計によると、2億6400万人もの人口を有しています。
これは、ASEAN経済の35%のシェア(IMF予測)です。ASEANのなかでインドネシアの次に人口の多い国はフィリピンですが、それでも1億人ほどです。2億6400万人という人口は、とてつもない可能性を秘めています。
それに、平均年齢が29歳と若い。きれいな人口ピラミッドを描いていますし、人口ボーナス期にありますから、今後の経済成長は約束された未来と言っても良いでしょう。
さらに、親日指数が82%と世界第1位(英国BBCによる2013年の調査)です。海外では商習慣も文化も違いますが、それを受け入れつつも日本のやり方を通したいときもあります。そんなとき、相手が日本を好きであること、好意を持ってくれていることは、やはり良い面で影響があると思います。
信頼関係を築くうえで、相手の国や文化、人々を好きかどうかはとても大切なことです
――なるほど、経済力は人口(数)×生産性(稼ぐ力)と言いますから、インドネシアが今後も経済成長を続けることは明らかですね。
史上初! 外資系企業によるREITライセンスで目指す事業の形
――インドネシアで外資系企業がREITライセンスを得るのは史上初のことだそうですね。
そうですね、インドネシア史上初となります。簡単ではありませんでしたが、長年にわたってインドネシア金融庁と協議をして、やっと取得できたという感じです。
インドネシア政府は、2007年にREIT組成を解禁しました。インドネシアの内資系企業では、チプタダナ・キャピタル、バウスプリット、シナルマス・アセット・マネジメントの3社がREITを取り扱っていますが、わずか3社に留まっているのが現状です。まだまだ市場自体が活性化しているとは言えません。
その点、シノケンでは、日本で投資用不動産開発を手掛けてきた実績があります。そのノウハウを生かして、今後はインドネシアでREIT(不動産投資信託)の運用を開始する予定です。
現地法人であるSAMIの役員には、インドネシア金融庁元長官らを迎え入れました。不動産開発と投資、売却までを一貫して行う"総合不動産事業"をインドネシアで確立したいと考えています。
――開発から売却までのすべてを行う不動産会社は、実現すれば唯一無二の存在ですね。REITには、どんな物件が組み込まれるんですか?
ジャカルタでは、シノケン・デベロップメント・インドネシア(以下SKDI)が不動産開発を行っています。2019年3月にはサービスアパートメント・桜テラスがオープンしており、その物件も含まれます※。
第1号がすでに完成し、5棟分の用地も取得しています。高層マンションの開発・運営も構想しており、これらも将来REITに組み入れられる計画です。
REITライセンスを取得したことによって、さらにSAMIへの売却まで可能になります。総合不動産事業への実現が一歩近づいた形ですね。
桜テラス以外の候補物件には、日系企業の展開する工場や倉庫、インフラ設備、工場団地、ホテル、ショッピングモールといった商業施設などがあります。
※桜テラス: 土地の仕入れ、施工、賃貸運営までをシノケンによる一気通貫体制で開発・運営したサービス付きアパートメント
早期に1,000億円規模の組成を目指す
――アパートやコンドミニアムなどの住居以外の物件もREITには含まれるんですね。多様な物件が組み込まれることで、リスクヘッジにもなりますね。差し支えなければ教えていただきたいのですが、想定利回りはどれくらいなのでしょうか?
年5~7%の配当利回りが期待できると考えています。インドネシアの住宅用不動産価格は、名目でこの10年、約5割上昇しています(国際決済銀行のまとめによる)。日本の伸び率は約1割ですから、大幅に上回っているんです。
――それは魅力的な数字ですね。ちなみにREITの規模としては、どれくらいを目指しているのでしょうか?
投資額は、組成1年目で100億円、3年目で4~500億円、早期のうちに1,000億円まで伸ばしたいと考えています。
実はREITライセンスの取得を発表した後、すぐに多くの日本人投資家が関心を示してくれました。海外では、インドネシア人やシンガポール人などの東南アジアの投資家、欧米の投資家も高い関心を示しているようです。
そのため今後は、日本やインドネシアだけでなく、世界の投資家への情報発信も行っていく必要があるかもしれません。市場が世界になれば、1,000億円という投資額も不可能な目標ではありません。
――篠原社長は、なぜインドネシアREITにこれだけ注目が集まっているのだと思いますか?
インドネシアでは、原則としてインドネシア人個人しか土地の所有権が認められていません。外資系企業や外国人が投資目的で不動産を取得することは、実質的にできない。さらに、インドネシア財閥資本のREITに比べ、独立性や信頼性の観点からも弊社のインドネシアREITは評価を受けています。
日系企業の信頼性は、やはり多くの国で高い位置にある。だから、弊社が外資系企業で初めてREITライセンスを取得できたことは、今後大きな意味を持つと思います。
――シノケンさんのインドネシアREITを購入したいと思ったら、どこで買うことができるのでしょうか?
日本国内では、事業法人や金融機関とアライアンスを組んで販売していく計画です。SBI証券等、お近くの金融機関・オンラインで購入いただけるようにしたいと思っています。